決闘――1――
「お、お許しください、お許しくださいケ……」
炎の光と黒煙の闇に囲まれた中、富士谷隆己と
7人の竜の侏儒が対峙している。
這いつくばって命乞いをする侏儒がいる。
怒る侏儒もいる。
どの侏儒もいつもの驚いたような顔を
さらに引きつらせて、普段よりもっと早口で喋る。
「わ、ワレワレはただの人間ではない、
竜ですケ、
竜を殺したらタダでは……」
「その通り、ワレらが聖典にも
書いてあるんですケ!
『竜や人の形は神の似姿である、
人は竜であり竜は人である』。」
「『殺人は雛形たる
神への挑戦である』。」
「『人を殺す者は死んでいるべきだ』!」
侏儒たちの言い分に機嫌を悪くした隆己は
彼らの言葉を遮るように
彼らの内の一人を蹴り飛ばす。
蹴られた侏儒は衝撃を受けた風船のように
空中で爆発四散する。
「ケェーッッ!!」
当人は即死、悲鳴を上げるのは仲間の侏儒だ。
その悲鳴すらも抑え込んでしまうほどの
強烈な殺気を込めて隆己は侏儒を、
その後ろに控えている大勢の生徒たちを
睨みつけて言い放つ。
「現実というものを、
理解なさってないんじゃないですかねぇ皆さん?
現実を見なさい!
今目の前にあるものを見ろと言ってるんだ。
虚しいものはみんな燃える。
あまり多くのものを欲してはいけないということだ。
僕らの周りにはいらないものが多すぎた……
生きることは苦痛なだけだ。」
お前たちは悪だとだと言わんばかりに
隆己は皆を指差す。
「生きるとは不毛な努力だよ。
水平線に向かって泳ぐようなものさ。
生きるとは欺瞞であり生き物は全て悪だ。
この僕がもたらす死こそが救済で、
死こそが勝利だ! 命じゃなくて死を乞え!
神じゃなく僕に祈れ!」
「こ、こんなの、訳が分からない、
こいつ病気ですケ……」
隆己は思う。
今や光や空気さえも自分の思い通りだ、
自分は全知全能だ。
悪態を囁く生徒、
武器を強く握りしめる生徒、祈る人、
怪我人を支える人、自分の怪我を気にする人、
侏儒たち、その侏儒の足元で死人のように
蹲る生徒会長も含めて、
いま改めて自分に抗う者がどれだけいるだろうか。
「これまでか……」
そう生徒会長が漏らしたのを
聞き逃さなかった隆己は
まるで褒められたかのように
背筋をぞくぞくさせる。
人々の絶望をその耳で聞くのが
嬉しくてたまらないのだ。
そういう声をもっと聞きたい、
もっと時間をかけて聞きたい、
もっと恐れられたい、もっと認められたい、
もっともっと自分の力を思い知らしめたい、
そうして自らの更なる勝利を渇望した時、
富士谷隆己は人垣を掻き分ける一つの影を見た。
自分目がけて歩み寄る影、
すなわち――私、富士谷明朝だ。
私が向かう先に怪物となった兄弟がいる。
兄の周りがどういう状況かはすぐに察しが付く。
キサメが力を貸してくれているからか、
遠くのやり取りもよく聞き取れる。
私の前進は歩くという動作にしては
あまりにも不格好であった。
生身の方はまさに足手まといで
体の半分も支えられない。
体重のほぼ全てを義足だけに
預けて歩く私の姿は
傍から見ればまさに笑いものだろう。
案の定私に気づいた生徒たちが
にやにやしたり吹き出したりしているが、
無視する。
殆どの人が道を開けてくれないので
遠回りしようとしたら
生徒の一人が私に掴みかかってきた。
私の様子を一目見て
簡単に突き倒せると思ったのだろう。
実際、僅かでも重心を崩されたら倒れてしまう。
また起き上がるのは難儀だ。
私は倒される前に逆に彼を突き飛ばした。
別の者が背中を蹴ってくる。
義足と人工脊髄の出力を瞬間的に上昇させて
その蹴りを弾き返す。
蹴った相手は反動を受けて転んでいる。
生徒たちが後ずさる。
代わりに『赤鬼』たちが私の前へ出てくる。
緊張感が高まるが問題ないはずだ。
気の早い『赤鬼』の一体が突っ込んでくる。
その『赤鬼』を義手で掴み上げ
兄のいる方へ投げ飛ばす。兄が私に気づく。
「明朝……死ぬのが待ちきれないのかい?
