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 もう何度目だろうか、ここに来るのは。


 もう何度目だろうか、ビルの屋上から飛び降りる直前に見た彼女の笑顔を思い出すのは。


 忘れもしない。彼女が流した涙も、吐露した思いも、落下した頭部がまるで熟れた果実が弾ける様に、簡単に破裂した瞬間を。


 赤い水溜りに佇む死体を、私は忘れる事は無いだろう。頭部が欠損した遺体も、血の臭いと垂れ流しになっていた小便と大便の耐え難い悪臭も、私が幾度となく嘔吐した事も。


 立ち入り禁止の標識テープが強風に揺れているのを横目に見ながら、私は屋上から地上を見下ろした。高さは約二十メートル程だろうか。


 彼女はこの場所から飛び降りた瞬間、何を思っていたのだろうか。怖かったのだろうか、それとも地獄の様な苦しみから解放されて歓喜に満ち溢れていたのだろうか。


 今となっては何も分からない。


 だけど、あの三人を私が憎んでいるという事は分かる。あの三人だけじゃない。学校も、あの三人の家族も、全てが憎い。加害者のくせに悲観ぶるあの三人も、何もかもを見て見ぬフリをした学校も、子供の偽善を見抜けない親達も全部が居なくなればいい。


 そうすれば、あの子も少しは浮かばれる。


 だけど、私にはあいつらを地獄に落とす為の力も知恵も無い。私は非力で矮小なただの一般人だ。漫画やドラマの様に都合よくはいかない。


 そんな時だ。私が父から《青》という人物を紹介してもらったのは。父が会社の同僚と行ったバーで知り合ったというオネエ。非合法な案件を引き受けてくれるという何でも屋を営んでいると、父は言っていた。依頼料もかなりの高額になる事は知っていたが、大学進学の為に貯めた貯金がある。それに父も多少は援助してくれると言ってくれた。


 迷う事は無い。私は復讐する。他人の力を使ってでも、私はあの三人を殺す。


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