蹄の草食動物と牙の肉食動物
ジャングルに入ったのはいいものの、歩いてたまに草をムシャムシャと食べるしかないという日が何日も続いた。
以外と何も無い。たまにリスやネズミみたいな動物は見るけどそれ以上の大きな動物は見られない。だって俺がそれなりに大きいから。
しかし、この状況で牛に産まれたのはある意味幸運だったのかもしれない。基本的に食料に困らないというのはありがたい。まあ、砂漠や何も無い荒野を歩くことになるのは別だが。
『スキル「渇き耐性(1)」を取得しました』
あ、なんか聞こえた。そういえば最近草ばっかり食ってて水は一切飲んでいない。そのせいでこのスキルが手に入ったのか?というか、スキルってなんだよ?
うーん、現状だと本当に何も分からない。一応、ハイスペックな牛だからこの世界の文字は読めるけど本がなければ意味が無い。
もっとも欲しいのは知識だけど無い物ねだりしても仕方が無い。そもそもここはジャングルだし本なんてある訳がない。
やれやれ、小動物を潰してレベル上げをするのは気がひける。せめて凶暴極悪な、とまで言ったら俺が食われるからダメだけど、それなりに天敵になるものがあらわれたらなぁ。
ガサッ
草むらから何か大きなものが、子牛の自分よりは小さいけど、動く音がした。なんだろう、犬か?
「グルルルル…………」
あ、肉食動物の狼さんチッス。こんないたいけな子牛を食べたいような目で見てこないで!
「ガルルルルル…………」
「クルルルルル…………」
合計三匹のこぶたならぬ三匹の狼に囲まれてしまった。
牛が狼に囲まれたらどうなる?答えは逃げようとして食べられる、だ。しかし、お前らの目の前にいる牛はただの牛ではないぞ。
人間様レベルの知能を持った牛だ!貴様らの動きなんざ見切って蹄をその頭にぶちかましてやる!くらえ突進からの一蹄必殺アタック!
「ブモーウッ!」
「ギャンッ!?」
蹄のストンピングは狼の素早いサイドステップで辛うじて外したが足にヒットしたので動きはかなり鈍く…………あれ?
「キュ………ゥ…」
ちょっと痙攣したあとにピクリとも動かなくなったよ?え、死んだ?
いや、足に当たっただけで即死は無いでしょ?あ、まさか『一蹄必殺』の効果?本当に即死効果的なのがついてるのか!
いや待て、もしかしたら低確率で即死しただけで運が良かっただけかもしれない。よし、気を取り直して次の狼に挑む!
「ガウゥッ!」
「モッ!モヴヴッ!」
痛っ!足を噛まれたけどすぐに振り払うことができた。意外と噛む力が弱かった気がする。でも噛まれた跡ができてるしちょっとだけ痛い。
さて、反撃の時間だオラァ!くらえ蹄ストンピング!
「ガルッ!ガッ!?」
よし、狼の額にクリーンヒット!狼は脳みそをブチまけてそのまま絶命した。これは『一蹄必殺』は関係なく即死のはずだ。
「キュ、キューン!」
あっ、残りのカモが逃げていった。チッ、いい経験値になりそうだったのに。でも、狼を二匹殺したくらいでレベルアップしないか。それとも大幅なレベルアップがあったから、あの声が聞こえたのかな?
うーん、分からないけどこの生活を続けていこう。とゆうか、足がまだちょっと痛いけどすぐに傷は塞がるよね?
流石に細菌感染して終わりなんてのは嫌だし、水辺を探しに行こう。あと何日も飲んでないから喉を潤すために水を飲もう。
もしかしたら経験値を稼げる獲物がいるかもしれないしね。あ、ちょっと待って、鼻が痒くてくしゃみ出そう。へくしゅうっ!
プチっ
『大幅なレベルアップを確認しました』
何か聞こえた気がしたけど気のせいか?あれ、足元に何かの結晶と鈍い銀色の液体が散らばってる。
流石にこれは飲みたくないな。水銀だったら即アウトだし。でも、なんかこの液体ってスライムのような…………
まあ、知識もないから今はどうでもいいか。川でも湖でもいいから水辺を探そう。
銀色のスライムといえば…………?
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