3話 強くなれないのなら
「なぁ、ムラマサ。妖刀の契約者って、他にもいるのか?」
「いるぞ。」
「へぇ。じゃあさ、妖刀にも強さってあるのか?」
「あるぞ。」
「ふーん。ムラマサはどれぐらい強いんだ?」
「妖刀の中で、一番弱い。」
「マジで?」
「マジじゃ。」
「そうか、そうなのか。一番弱いのか。」
「お前様よ、嫌か?一番弱い妖刀の契約者は。」
「そんな事ないよ、俺だって弱いし。俺は、お前に感謝してるんだぜ。強くなるためのきっかけをくれたからな。」
「それなら、いいんじゃ。」
そう言ってムラマサは、顔を俯かせた。
多分、まだムラマサには何かあるんだろうな。
今は、詮索しない方がよさそうだ。
「お前様、着いたぞ。」
ムラマサに案内された場所は、今まで見たことのない建築物がある場所だった。
建築物は、木で造られていた。
どういう名前の建築物なのかは、分からないが、凄いって事は分かった。
後で、ムラマサに聞いておこう。
「お前様、行くぞ。気を引き締めておけ、呑まれるぞ。」
俺は、唾をゴクリと飲み、うなづく。
どんなに凄い人(妖刀)に会うんだろうか。
俺は、ムラマサに先導され、ある一室の前まで行き止まった。
「誰だ。名を応えよ。」と、 その部屋から声をかけられ、ムラマサは「はい。名はムラマサと申します。」と言った。
「入れ。」
そう言われ、紙と木で出来た扉を開き、入った。
「座れ。」と言われ、「はい。」とムラマサは応え、座った。
俺も、それに習って座った。
「それで、何しに来た。」
「妾の新たな契約者に、強くするために来ました。」
そして、その人(妖刀)はムラマサから、目を離し俺を見て、初めに発した言葉は、「残念だが、こやつはこれ以上強くなれない。」だった。
「「え?」」と俺と、ムラマサはハモった。
そして、ムラマサは「どうしてですか?」と聞いた。
「お前は、分かっておらんのか。」
「それは…。」
「はっきりと言うぞ。お前の所為でその男の魂という器が壊れてしまっている。つまり、お前がその男と契約した事によって、体に異常をきたし、その男のレベル、ステータスが一切上がらなくなっている。」
「そんな事…。」
「そんな事ないと言いたいのか。現にお前がその男と契約したから、その男は辛いと痛いと無理だと思っているんだろうが。」
「え?」と、掠れた声を上げ、ムラマサは俺の方を見た。
俺は、笑った。
ガウルのその笑みを見て、ムラマサは確信した。
自分が、契約者であるガウルの強くなるための道を塞いでいることに。
「妾が悪いのか。」
「そうだ、お前が悪い。」
「本当に妾が悪いのか?」と涙を流しながら、俺を見て言った。
「違う。お前は悪くない。俺は、おまえを悪いとは思ってない。確かにお前と契約してから、身体中痛いし、生きていることさえ辛い。でもさっきも言っただろ。俺はお前に感謝してるって。」
そして、次は妖刀の長に向かって言う。
「それに、俺は無理だとは思っていない。強くなれないのなら、そもそも強くなる必要のないくらい最強だったらどうする。」と。
そしたら、「あはっ、あははははは。お主の事を気に入った。名を応えよ。」 と妖刀の長は笑い、言った。
「ガウル=ミリタル。」
「ミリタル、お主があいつの孫か。儂は、ネネキリマル、ネネキリと呼んでおくれ。それでお主よ、儂と契約せぬか?儂なら、お主の器を治し、強くする事も可能だ。」
「それは、嬉しい申し出ですけど、俺にはムラマサがいるんで。」
「妾でよいのか?」
「ムラマサがいいんだよ。」
「お前様、ありがとう。」
そう言って、笑みを浮かべた。
可愛いと思った。
初めて、笑顔を見せてくれた。
それで、ネネキリは「分かった。なら、ちょっとこっちに来い。」と言った。
俺は、言われた通りネネキリに近づいた。
「何ですか、ネネキリさ、んーーーーー。」
俺は、ネネキリさんにキスされた。
俺は、すぐにネネキリさんと距離を取り、「な、ななな何をしてはりますのん?」と動揺を露わにして言った。
「お主の器を治し、そしてある事をしただけじゃ。ムラマサよ、お前に命ずる。必ずガウルを守れ。」
「はい。必ず守ります!」
「そうか、ならさっさと帰れ。」
「あの、俺たち妖刀の加護を授かりに来たんですけど。」
「もう、授けておるわ。さっきのキスと一緒にな。」
「そうなんですか。でも、まだ帰りません。俺に、戦い方を教えて下さい。」
「戦いの道具に戦いを教えてもらうのか?」
「戦いの道具?俺は、妖刀を戦いの道具とは、思ってません。パートナーだと思ってます。」
「そうか。お主はそう思っておるのか。分かった、戦い方を教えてやる。」
「ありがとうございます。」
こうして俺は、戦い方を教えてもらうことになった。