拠点は水辺の近く
我輩は一頭になって二ヶ月経った雌牛である。名前は無い。
川を見つけてそこら辺でゆっくりと暮らしている。所々に狼の死体があるのは仕方ない。
それにしても楽園を手に入れたもんだ。ここの草は水辺にあるせいか結構いいし、食っても2日ほどで個体差はあるけどほぼ同じくらい生えてくる。
まあ、そんなに一気に食べられないけどな。牛というのは胃が四つあって全部通しても草を消化できないから反芻というのをしている。これ、無意識にやってたよ。
いや、長いこと牛をやってたら牛になるもんだな。まだ2年半くらいだけど。
それで、時たまに小動物や肉食動物もここの川に水を飲みにくる。小動物は見逃すが、蛇や狼はこの蹄で倒した。
ちょくちょく力が湧いてくるなーみたいな感覚はあるが目に見える訳じゃない。
誰かのステータスを見るような感じて見られたらいいなと思うが、ここは現実、ここにそんな都合いいものがあるはずがない。
まあ、そもそも牛なのだから微妙だけど。下手したら人間に捕まって食われるかもな。
でも、確か俺は肉牛じゃなくて乳牛だしそこら辺の心配はないか、な?食うより売ったほうが高いの食えそうだ。
まあ、大したこともなく細々(?)と暮らしてますよ。あ、蛇発見、潰しとこう。
まあ、何というか平和だな。何度も命の危機に陥るイベントが起こるのは勘弁だが、牛蹄拳の餌食となる動物は結構いるから助かる。
しかし、牛蹄拳(1)からなにも変わらないんだよな。もしかしたら天から報告されてないだけで1が2になってるかもしれない。
はあ、牛って結構不便だな。攻撃スキルがある分、贅沢は言えないけどさ。
さて、今日もちょっとずつ川を登っていくか。文字通りいい道草食うから時間がかかるんだよなぁ。
それでもまだ川の始まりに到達しないのも、かなり長い川だってことだろうな。
しかし、出てくる生物も植物もあまり変わらないっていうのはどうなんだろう?ジャングルで平坦なとこだから生態系があまり変わらない?
んー、考えても仕方ないや。あ、このピンク色の草美味しそう。じっくり何度も反芻して食べてみよう。
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『スキル「猛毒耐性(1)」を取得しました』
しばらくの間、死にそうになってしまいました。
天の声を聞く限りだと、あのピンク色の草って猛毒だったんだろうね、うん。
しばらく食欲がかなり失せるわ体力がかなり無くなって動くことすらできなくなってくるわで本当に死にそうになった。
自然界はぬるま湯に浸かった牧場より遥かに過酷だっていう事を改めて感じたよ…………
ああ、ちょっと痩せたよコレ。一週間くらい寝込みそうになったよ。その間にも狼が来て襲いかかってきたけど結構問題なく追い払えた。
俺が盗賊とか倒して強くなったのかと思ってたけど、実はここのモンスターってかなり弱い?と思えるほどだった。
とゆうか、草食動物にばんばか負ける肉食動物って絵面的にどうなんだろう?いや、バッファローはライオンをも追い返すことができるからそう珍しいことでもない、か?
まあ、他の牛より徐々に強くなってるのは確かだ。最強とは言わずとも、このジャングルで普通に生きることができるようになってきたことが証拠だ。
まあ、盗賊の頭を踏み砕いた『一蹄必殺』のお陰だけど、運も実力のうちってね。
はあぁ、腹が減ってきたから草食べよう。もうピンク色の草なんて絶対に食べないからな!ぼちぼち草を食べたらまた上の方に向かいますかね。
さあ、新たなるものを求めて、いざ行かん!
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