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伝者旅 壱章  作者: 諸星回路
幻想の箱庭編
14/35

箱詰めの町

「ぬあぁぁぁぁああーーーーー!!」

 吹雪吹き荒れる雪原にて、男は奇声を上げながら歩いていた。

「マグナムさん、マグナムさん。つかれてるの?」

「疲れてんだよおおーーっ!!お前はなんで疲れないんだよおおーーっ!!」

「マグナムさん、それ じゅうにかい もきいたよ!」

 少女は振り返って、背後の男に笑顔を向ける。

「舞。そんなことに記憶力を使うんじゃない。若いうちはもっと言葉を覚えなさい。私は疲れました、はい言ってみなさい」

「わたしはつかれました~~」

 雪原に広がるのは天真爛漫な少女の声。彼女には一生縁の無さそうな言葉だ。

 タワータウンを出て既に半月以上経過していた。旅人達の疲れは大分体に来ている…はずだがーー

「マグナムさんおそいー」

 7歳の少女は男の数m先を行く。その様子に明らかな疲労は見えない。

「どうしてそう元気でいられるんだか……これが特殊能力ってか?」

〈マグナム、もう少し早く歩け〉

 少女のもっと先を行く仲間からの追い討ちが来る。しかも頭に直接。

〈お前らみたいに超人じゃないんだよ…この野郎…〉

〈聞こえてるぞ〉

 テレパシィが途切れた。唐突なテレパシィを利用した会話にはまだ慣れない。

 雪はそうこうしてる間にも、少しずつ量を増して積もっていく。そのため足を止める訳にも行かず、苦しみながら速度を速める。

 雪が積み上がって出来た丘の上で、立ち止まる仲間と合流すると、テレパシィ使いの男はとりとめのない灰色の景色に向かって指差した。

「5人。人の気配がする」

「旅人か」

「わからないが……少し奇妙だ」

「奇妙?」

 問いを投げるも、男は無視して自身が指した方角へと歩き出す。2人はその後を追った。

 何分と経たないうちに、男は再び立ち止まる。

「この下の辺りから気配がする」

「下?ーーまさか生き埋めか!?」

「違うな。これだ」

 すると男は、冬景色に似つかわしくないその素手を下に向け、念動力で近くの雪を吹き飛ばすと、すぐにそれが姿を現した。

 正方形のスノードームだ。箱の中には小さな町と降りしきる雨が覗ける。まるで世界を丸ごと上から眺めているようだ。

「きれー!!」

 7歳児が過敏な反応を見せる。幼子でもわかる程に幻想的でなんとも綺麗だ。

 そしてそのまま、幼子は躊躇なくそれに触れる。その途端、弾みで箱が開く。

 箱は大きさを増し、やがて旅人達を食らった。あまりにも一瞬だったために、誰も抵抗出来ないまま雪原から姿を消した。


 マグナムは目を覚ます。黒い雨の降る町で。

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