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プロローグ
唯一愛してくれたあの人が消えてから、すべてが終わった気がした。毎日が暴力を振るわれる日々。知らない女の人にすら暴力を振るわれる。
なぜだろう? なぜだろう?
あの人が消えてから何も思い出せない。名前も、年齢も、あの人の名前も、顔も。何ていう名前だったか、今は何も思い出せない。
でも、あの人はすごく優しくて、暖かくて、とても強かった、気がする。
怖い、とは違う。優しい強さ。
あの人がいないこの場所に、もう居場所はない。生きている意味も分からない。
その日、私は捨てられた。外に無造作に捨てられた。
ああ、ここで死のう。この場所で一人寂しく死んでいこう。