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鉄の女子高校生と、たぬき王子

作者: 枢 呂紅

多摩地区。


それは東京23区と島を除く市町村部を示し、東京都民のうち実に3分の1が住まう立派な地であり、都民で多数決を取るなら間違いなく正義を勝ち取る計算にある。にも関わらず、『多摩地区』と名称を呼ぶ時、そこには一種の侮蔑や優越、もしくは自虐が含まれる。


 中でも、特に私、万願寺さくらが入学する都立寺川高校は、屈指の武蔵野深き自然を有する高校であり、ついた異名は『赤ずきんの森学園』である。でも、そんなことは勉学を本分とする学生の前に問題はない。必要なのは、帰りに遊ぶゲーセンでも、寄り道できるファッションビルでも、会話に華を咲かすカフェでもない。静かな環境と、居心地のよい学び舎。それで十分だ。





 寺川高校入学式当日、高校前を走る大学通り名物、桜並木が例年より遅い満開を迎えており、私は大分浮かれていた。舞い散る花びら、胸にリボン、まさにこの世の春!中学時代に「鉄の女」との異名を授かった私でさえ、ついつい足取りが軽くなる。だから、前を歩む男子の頭部に、茶色のふわふわしたとんがり耳を2つ、空見しても無理はないのだ。


 耳?私は思わず、不思議なとんがりを注視した。それは、見紛うことなく耳だった。ふわふわと、触ったらさぞ心地よいだろう。


 すると、その生徒が振り返った。


「僕に、何か用?」


 けも耳生徒は、それはそれは可愛い顔をしていた。ぱっちりとした瞳、色素の薄いさらさらの髪、白い肌は絹のよう。彼が女の子ならば、今この瞬間、ミス寺川が決定したといっても過言ではない。私は、思わずたじろいだ。


「なんでもない。……けど」

「けど?」


 けも耳が、首を傾げながら覗き込んでくる。近くで見ると、本当に綺麗な顔だ。だが、けも耳の存在感がすごい。なんなら、さっきからぴょんぴょん動いている。


 どぎまぎしながら、私は必至に考えていた。果たして、これは指摘するべきなのか。趣味か。趣味でけも耳なのか。私は生憎、けも耳に明るくない。もしかすると、いまやコスプレ界は進化を遂げ、完璧な手触りに電動式のリアルな動きを備えた、『ネオ けも耳』が登場しているのかもしれない。そうだとしたら、私はけも耳生徒の耳を、初対面ながら全力で褒めるべきではなかろうか。


 私が動揺しているその時、けも耳くんの後ろで不穏な影が大きく振りかぶった。


「あ・ほ・かーーーーーー!」


 けも耳生徒の頭が、すぱこーんと景気よい音をたてて叩かれた。(けも耳とはいえ)美少年に対してのあまりの仕打ちに、私はしばし言葉を失った。


「……あの、大丈夫??」

「つねきくん!おはよう!」


 けも耳くんは外見の儚さに反して、がばりと起き上がると嬉しそうに襲撃者に呼びかけた。私は、けも耳くんがこれ以上被害に遭わないように、目つきの悪い、やたら偉そうな態度の男を睨み付けた。


「おはようじゃねぇよ!お前ふっざけんな、悪目立ちしてんじゃねぇよ!」

「あ、れ、つねきくん、待って、僕いまいいとこ……」


 あれよ、あれよという間に、けも耳くんは目つきの悪い少年に引きずられていった。後に残されたのは、美しい桜吹雪と、茫然と置いていかれた私だけだ。





 だが、二人との再会は思ったより早くに訪れた。


なんと、私たちは全員同じクラスだった。けも耳くんは三ツ橋きぬた、目つき悪男は稲佐山つねきと言って、二人は中学も同じだったらしい。


 いつの間にか、三ツ橋くんの頭にけも耳は乗っておらず、私は安心した。どこにいくにもコスプレをする趣味ではないようだ。そもそも、学校にコスプレしてくる時点で、相当なものだが。とはいえ、いまや三ツ橋くんは、可愛い顔をしたただの“イケメン”であり、彼の趣味を偶然見てしまった私以外の女子を夢中にさせていた。


「ねーねー三ツ橋くんは、中学の時、部活何していたの?」

「天文部だよー。学校に泊まったりして、楽しかったなぁ」

「星好きなんだ!うっそーかわいいー!」


(本当に好きなのは、けも耳コスプレみたいだけどね)


