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第二話
高級ホテルが誇る最上級の一室。
地上十七階に位置する最上階の部屋のベランダから、足を滑らせた様に落下する一人の男性。その男の首には太いロープが掛けられている。ロープが繋がる先は天蓋が付けられた高級ベッドの足。
ロープがシュルシュルと音を立て、ベランダの下へと流れ落ちていく。重力に従って落下していく体は、ロープの長さが限界に到達した所で、一度静止した。男の首がへし折れる音とロープが軋む音が響くと、体は空中で浮遊するように静止した。
ピンっと張り詰められたロープには、人為的に切り目が入れられており、千切れるのは時間の問題だ。
解れだしたロープは次第に引っ張られる力に耐えられなくなり、ブチンという音とともにロープは千切れた。
地上で果実が弾ける様な音が虚しく響いたような気がする。
地上でも、ホテル内でも気付いている者はまだいない。静寂に包まれた午前一時は、未だ仮初めの平和を維持している。
それを嘲るように笑う女が一人。夜の闇に消えながら、笑い声だけがホテルの最上階から響き渡っていた。