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幕間 黒瀬くんの日常 ①

ストックも大分放出したし、一応ランキングにも載ったし、感想も来ないのでここらで投稿を終わりにしたいと思います。一応の生存報告は果たせたと思うので。

 彼の名は和辻誉。そして、いまだ鮮明に残っているファーストコンタクト。


「わつじ……ほまれ?」

「その名で呼ぶんじゃないっ!!」


 僕の名は黒瀬草太。僕と彼は友人で、クラスも同じゲームも時々一緒にやる。……けれども、名前で呼び合わない。僕は彼のことを君と、彼は僕のことを黒瀬と。それは彼なりの意思表明だ。”黒瀬”であること以外に、お前の価値なんてないという……。



 彼は自分のことを凡人だと思っているらしいが、僕は違うと考えている。何故なら気性が荒い。天才というのはその代償として、どこか致命的な欠陥を持っているというのがよくある。それが天才性だ。彼のそれは、自己の意思を曲げないという点、それから異常な集中力。破滅的で一部の人間を魅惑し、自らの価値をどこまでも下げ、ゲームと割り切れば何度でも死ねる精神性。でも、どこまでも……彼は人間らしい。


「簡単に壊れているだなんて決めつけないでくれよ」


 本当に、そう思う。


 

「今日はいいカツオが入ったんだ」

「わかった、いただこう」


 彼はよくチョコレートを携帯していた。僕の家族が経営している会社の商品で、彼が珍しく絶賛していた。だから気になった。その理由を聞いてみると、「これ食っとけば数時間持つ」と。深化ダイブやら同調シンクロをして数時間潜りっぱなしの時に重宝する。要するにそのチョコレートはその小ささに反してやたらとカロリーがあり、栄養がサプリメント的に詰め込まれ、一食分として成り立ち、実際彼もそれをよく使っているということ。

 当然のことながら健康に悪い。

 なので僕は、せめてもの”気遣い”として彼を時々家に呼ぶ。


「おお、誉。来たか」

「来ました」


 もっともそれだけじゃない。僕が彼を家に呼ぶのは捨三爺さんがそれを望んでいるからだ。爺さんが反対したら連れては来れない。爺さんはすでに経営の一線を退いたが、近ごろ体の衰えが気になっているのかVR関連の事業に出資している。彼は爺さんに私的に雇われた労働者として、僕に仕える。とはいえ彼は爺さんに雇われているので、僕への敬意とかそういうものはまるでない。

 

「それじゃ、始めましょう」

「今日は真剣白羽取りにしようか」

「白羽取りですか」

「こういうものこそ、VRで練習すべきものだ。失敗したら死ぬからな」

「……ですね」


 だからといって、僕が彼のことを嫌っているわけじゃない。むしろ、敬意を払っている。それだから目の前の光景がつらい。爺さんが彼を切り続けている。VRという仮想空間は非現実であり、そこで何が起こっても現実には影響しない――わけではない。主に黒瀬グループが係わっているVR技術とは、現実とVRの差異性を無くすこと。第一VRのことが現実に影響しないのなら、操作感すら伝わらない。出来るだけラグを消し、仮想空間という現実を届ける。そういうことを黒瀬グループはやっている。

 その技術の結晶が同調シンクロ。仮想空間での痛みが現実へと伝わる。


「――もう一回お願いします」

「よし、構えろ」


 即ち疑似的ではあるが死を体感できる。一回死んだところで、肉体や精神にそう大した影響はないが、僕がかつて体験した死は苦しかった。もう、二度と死にたくないと思った。驚くべきことにこれで死の恐怖が伝染し、自殺者が減って批判を躱せたのだから何とも言えない。それでも言いたい。数回ならともかく、何十回何百回と仮想空間で死を体験するのは、迂遠な自殺と何ら変わらないって。

 精神がぶっ壊れる。


「お疲れさま」

「……ああ、黒瀬か」

「迎えの車を用意してる」

「ありがとう」


 疲労困憊の彼を見送る。今日何回死んだだろう? 彼が家に来たら、おいしいもの食べさせて、爺さんと試合をやって、疲れさせて帰らせる。爺さんは彼を買っていた。彼は、VR適性が高い。はっきりとは分かっていないが、人にはVRの得意不得意があり、ジャンルなどによっても違い、そういう仮想空間での適応力だとか空間認識能力とかひっくるめて言えば親和性をVR適性と呼んでいる。