死ぬってのは難しいことなんだよ。
僕は9歳の時にそれを学んだ。
お前は一瞬で、苦しまないように
死なせてあげるよ。」
兄は私を指さした。硫黄線が来る。
避けられはしない。
私は顔をしかめてそれが
額に直撃するのを耐える。
硫黄線の超圧力と熱は
私の頭の人工皮膚を切ってめくった。
しかし脳まで到達することはない。
額を形成する金属板に沿って弾かれるだけだ。
私は歩みを止めない。
兄が2発3発と続けて硫黄線を放つ。
直撃を被る度に人工皮膚が溶けて
義肢本体が露わになっていく。
顔面、喉、胸。
私が剥き出しになっていく。
「何だその力は?
その義肢にそんな力はないはずだ。
闇医者の一番安価なオプションの治療で
付けられた義肢だったはずだろ?
流通品にも劣る超廉価製品で……
まさか、それがお前の本当の力か?
『現実』を克服したというのか……」
私がより速く歩くと『赤鬼』が制止してくる。
『赤鬼』はどんどん群がってきて
私を数で圧倒した。
四方八方から押さえ込まれ息もできない。
私はその場に縮こまる。
その上に『赤鬼』たちが山のように積み重なる。
「そうだ押し潰せ!
燃え尽きても構うものか! 最大火力だ!」
兄は命令するのに加えて火炎放射を浴びせてくる。
『赤鬼』たちの火力が増大し
それに連れて押さえてくる力も増していく。
兄の炎が『赤鬼』ごと私を消し炭にしようとする。
『赤鬼』たちの吠える声も大きくなっていく。
おそらくは最後の咆哮なのだ。
私は曲げていた義肢の節々を一気に開放した。
私は一瞬で大の字のポーズとなって立ち上がり、
縋りつく『赤鬼』たちを宙に浮かす勢いで
吹き飛ばした。
あちこちに散らばった『赤鬼』たちは
焼け焦げた黒い体だけになって、
電池切れになったように動かない。
「ははは、なるほどね、
なんだか強くなってるね……
だけどね明朝、例えどんな力があっても
戦う相手を間違えると意味がないんだよ。」
そう言うと兄は振り返り、
生徒の皆がいる方へ歩いて行く。
その唐突な行動に皆が警戒する。
私は急いで兄を追う。しかし間に合わない。
兄はもう皆のすぐ前にいる。
皆が攻撃される。そう思った。
「生存者の皆さん! 出番だよ!
この明朝を叩き殺すんだ。」
全く予想外だ。なんということだ、
生徒たちを私にけしかけるとは。
「明朝はみんなのことを恐れてる。
明朝にはみんなを殺すなんて絶対にできない!