 女の子たちが、三ツ橋くんを取り囲んできゃーきゃーやっている。軽く耳をふさぎながら、私は内心突っ込んだ。生憎、私の席は三ツ橋くんの前だ。おかげで、私まで女子軍団に包囲されている。というかうるさい。


「万願寺さんは?万願寺さんは、何をしていたの?」


 あろうことか、三ツ橋くんは私を巻き込みやがった。ていうか、こっちは背をむけているんだ。空気を読んでくれ。


「私は……」

「高校でも天文にするのー?うちも見学いってみたいー!」


 すぐさま、女共の声が被さる。三ツ橋くんのかわいい顔が、その中に埋もれていく。


 いいさ。私は微笑んで、後ろに向きかけた姿勢をもとに戻した。


 先に言っておくと、私は自称「専属図書委員」、つまり帰宅部だった。

本当ならば、歴史同好会に入りたかったのだが、今時の歴女とやらが蔓延って仕方がない。彼女たちは敬愛すべき偉人たちを、萌だのなんだの、あげくの果て史実とかけ離れた美化を始めるからいただけない。


 静かな午後の図書室に包まれ、歴史書をめくるのが至福の時間だった。それは、何物にも替え難く、気が付くと他の生徒と大して交流しないままに、中学を終えてしまった。


 だから、私は心に誓っていた。今度こそ、心行くまで歴史を愛し、共に語らう仲間を作る。歴史同好会に、その理想郷を創りあげるのだと!





 結論から言うと、理想郷は早くも打ち砕かれた。


「ねーねー、たまには外をお散歩しても気持ちいいんじゃないかな?」


 大罪人、三ツ橋くんが嬉しそうに「歴史散策マップ」を掲げてくる。全ては、こいつのせいだ。おかげで、歴史同好会の9割が脳内花畑だ。


「失礼だけど、記憶違いでなければ、天文部に入りたかったのでは……?」

「んー?でも、万願寺さんがすっごく熱く話していたし、面白いのかなーって」


 三ツ橋くんの純真無垢な笑顔に、私は頭を抱えた。私としたことが、三ツ橋くんに罪はないのだ。全ては、私の熱意が彼の好奇心を刺激しただけだというのに。


「散歩いこいこー!天気いいしさー、絶対気持ちいいって」

「じゃあさ、お菓子買っていこーよ」

「うち、部でラケット借りてくるし、ちょっと遊んじゃう??」


 すかさず、女の子たちが三ツ橋くんを連れだしにかかる。さっさといってくれ。肩身が狭そうに見守る先輩方に申し訳がたたない。


「じゃあ、万願寺さんも……」

「行きません!」


 ぴしゃりと言い放ち、三ツ橋くんを廊下に放りだす。後は勝手に女子たちが持って行ってくれるはずだ。私は溜息をついて、扉を閉めた。


「先輩すみません、一年生がうるさくて……」

「いいよ、いいよ。歴史同好会にこんなに人がくるなんて思わなくて、こっちも圧倒されちゃったっていうかさ。それに、万願寺さんは悪くないし」


 そういってくれたのは、3年生の今泉さん。あまりに優しい言葉に、今泉さんの背中から後光が差しているように見える。私は南無南無と拝んでおいた。


 歴史同好会では、基本的に過ごし方は月に一度の史跡訪問と、それに伴う事前調査を行っている。上級生は全部で5人だけで、こじんまり、真に歴史を愛する生徒だけで、和気藹々と行っていたそうだ。まさに、私の理想とする同好会の形だ。それが。