 彼がすごいのは、たとえ現実の身体とまるで違うアバターを使用しても、動きに違和感がない程度には使いこなせるという点だった。VR適性が低いと、現実の体を動かしても違和感がある。並みならどうにかなる。少し高ければアバターの身長などを弄っても十分動かせるようになる。そして彼は男なのに女のアバターを華麗に操っていた。一応、かなり使い込んではいる。VRではアバターの相互利用が可能なので、入魂のアバターを使いまわしているということだ。(アバター名は桜で現在は三代目らしい)



 ユートピアというゲームがある。VRMMOというジャンルに属し、黒瀬グループもその開発に一枚噛んでいる。僕が何かしたわけではないが、その縁で実物をもらった。


「ちょっとしたコネであるものを入手してね…………」


 彼に、回す。僕より彼の方がゲームは上手い。聞いたところによるとまだサービスは開始していないそうなので、彼に渡すのがいいだろうと判断した。僕は後からやろうと思えばいつでもできる。

 そうして、一般発売される一週間後を待ち、プレイを開始する。


「キャラメイクを開始してください」


 普段使っている人間のアバターを流用、人間のままならそれでいいが種族が選べたのでエルフを選択、微調整する。名前は黒瀬だからノワール。


「職業を二つ選んでください」


 彼は戦闘職を選んだ、らしい。戦士系か魔法系かよくわからないが彼の性格からして戦士系だろう。ガス欠で動けないのはつらいはずだ。どうであろうと張り合う気はないので生産職を選択した。薬師と錬金術師。


「スキルを選択してください」


 無難なもの、お薦めリストのスキル群を十個選び取りキャラメイク終了。




 数秒後、転移。僕はエルフだからエルフの街に。それなりに大きな街で、多くの人々が僕の隣を横切っている。エルフは思ったより少ない。改めて、辺りを見渡す。丁寧なことにプレイヤー用の案内所が近くがあった。


「すみません」

「プレイヤーの方ですか?」

「はい」

「ここでは地図を配布しています。何か困ったときにも訪れてください」

「ありがとうございます」


 歩いて薬屋へ。そこで指導を受ければいいだろうと楽観的に考えていたけれど…………?


「悪いが今そんな暇はない」

「……どうしてですか?」

「ポーションが買い占められているんだよ」


 この街の薬師は皆、ポーションの生産に追われていた。プレイヤーがポーションを買い占めている。NPCが無限にポーションを供給してくれるわけでもなく、買えばその分減る。そうやって値段を釣り上げて利益を得る。酷く単純、それでいて効果的な手段。序盤で大量の資金が得られれば、スタートダッシュもたやすい。

 ポーションの買占めによる値段の釣り上げを解決する方法はいくつかある。ただ、どうも薬師の数と買い占める側の数では薬師の大敗。少し生産量を増やしたところでどうにもならず、すでに何人か囲い込まれている。一番簡単な解決策はNPCの介入だ……が、どうもNPCはこの事態を傍観する動き。これはプレイヤーのプレイヤーによるプレイヤーのための騒動で、街の住人はもっと高いポーションを使うので安いポーションが消えようと影響はない。

 さらに不味いのは買い占めにはPKも混じっていることだった。義憤に燃えた誰かがポーションを大量生産しても、それを市場に流す前にPKが掠め取る。薬草の高騰も分かる。近くの薬草が根こそぎ取られているらしい。

 そうやって…………街を歩いて現状を把握し、NPCを動かす以外にこれを解決することが不可能だと悟る。

 ちなみにNPCの言葉。


「どう思います?」

「面白いことやってんなとは思うな。俺としては、安いポーションが高く売れるんだ。大助かり」


 要するに、NPCを動かすことは無理だ。たぶん何らかのメリットを提示しなければならなくて、僕らはそれを出せない。諦めるしかない。ならどうするかってそんなの……

 

「おう、どうした。抗議か?」

「いえ、一枚噛ませていただきたいなと」

「……現状、薬師は足りてるぞ」

「次はマジックポーションを買い占めると思いますが、それでも足りませんか?」

「合格!」


 頭を下げて仲間に入れてもらうしかない。




 今高騰しているのは、下級(便宜的な名称)ポーションだ。材料は薬草と水など。このゲームには魔力という要素があり、それを回復させる魔草というのもある。これに水などを加えたのがマジックポーション。体力がそう簡単に回復できないとなると、ダメージを受けなければいいという考えが広まる。魔法という要素は常に人気だ。となれば、マジックポーションの需要が増える。またそれを買い占める。