みんなでかかれば簡単に倒せるさ!」
兄の言っていることは嘘ではない。
私は火事や『赤鬼』より学校の皆の方が怖い。
『赤鬼』はすでに死んだ人間だが、
皆の方は生きた人間で、
何の罰せられる心配なしに
私を責めることができる。
皆の中には友人たちもいる。
友人たちは私が仕返しなど
まともにできない人間であることを知っている。
「例え簡単じゃなくても
最後の一人になるまで殺し合ってほしいなぁ。
みんなやってくれるよね!」
しかし例え皆が兄の指図通り
私に向かってきたとしても、私は戦うしかない。
この数でかかって来られたら
手加減などしていられない。
私に逃げ場はもうない。
「大丈夫、誰も向かってこないわ。」
頭の中にキサメの声がしたのと同時に、
皆が動き出した。
恐る恐る、忍び寄るように、
兄を遠巻きに避けるように列をなし、
そして私の背後の離れた所へ固まっていく。
「またしてもみんな日和見を
決め込んだようですね……」
生徒会長が身を起こし、
兄に向かって勝利宣言のように言い放つ。
「だがそれでいい……
もう誰も貴方の言うことは聞かないということです、
隆己さん……」
兄が皆の顔や燃え尽きた
『赤鬼』たちを睨み付ける。
生徒会長の言う通り
もう兄の味方はいなくなったはずだ。
とはいえ、もともと徒党を組むのを
毛嫌いしていた人だから
一人きりでも戦う策を持っているはずだ。
「その通りよハルカタ。
お兄さんはまだまだ本気じゃないわ。」
「兄さんの心も読めるのか……?」
「この距離だと離れすぎてるから
詳しくは分からないけど……
でも次こそ全力で来ることは確かね。
できるだけ助言はする。」
「キサメ、怪我は……」
「平気。
それに、こうやって地面に寝そべって傍観してると
割と冷静にものが見えるの。」
「……分かった。無理はしないで……」
キサメの様子が気になるが
今ここで兄の前を離れる訳にはいかない。
「全く、誰も死にたがらないのか……」
兄が気を取り直して喋りだす。
わざとらしい大きな溜息をついて
私たちの注意を引いている。
「死ぬのが怖いのか君たちは?
そんな訳ないだろう?
死は希望だろうが、どうだ、えぇ?
ようするにみんなは、僕の思い通りになるのが
嫌なだけなんだろう?」
誰の返事も待つことなく兄は
皆の視線を胸で受け止めるように仁王立ちする。
「そんなに操られたくないなら
本当に死ぬようにしてやる!」
兄が滑らかに、翼を広げるように
両手を大きく伸ばして後ろ向きに突き出す。
私はそのポーズから空想じみた脅威を連想した。
今日散々味わってきた非日常を体験してもなお
空想じみていると思えるその脅威は……
「まさか……」
兄の表情が更に生気に満ちて、
飛び上がりそうなほどの喜びに満ちていく。
その両手にはいまだかつてない強大な力の奔流が、
青く激しく輝いている。
辺りが真昼のように明るくなる。
「出力全開の硫黄噴射だ!
限界まで反応させた60トンの硫黄を
5秒間射出する!
乗用車を軽く消し炭に変えるパワー!
まともに受ければ文字通り蒸発するぞぉ!」
それを聞いた人々がざわめく。
それはすぐに悲鳴に変わる。
いつの間にか皆の逃げ道を塞ぐように
黒煙が回り込んでいる。
生徒会長が皆に一か所に
固まらないよう指示している。
私はどうすればいいか分からなくなり硬直する。
そこにキサメの声が響く。
「ハルカタ、あの攻撃は誰にも当たらない。
あんな膨大なエネルギーは
真っ直ぐ飛ばすのも難しい。
お兄さんには制御できないわ。」
「本当に?」
「ほんとよ。下手に避けようとする方が
むしろ危ないわ。真正面から受けきるつもりで、
一歩も動かないで。
そこから逃げれば死ぬだけ。」
逃げれば死ぬ。その意味は今の私になら分かる。
今の私が納得するにはその言葉だけで十分だ。
「分かった……」
兄が何か言うのと一緒に切り札が放たれる。
キサメや私を打ち抜いたあの光線の
何百倍ものエネルギーだ。
目がずきずきするような眩しさが
視界いっぱいに満ちみちて
距離感がつかめない。
孤独に立ち向かえば比喩表現抜きで
発狂するところだ。だが今の私は違う。
閉じた瞼の裏が真っ白になり、
強風が耳元を直に吹き付けるような
長く続く音を落ち着いて聞き続ける。
今まで感じたこともない大きな力が
体を吹き飛ばそうとするのを感じたが、
それに勝る力が自分の体の芯から湧きあがる。
破壊力と抗う力のせめぎ合いの後、
明確な静けさを感じた私は
大きく息を吐いて瞼を開く。
そこには肩で息をする兄がいるだけで、
さっきと変わったところはない。
硫黄はどこにもない。
皆もとりあえず無事なようだ。
「外した! 盛大に外してしまった、
くそっ! いや、問題はそこじゃあない、
何故一歩も動かなかった明朝ぁ!?