「というより、どうしてあなたもここにいるのですか?」


 (花畑軍団は別として)興味なさそうな筆頭、稲佐山くんに私は声をかけた。稲佐山くんは、先輩たちが毎年作っているという同好会誌から顔を上げた。


「なんとなくだよ。いちゃわりぃか」

「別に構いませんが、興味があるように見えなかったので」

「失礼なやつだなー」そういいながら、稲佐山くんは窓の外を指差した。


「この通りの奥、神社あるだろ。由来知ってるか?」


 唐突な謎かけに、うむむと唸る。「鉄の女」を試そうなど、面白い。


「北条氏の頃、飢饉に際して豊穣を願い、神を祭ったのが始まりだったかと」

「正解だ。付け加えるなら、この辺りはもともと山に囲まれた、平地だった。そこに綺麗な水の湧く沼があって、農耕を支えていたんだそうだ」


「詳しいのね」素直な驚きから、私はそう口にした。とても、目の前のがさつな男から出た言葉とは思えない。稲佐山くんは、ひらひらと手を振った。


「つまり、そういうこった。その地に根差す記憶や足跡、それらに敬意を払い、想いを馳せるってのは、俺もきぬたも嫌いじゃねーんだ」


 嬉しそうに、歴史マップを掲げていた三ツ橋くんを思い出す。彼は本当に、周囲の歴史スポットを巡りたかっただけかもしれない。なんだか、無償に私は嬉しくなった。


「コスプレ好きの変人かと思っていたけど、見直したわ」


 ぶっと、稲佐山くんが噴き出した。


「は?コス……?は?」


 見るからに、稲佐山くんが動揺しだす。それに首をかしげつつ、そういえば二人が同じ中学だったことを思い出し、尋ねてみた。


「三ツ橋くんって、動物好きなの?入学式で、動物の耳つけていたみたいだけど」

「はっ!そ、そーだな!昔から不思議ちゃんだからなぁ、はっはっは!」


 稲佐山くんは大げさに笑うと、なぜかこそこそと逃げて行った。変な奴。





 中学の頃、「鉄の女」などと呼ばれていたことは、先に記した通りだ。私自身、何故、「鉄の女」なのか皆目見当はつかない。もちろん、不名誉ではない。サッチャーは敬愛すべき政治家で、尊敬する女性だ。


 中学にもなると、女というものは外見以上に大人びる。それは、異性に対する態度でも明かだ。同級生の脳内に花畑が広がっていくのを目の当たりにしながら、私は危機感に襲われた。このままでは、人間がだめになる。思春期とは、自らの未来を形作るための重要な布石だ。そのためには、勉学、とりわけ、偉大なる先人の歩みを知ることが欠かせない。色恋に投資する時間は、一分一秒もないのだ。


 もともと歴史好きだった私は、いよいよ図書室の住人と化した。真剣に図書室に住む方法を考えたことすらある。とにかく本を読み漁り、それ以外の時間は勉学にあて、己を磨いた。私に着いてくる同志はいなかった。


 だから、少女マンガでの一コマのように、校舎裏で4人の女生徒に囲まれているという構図は、いっそ感慨深かった。


「あのさー万願寺さん、三ツ橋くんにちょっかい出さないでくれる?」

「正直、似合ってないっていうかさー」


 頭の悪そうな子たちだ。量産型みたいな髪型、芸能人の真似ごとメイク、短いスカートに大きめのカーディガン。頭の中に、花畑しか詰め込んでこなかったタイプだ。彼女たちと話す暇があれば、迷わず私は書物を読みたい。時間の無駄だ。


「言いたいことがそれだけなら、これで失礼します」

「ちょっと……!」


 踵を返した私の腕を、一人の子が思い切り掴む。意外と強い力に、腕に痛みが走った。痛みを庇ったのがいけなかったのか、私の体はバランスを崩した。きゃっと、女の子たちが悲鳴をあげる。ふざけないでほしい。転ぶのは私だ。とっさに、私は目を閉じた。


 ふわりと、誰かが私の体を抱きとめた。驚いて目を開くと、すぐ近くに三ツ橋くんの顔があった。綺麗な瞳が、間近で私を射抜く。


「大丈夫、万願寺さん?」

「え、あ、はい」


 思わず、動機が早くなる。これはまずい。なんといっても私は、「鉄の女」だ。こんなことで動揺しては、異名が廃る。だけど、逃れようとしても三ツ橋くんは離してくれなかった。それどころか、三ツ橋くんは腕に力を込め、私を抱きしめた。


「あ、あの、三ツ橋くん……?」

「君たち、いつも邪魔だと思っていたの、気づいてなかったの?僕は万願寺さんと話したいのに。もう限界なんだ。放っておいてよ」


 呆気にとられていた女の子たちに向かって、三ツ橋くんは冷たく言った。いつもニコニコ笑みを浮かべている彼とは大違いだ。彼女たちの顔が、さっと羞恥に染まった。


「なによ!万願寺さんのあだ名知っている?鉄の女。みんなのこと見下して、いつも一人で、決して誰も寄せ付けない。冷たい人なんだよ!」


 そういう意味だったのか!今更ながら由来を聞かされ、私はショックを受けた。だって、歴史の本を一緒に読みましょうなんて誘っても、誰ものってくれなかったじゃん!私だって、一緒に読んでくれるなら、読んで欲しかったし!