 そうしてまたも買占めが起こり、僕はそのおこぼれにあずかった。





 和辻誉/朧 プロゲーマーというよりかは被験者な主人公。少なくとも名前は和辻哲郎に由来する。普段はガサツ即ち荒っぽくある種の男らしさを感じさせるのだが、本人曰く感受性が強く(そして奇妙? な感性を持つ)、狼男が満月に変身するようにガヴェインが太陽の光によって強くなった如く吸血鬼は夜に弱いともされる、そして私は雨の日に女となる、らしい。初期構想が女だった名残。


 黒瀬草太/ノワール テンプレ、だった。異世界に転移したらKAKUGOとか持ち出してくる優柔不断的主人公というテンプレ。因みに朧が異世界に転移した場合は大虐殺もやりかねない。


 纏め

【片手剣】 片手剣の装備制限解除、スキルレベル上昇と共に威力上昇

【短刀】 片手剣を短刀に変えて上に同じ

【掴み】 掴むという動作に補正を加える(具体的にいえば握力上昇など)

【投擲】 投擲という動作に補正を加える(具体的にいえば命中率上昇など)

【蹴り】 蹴りという動作に補正を加える(具体的にいえば威力上昇など)

【ステップ】 ステップという動作に補正を加える?(踊りが苦手でもステップが踏める)レベル30でカンストしロングステップなどに派生。

【跳躍】 跳躍という動作に補正を加える(具体的にいえば高度上昇など)

【鷹の目】 見るという動作、特に動体視力などに補正を加える。そしてロックオン(出来るのは一つ)が可能で使えば自動でターゲットの方向を見れる。朧はこれを利用して無理矢理身体を捻った。常人がこれをやると情報量で頭痛が起こる。

【調教】 魔物を調教できるようになる。平和的にも、暴力的にも。

【召喚】 魔力で契約した召喚獣を呼ぶ。

【疾走】 走るという動作に補正を加える(具体的にいえば速度上昇など)

【暗殺】 暗殺するという動作に補正を加える(具体的にいえば威力上昇など)基本的に意識外からの攻撃を暗殺とカウントするので目の前に居たり、二度目でもカウントするし、その逆もある。

【二刀流】二刀流という動作に補正を加える(具体的にいえば難易度緩和? など)

【博徒】 種族によっては習得できない。確率が五割より低いと上昇し、五割より高いと低くなる。上限・下限は五割。但し十割や0割は変動しない。

【直感】 習得条件はシビア。直感に補正を加える(具体的なことは不明)

【大物食い】 称号スキル、習得を拒否することも可能。自分より強い相手に対して撃破出来る確率を高める(具体的には不明)因みに下剋上でないのは朧の性格の問題。

【回避】回避という動作に補正を加える(具体的にいえば速度上昇など)

【奇襲】奇襲という動作に補正を加える(具体的にいえば威力上昇など)

【幸運】運に補正を加える。朧にも幸運が加わる(具体的なことは不明)

【高揚】精神に高揚を与え、能力を高める。朧などの他者に効果は与えられない。(具体的なことは不明)

【歩行】歩くという動作に補正を加える(具体的にいえば疲労減少など)レベル30でカンストし歩術に。

【罪科】道徳、宗教などの掟に背いた罪。レベル30でカンストし罪火と罪禍に派生。

【罪火】特殊魔法スキルの一種。そう簡単に消えず、身を削ることにより熾る。

【罪禍】道徳に背いた行い、に補正が掛かる。(具体的に言えば規模増大)


 調教師 ・魔力消費無しで連れ歩ける ・即戦力にもなり得る ・調教獣は成長する

 召喚士 ・魔力を消費して呼び出す ・バリエーションに富みDPSも高い ・レベル固定

 調教師+召喚士 魔力を消費して呼び出す(維持コストも掛かるが低め) ・契約対象はバリエーションに富むがレベルリセットが発生 ・成長し尚且つ調教獣と召喚獣両方のパラメータ補正が掛かる


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