僕は色々凄いらしい
耳をペタンと抑えた僕は叫んだ後にまた硬直した彼らを見てるしかなかった。
まあ、心中お察しするよ。僕の見た目は幼女だ。幼女が初見で「私はフェルト森林の主なのだー」と言ったら信じる?
そんなことはない、ただの冗談だと思うだろう。
しかし、前まで発見されていない大きな遺跡に一人だけいたら?それだけでも信じなくてもまさかという信憑性を持たせることができる。
「ほ、本当にフェルト森林の主なのか?称号はあるんだな?」
「馬鹿言うな、遺跡とはいっても称号鑑定水晶があるわけねぇだろ」
称号鑑定水晶とは何だろう?多分だけど名前のまんま称号を鑑定する水晶のことだろうな。でも、あの水晶玉は名前とかいっぱい載ってたし、称号も載ってたよ?
これは単なる推測だけど称号鑑定水晶はここにある水晶玉の劣化版みたいなんだろうね。
「フェルト森林の主ていう称号は持ってるよ。この称号の効果は『フェルト森林において一定より弱い魔物は逆らうことができないようにできる』だったね」
「称号の効果を知っているだと…………間違いない、信じられんがこの子が現フェルト森林の主だ」
「嘘に決まってる!たまたま迷い込んだだけだろ!」
「たまたま大人が街から2ヵ月かけてやっと来れるところに少女が来れるものか?」
反論したキレやすい若者は年長っぽいおじさんに黙らされた。まあ、ここに来るまで結構魔物に絡まれたもんな。
まあ、襲い掛かってきた魔物は成長の土になってもらったがな!
それにしても、みんな大人のわりに弱そうに見える。なんでだろう?
『スキル「強者察知(1)」を取得しました』
え、このタイミングでスキル獲得できんの?まあ、僕より強い人は悲しくもいないようだ。僕が強すぎるだけかもしれないし、実力を隠してるのかもしれない。
まさか、大人数で幼女を襲わないよね…………?
「まあ、君がフェルト森林の主ということは認めよう。ところで最近、魔物の死体が転がっているのをよく見るのだが何か知っていることは?」
「訓練として戦ってるの。まだまだ強くなりたいからね」
代表者と会話してる中、獣人の数名は僕を見てまだ固まっていた。
僕の正体が牛だってこと分かってるのかな?でも、なんかちょっとガタガタ震えてるような気が…………
「あ、あの、もう行きましょうよ。とりあえずフェルト森林の主を突き止めるだけだし、ね?ね?」
訂正、めっちゃ震えてる。代表者の袖を軽く引っ張って進言してる。震えてるけど。
引っ張ってるのが女だったら可愛いのに男だからなんとも言えない。
「ガルス、お前がそこまで怯えるなんてどうした?」
「獣人には分かるんだ。この方は敵対してはいけない…………下手したら神罰が降る可能性がある…………」
「「…………はっ?」」
待って、神罰が降るってどいうこと?え、えーと、よく分かんないよぉ!?
「が、ガルス、何故神罰の話が出る?確かにこの子はフェルト森林の主だが神獣という訳でもないだろ?」
「称号にも神獣なんて単語なかったよ!」
僕の称号は『ゴブリンスレイヤー』『フェルト森林の主』『牛蹄拳開祖』『人間に進化せし生物』『古代の知識を得た者』の5つだけだ。
まさか、人間に進化せし生物か?確かボーナスは元のステータスに知力500増えるっていうやつだったけど…………
いや、そもそも人間に進化せし生物ってある意味で神が気まぐれに作った種族みたいなものじゃないのか?
種族は雌牛人間だけど、というか雌牛人間より牛人間の方が良かったんじゃね?
「ねえ、まさかそれの理由って僕の種族が雌牛人間だから?」
「雌牛人間…………人間!?最後に人間が付くのか!?」
「やっぱり!ああ、申し訳ありません!」
「「「すんませんっしたぁ!」」」
獣人全員が腰を90度に曲げて俺に謝罪してきた。
なんかこう、意味のわからない謝罪を受けてもいい気分になれない。理由を聞かねば。
「雌牛人間…………だと?まさか人間に進化した種族を見ることができるとは…………」
「アッシュさん?その子がどうしました?」
「っ、レミィ、済まないがこの方とガルス達で話がしたいから皆に伝えてくれ」
「話し合いするならあそこがぴったりだよ」
もう既に使われていない役所みたいなところを指さして伝えた。
あそこならちょうど会議できる場所もあるしね。
「ありがとう。ガルス、行くぞ」
「「「「はいっ!」」」」
恐れも入ってるが尊敬しているような目で僕を見てくる獣人たち。彼らの返事に耳をペタンと抑える僕であった。
「雌牛人間…………牛肉食べたい」
ついでにレミィとはこれからの関係を一切築くことはしないと心に誓った。
雌牛「まだ何が凄いかよく分かってない」