何故逃げなかった!?
足どころか手も指すらも
動いていないじゃあないか、
庇う素振りすらなしに、
馬鹿な、そんな馬鹿な!」
怒鳴る兄を尻目に、倒れている生徒会長に
肩を貸して起こす。
「明朝、お前は弱い人間のはずだ……
お前は何も耐えられない人間のはずだ……
体中の傷にも周りの人間どもにも、
馴れたと感じたことなんて
一日たりともないはずだ!
不安と不信でいっぱいのはずだぞ!
もうそれ以上我慢できる訳がない。
こんなところで生きていけるはずがない……
なのに何故僕にすがらない?
何故死なない!?」
そう叫んだきり、兄はただ黙ってしまった。
黙って、何をするでもなく私を見ている。
私の何かを待っているのだろう。
兄だけではない、学校の皆も私を凝視している。
兄が何もしてこなくなったので
みんなもすることがなくなったのだろう。
逃げることも立ち向かうことも
難しいその膠着状態の中で、
この場の全員が私が何か語るのを聞くために
耳を澄ませている。
尋問の時とは違う安らかな沈黙だ。
まるで時間が停止したかのようだ。
皆の身体や顔は炎の揺らめく
光の波を受けて濃い影ができている。
空気の流れもないせいか、
硫黄臭や焦げた匂いがしつこく付きまとう。
皆、不安のあまり今にも叫びだしそうな
表情のまま動かなくなっている様に見える。
火の海のどよめき以外に聞こえるのは
遠すぎるサイレンや放送だけだ。
キサメも何も言わない。
私が何も答えなければ
永遠にこのままのような気がする。
皆が私を無視して動き出したらその時は
私が一人取り残されることになる。
這いつくばって傍観していた先ほどまでのように、
そして今度こそは
本当に消えるまで弱くなる。
死とも呼べる長い時間に囚われることになる。
それはただの嫌な予感ではない。
確信すべき必然だ。
今こそ私は答えなくてはならない。
自分が何故ここにいるのか、
何故自分が生きているのかを。
「今まで私は……何も知らなかった。
生とは何か、死とは何か……
どう生きればいいのか分からなかった。
目の前で人が死んでも、
まるでその意味を理解できなかった。
自分が殺されるということがどういうことなのか
分かっていなかった……
今日まで私は生きることも死ぬこともしなかった。
私は何者でもなかった。
もう時間がない……考える時間も、
悩む時間も……もう黙っていることはできない。
私はここで決めなければならない……
私に何かをする力があるのなら……
死を前にして何かを為したい。
生きることを怖れたくない。
人を怖れたくない。
むしろ人の役に立つ人間になってみたい……
私の人生はまだ終わりじゃない。
死を望み続けることなんか嫌だ。
死んで終わりだなんてもっと嫌だ。
人を殺し続けて終わりだなんて一番嫌だ!
私は変わってみせる。
私はもう今までの私ではない。
私はもう誰とも同じではない。
兄さんとも同じではない。
この世界の全く新しい姿を見てみたい。
生きても死んでも馬鹿にされるような、
傷つくかしかないような、
こんないつもと同じ繰り返しはもう
うんざりなんだ!
こんな日常はもう嫌だ!
私は、僕は現実に生きたいんだ!!」
やはり僕は話下手だ。
だが言い終わってみると
世界中の何もかもが変わった気がした。
実際には何も起こっていないが
このまま世界の終わりが
来るのではないかと思えるほど、
見慣れた身の周りのあらゆるものが
全く未知のものに変わった。
人間も火も、自分の体も生まれて
初めて見るようなものに感じる。
どのような命も死も、光も、大地も
宙に舞う埃さえも、新鮮な出会いだ。
時が動き出す。僕が動かしたのだ。
今世界の中心は僕だ、
世界には僕一人しかいはしないのだ、
自分はかつて正しく、
今誰よりも正しい。
そんな感覚さえした。
「……明朝、僕らは何も違わないよ。
本質的には同じことを望んでるんだ。
日常は嫌だ、人生はクソだ、それは大いに
同意できることだよ。
それで、同じ考えなのに
何で僕の前に立ちはだかるんだ?」
「同じじゃないよ兄さん。
兄さんは死んで、僕は生きるんだ。」
「はあ!? 論理が破綻してるんだよお前!
