怪しむ岩の先に
一頭になってどれくらい経ったか。ようやく俺は川の始まりに辿り着いた。
複数の小さな穴からチョロチョロと流れ出ていて、道中にあったかなり深い池で貯められ、溢れた分が大きな流れになり他の水流と合流して川になってたのだろう。
はー、あんな川でも始まりは小さいんだなぁ。大自然の神秘を感じちゃうよ。
しかし、何か怪しいんだよな。小さな穴と言っても岩の隙間から漏れ出てるって感じだし、この岩の裏に何かありそうだ。
よし、後が怖いけど思い立ったら吉日、なんて言葉もあるんだしね。この壁、というか岩を砕いてみるか!
息を吸って、息を吐いて、必殺の蹄アターック!
ドガァァァァァァァァァン!バッシャァァァァ!
ぎゃぁぁっ!?めっちゃ水が出てきたゴボボボボ!まぎごまれっ、ぐるじい!
水流に巻き込まれて数秒だか数十秒だか、はたまた数分か、それくらいの体感時間だったが、ようやく水流がとまり解放された。
こ、この岩の後ろに大量の水が溜まってたのか…………
あれ、じゃあこの岩ってこの先の水源を塞いでたってことだよね。自然崩落にしたって少し不自然だったし、だとしたら人為的に?うーむ、さすがに牧場主も家畜に歴史を教えてないから分からん。
でも、これって何か訳がありそうだ。奥にお宝が!?なんて豚に真珠レベルのものだ。牛は草と水とギリギリ死なない程度の敵さえいれば何とかなるのです。
でも、奥が暗いな。暗視があれば見えそうだけど、牛にそんなものを期待してはいけない。
とりあえず入っていこう。牛鎧、はさすがに無いか。馬鎧でもあれば拝借していこう。
どう着けるかの目処はたってないけどな!
〜●〜●〜●〜●〜
暗い暗い、何も見えねぇよこん畜生!しかもちゃんとまっすぐ歩いてるのか分からないし、たまに壁にぶつかるし…………
そう思っていた矢先、急に周りが明るくなった。あっ、あそこらへんに街灯みたいなのがたくさんある!
これを辿ったらどこに行きつくんだ?牛ながらワクワクしてきたぞ。しかし、罠があるかもしれないという考えが今になって思い浮かんだ。
うーむ、そこは反省しなくちゃいけないけど、今はこの街灯と水路に沿って進むべきだ。
何が出る?お宝かそれとも大魔王か?はたまた女神様だったりして。
しかし、長く続くな。この洞窟の奥にたどり着かない。実は無限ループの罠に嵌ってたりするのかな?そうなったら餓死一直線だけど…………
目の前に何か大きな空洞に行き着いた。そして、入ったと同時にここにあった街灯らしきものが全て光り、全貌を見せつけられた。
これはまさか遺跡なの!?と人間の言葉を喋られたら叫んでいただろう。そう、ここは古代に繁栄していた遺跡だったのだ!
本当に古代遺跡かどうかは分からないけどね。
しかし、牧場主が住んでた家と比べて高度な文明を誇ってるのが丸わかりだ。俺には分かる。だってただの雌牛じゃないから。
のしのしと歩いていくと噴水があった。しかし、一部が壊れていてかなりの量の水が漏れ出していた。これが川の元になってたのか。
気配は何もないのに管理されてるように綺麗な街だな。
『スキル「気配察知(1)」を取得しました』
ふぁっ!?いきなりのアナウンスでビックリした。ここでスキルを入手するのかぁ。
ん?なんか噴水の一部に何か感じる、というか何か先っぽがカタカタ鳴ってる様な…………?
バキャッ、ピュンッ
はうっ!?何か飛んできて頭に当たった…………
不意打ちとは卑怯な、うっ、頭が痛くなって、というか眠くなってきた…………
どしんという音が聞こえた。俺が倒れた音だ。ダメだ、眠気に勝てない…………
俺は命が終わるのかと思いつつ目を閉じて眠りについた。目覚めた時のことを考えずに…………
遂に宝玉(仮)が!
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