話になるのとならないの
試験開始からまだ5分もたっていないが試験は終わった。早すぎてあっけないと僕は感じてしまった。
「ジョームズさん…………」
「いてて…………これくらいどうってことない。Aランク級の魔物の攻撃を受けたくらいだ」
「十分すぎます!そもそも小娘ごときに何がAランク級の魔物の攻撃ですか!あなたならそれくらい防げるでしょう!」
めっちゃ叱られてる。受付の人に治療されながら笑ってるけど叱られてろよあの人。
正直なことを言うと、死んだんじゃないかと思ったけどかなり頑丈なんだね。
「はあ、ジョームズさんまたふざけるなら減給処分が来ますよ」
「俺がふざけてこんな怪我を負うか?蜂の巣つついた訳じゃないんだ。というか、鉄心入った木刀が折れてる時点で察しろや」
「前にふざけて折ったのは誰でしたっけ?」
あのおじ様目を逸らしたよ。前にもやらかしていたのか。まあ、おじ様は油断さえなければ強いことは分かったし。
「とりあえず試験は合格だ。このお嬢ちゃんはAランクから始めたほうがいいぞ」
「はあ、まーた過大評価ですか!」
「またってなんだよ!十年前は覚醒する前の勇者に一番初めに目をつけてたのは俺だよ!?」
へえ、この世界って勇者とかいるんだ。十年前とかの話だから今は強いんだろーなー。
勇者のことは置いといて僕の試験のことについてだ。え?勇者のことは聞かないのかだって?だって接点もできなさそうだから別にいいもん。
しかもさ、会ってはいけないという野生の勘が囁いてるからろくなもんじゃないと思う。
「ねえねえ、僕のランクはAになるの?」
無邪気を装いおじ様に聞く。まあ、あれだけの実力を見せつけたんだからAランクだよね!肉質の話じゃないからね!
「おうよ、お嬢ちゃん。Aランク確定だぜ」
「いいえ、馬鹿なんですか?殺したいのですか?規定よりFランクから開始です」
ちぇっ、さすがに飛び級は無理だったか。まあ、初めはなんかの草を摘んだりゴブリンとかよわっちいのを潰すくらいだろうけど千里の道も一歩から、だったかな?ちまちまやっても経験となるしいつか強いのと戦えるから別にいっか。
「はあ、まったく色々と面倒くさい人です」
「面倒くさいってなんだよ!お嬢ちゃんを早く高ランクにしないと面倒なやつらが目をつけるぞ」
先程と違って明らかに真剣な声色で受付の人に言う。あの目はマジって言ってる目だ、この短期間だけどおじ様がマジな目をするってのはレアだと思う。
なんか今までしてきたことで台無しにしてるようにも見えるけどね。いやー、行いって大切だね!
「とにかく、ジョームズさんが何と言おうとFランクからの開始ですからね」
「もったいないぜ本当に!」
こうして、治癒魔法によって(本当に存在してたんだ)おじ様の怪我を治して僕たちは僕の身分証明書みたいなのを作りにギルドのロビーに戻ることとなった。