今の話は全部おかしいぞ!
誰も恐れないってのは
人間を絶滅させて永遠に
顔を合わせないようにすることを
言うんだろうが!
いつもと同じが嫌だってことは
死んで楽になることを目指すということだろ!
生きててもいいことなんて何もないんだよ!
人の役に立つだと!?
現実に生きるだと!?
いつまでも間抜けてんじゃないぞ馬鹿が!」
兄の姿も兄の声も先程より
ずいぶん小さくなったように思える。
何というか、恐怖を全く感じない。
「油断はしないで。
彼、まだまだ奥の手を持ってるみたいだから。」
「あれ、キサメ、なんかさっきより
綺麗になってる?」
「えっ、はあ!? 綺麗!?
なな、何よいきなり!」
「いや、声が綺麗に聞こえるって意味で、
澄んで聞こえるというか。
鮮明になったと言うか……」
「あ、ああそういうことっ?
ゴホン、それはね、精神が安定したら
心の声が聞きやすくなるものなのよ。
ハルカタが素直な人間になったということよ、
良いことなんだから
今後とも精進するように。
いきなり綺麗なんて言葉使わないでよね……」
キサメ……情緒の安定しない女だ。
兄が何を言っているのか聞き逃してしまった。
まあいいか、どうせ全部似たような話だ。
死ねとか殺すとか、友人たちの罵声と
大差ない内容だ。
昔の幼い時の兄の方が断然含蓄深かった。
「……この世は有象無象の価値観が氾濫している。
生きていると
くだらん思想を嫌と言うほど吹き込まれる。
やはり無理矢理にでも死ぬべきだな!
何もかも死んで消え去るのが正解なんだ!
明朝、一番分かり易い答えを見せてやるよ。
よく見ろ!」
兄が叫ぶとその体のいたるところが
青い炎を噴き出しながらひび割れ、
体全体が大きく泡立つ様に膨れ上がっていく。
僕と1cmの差もなかった兄の背丈が
みるみるうちに見上げるほどにまで成長していく。
明らかに兄の力が増していく。
自分の王国の終わりが近いことを否定するように。
その成長の著しさこそは
兄の胸の内にある激しい感情そのものだ。
「この変身の意味が分かるかぁ!!?
重要なのは大きくなったということじゃあない!!
さっきまでとは肉体の密度が
桁違いだということだ!!
体積は7倍、重量77倍、
硬度666倍!!!
これでお前を完全粉砕する!!!」
兄の変身は黄色い岩の巨人になることで完了した。
胴や腕が不均等に分厚く、
頭が校舎の二階に届くかと思われる異形の巨体だ。
その肉体は兄自身の言う通り
密度の高い硫黄なのだろう。
重みに耐えきれず足元の地面がひび割れている。
兄は新しい体の具合を確かめるように
膨れ上がった腕を地面に叩き付ける。
大地が大きく揺れて裂け目が広がる。
発生した振動のせいか燃えて脆くなった
第二校舎の一角が崩れていく。
続けて兄が鬨の声を上げると、
僕は義肢も自前の肌もびりびり鳴って
髪の毛まで逆立つのを感じ取った。
「逃げましょう明朝君っ……」
生徒会長が僕の手を引いた。
僕はそれを断り、決着をつけるとだけ伝え、
兄の前に歩み出る。
「……では任せます。
私は脱出路を探してみんなを逃がします。」
彼女の怪我は酷い。
あまり無理はしないで欲しいものだが、
ここは頼らざるを得ない。
余裕はない。加減はできない。
僕は死を賭して戦わねばならない。
各キャラクターの能力について
分かりにくい点などありましたら
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能力以前に文章が分かりにくい!
という方はちょっと屋上まで(ry
文章力は鋭意改善中です。
ご期待ください!