僕の名前は
遅いですけどあけましておめでとうございます。
今年も自分の小説をよろしくお願いします。
「ふーふふーのふーん♪」
上機嫌な僕とは違って何かを悩んでいる受付の人。
「うーん、やっぱりせめてDランクから始めたら……前例を作るのは上が怒るし……かといってFランクから始めるとジョームズさんが……」
どうやらこの人の苦労は絶えないらしい。何だっけこれ、あの遺跡にあった日記を暇つぶしに解読したけどチューカンカンリショクがどうのこうので苦労してた話があった。
あれ、あまり関係ないような気がする。
「まーだー?」
「ちょっと黙ってて」
うわぁ、この人すぐに黙れって言う。こわーい(棒)
まあ、これはさておき少し困ったことがある。ギルド登録についてのことだ。
ギルド登録にちょっとした書類を書かなければならない。出身地と名前、年齢をちょちょいと書くだけだけど、識字率がそこまで高くないらしいから代わりに書いてもらうってのもあるんだってジョームズのおじ様が言ってた。
僕?僕は遺跡で文字を学んだよ。大体のことは書けるし読めるね!ただ、遺跡にあった本とちょっと形が違うから間違えそうだけどね。
出身地と年齢は、まあ軽く詐欺れるから問題ない。牛だって騙すことくらいするよ?
で、何が問題かというと僕の名前のことだよ。つい半年前くらいに乳牛から雌牛人間に進化した僕に名前はないからだ。
だってその間は僕のことを呼ぶ人なんて誰もいなかったし。
んー、どうしよっかなぁ?どうせ後ろめたいことあるから偽名のやつ多いんだろうし適当でいっか。
流石にふざけたのはまずいと思うけど、普通に雌牛って書いておこっと。
机も僕にとってはちょっと高いから椅子の上で膝立ちして羽根ペンでスラスラッと。そういえば、遺跡にあった本もそうだったけど今書いた書類は滑らかな触り心地だ。
匂いからして、これは木で作られたものかな?結構白いし、何より美味しそう…………じゅるり。
絶対これそこら辺の草より美味しいって!木は齧ったことないけど匂いからして絶対美味しいって!
うーん、町の感じから硬貨と物を交換してるっぽいから、それで交換できないかなぁ?硬貨持ってないけども。
「書けたよー」
そんなのは後で考えよう。書類の提出が先だ。
「ええと……この文字読めない……でも落書きには見えないし、どこかで見たような文字になってる?」
そう言って後ろの棚にある辞書っぽいのを取り出してブツブツと言いながら何回か確認して僕が雌牛と書いた上に小さく文字を書いている。
あれ、僕あの文字知らない。出身地に関してはかなり適当に書いたけど
「なかなかに難しい文字知ってるんですね」
「そう?僕はそう学んだけど…………」
当然ながら独学だから間違ってるかもしれないけど仕方ないよね。
「えーと、ファラリスちゃん12歳、出身地はコダーギリャ、でいいですかね?」
「え?あ、うん」
何それ、雌牛をどう読んだらファラリスになるのが僕が聞きたい。古代と今の違いというものかな?それにコダーギリャって本当にどこ!?
適当に『近くの遺跡』って書いたつもりだったけど、読みでそんな感じになっちゃったかぁ。まあ、存在しない場所になるよね。
問題は文字がここの文字と違うかったくらいで書類の方はこれでいいと受付の人は言ってくれた。
冒険者っていうのは強い魔物と戦ってお金を得るって職業って聞いてる。強くなりたい僕としては強い相手と戦って強くなり、お金というものを手に入れる最高の職業だ。
ふふふ、僕はもっと強くなる!特に意味もないけど強くなるっさ!
雌牛「ファラリスって何かの道具で聞いたことあるような無いような…………ま、いっか!」