遠征組が帰ってきた
さっきから僕のランクの事でうんうん唸ってる受付の人とは違って入り口あたりがうるさくなってきた。
何だ何だと思ってたら、なんと遺跡に来た人たちだった!
しかもね、獣人の方々が何か焦ってるような顔をしてるんだ。誰かを探してる的なことを周りの人に言ってるような気がする。
うん、分かってるよ。僕だよね!僕が突然いなくなったもんね!
それにしても、2時間ほど経ってるのに遠征から帰ってきたことをここに報告しないのはなんでだろう?
報告よりも何か重要なことがあったのかな?
「こんくらいの小さい女の子だ。あとかなり戦闘的だから話しかけるときは注意しろよ」
「何だよ、探してる子はナイフでも持ってるのか?」
「あの人にナイフなんか持たせても意味はない。二ヶ月程度しか見てないが刃物の扱いはド下手だ」
「肉を切ろうとしてもなかなか切れなくて最終的にキレたにゃ。止めるのは他のやつがやってたけど大変そうだったにゃ〜」
「あの時に人手が足りんと思ってたらお前サボってたのか」
「にゃっ!?しまった、口が滑ったにゃ…………」
やばい、一瞬しばきたい衝動に駆られた。いや、ナイフで肉を切れなかったのは僕が悪いんじゃなくてナイフが悪いんだよ。
そもそも僕は肉より草の方をムシャムシャと食べたかった。それでも勧められてこれも経験の内だと肉を食べてみた結果、お肉クソまずかったです。
特に水辺からやや離れてた草が意外と美味しかったなぁ。また今度行ってみよう。
さて、ランクが決まるまであの依頼っほいのが書かれてある黒板、かな?それを見て時間潰そう。
んーと、ゴブリン10匹狩りとかヌルすぎで話にならないよ。おら今度は盗賊だ。どこかで見たような顔をしてるけど思い出せない。
この盗賊はCランクだ。報酬もなんかの皮とお金だから結構しょっぱいような気がする。この価値がわかってないから言えることだけどね。
どの依頼がいいかな〜?と考えてるのに夢中になりすぎて気づいていなかった。
「やっと……見つけた……」
既に遠征組が僕の周りを包囲していることに、ね。うん、本当にほとんどのメンバーに囲まれてる。どう見ても包囲網だねこれ。
「ちょっと、お話がありますけど」
「ヤダ、見つけられなかったみんなが悪いもん」
「拳骨落ちてもおかしくないにゃ……」
アッシュさんの額に青筋が浮かんでるよー。ヤダこわーい。
「まあ、説教は後にしておいて」
「説教はするんだ」
「えー、説教やだー」
有無を言わせずにポンと頭に手を置かれた。ちょっ、アッシュこれ力入れてない?このままぷらーんって持ち運べそうなほど力入れてない?
「よし、逃げないように見張っててくれ。俺はマスターのとこに行く」
「出来る限り早く戻ってきてくださいね」
遠征組の十何人は残ることになった。後は一度家に帰って休んだり知り合いに顔を出したりするんだって。
ぬう、お腹減ってきたなぁ。ここら辺に草生えてないかな…………
「にゃあ、早く風呂に入りたいにゃ…………」
「我慢しろ。ちょっとよそ見してるだけでこの方を見失うぞ」
流石にもうしないっての!今日はね!
雌牛「(説教とかやだなー。あれ、何で説教を受けたことないのにやだって思えるんだろ?)」