 私が遅れて破裂した時限爆弾に打ちのめされていると、三ツ橋くんの腕に力が入った。


「万願寺さんは冷たい人じゃないよ!すっごく暖かくて、優しい人だよ」

「何を言って……」

「それを知っているのが僕だけってのも、ちょっと誇らしくていいかもね」


 気づいてしまった。彼の頬は、赤く染まっていた。ああ、もう、反則だ。いくら鉄の女でも、この表情には構わない。きっと、私の顔も真っ赤に染まっていることだろう。


「い、いこう!」

「サイテー、ありえない!二重人格!」


 女の子たちは、それだけ言い捨てると、逃げるようにいなくなった。途端に、三ツ橋くんはへなりとその場に座り込んだ。


「あぁ、緊張した。せっかく高校デビューしたのに、もうちやほやしてももらえないなー」

「あんなこといって、やっぱりまんざらじゃなかったんじゃない」


 頬の火照りが引かない私は、せめて睨み付ける。けれど三ツ橋くんは笑っていた。


「あはは。そりゃ、気分いいもん。でも、やっと万願寺さんと話せたし、その方がいいや」


 また、そういうことを言う。私はたまらず、俯いた。「鉄の女」という異名は、本日限り返上した方がいいかもしれない。少しだけ、皆が何故、恋に現を抜かすかわかった気がした。





「覚えてないだろうけど、昔、万願寺さんに助けてもらったんだ」


 一緒に歩く帰り道、三ツ橋くんが放った一言に、私は驚いた。


「私が?三ツ橋くんを?」

「そ。僕さ、情けないんだけど、迷子になっちゃって」


 幼かった三ツ橋くんは、家族を呼ぶ術も思いつかず、一人で泣いていたという。そこに通りかかったのが、私だというのだ。


「それでさ、万願寺さん、一緒に家族を探してくれたんだ。一生懸命、僕のために」

「そう……だったんだ」


 残念ながら、全く記憶がない。申し訳なく思っていると、三ツ橋くんが首を振った。


「いいんだ。こうして会えたから。入学式で、万願寺さんを見つけた時、すっごく嬉しかった。あれからどうしてたのかとか、今何しているのとか、ずっと話したかったんだ」


 夕日が傾いて、三ツ橋くんの細い髪を柔らかく照らす。真剣に見つめる瞳に、私の体は囚われてしまったかのように動かなかった。


「わ、私と話しても、楽しくないわよ。鉄の女だし、面白みないし、歴史と勉強しか、興味ないし……」


「確かに、せっかく席も近くになって、同好会も一緒で、なのに全然僕に興味もってくれないんだもん。僕、なんどもアプローチしたんだよ?気づいてた?」

「悪かったわね」口を尖らす私を、三ツ橋くんが覗き込む。


「けど、これからは、僕にもっと興味もってもらえるよう、頑張るからね」


 本当に反則だ。これでもう、私は三ツ橋くんを興味対象から排除できない。天使のような顔をして、三ツ橋くんが満足げに笑う。それが憎らしく、同時にこそばゆかった。


「万願寺さん……」


 甘い声でささやきながら、三ツ橋くんが私の髪に触れる。オレンジに染まる彼の顔は、真剣だった。心臓が痛いとは、このことだ。ゆっくりと、彼の顔が近づく。


 金縛りのように、私は動けずにいた。私は鉄の女。歴史を愛し、勉学に捧げる女だ。そのためには、一分一秒も無駄にはできないのだ。なのに、もうそんなことはどうでもよかった。頭が空となり、立っているのがやっとだ。


「……っ!」ぎゅっと、私は目を閉じた。



 プォープォープォー!!!と、高い警笛が鳴り響いた。



「あっぶねえだろ!前みてんのかごらぁ!」


交差点で、トラックの運転手が怒鳴っているのが聞こえる。結構離れた場所だったが、度肝を抜くには十分だった。


「おっどろいたー。何かしらあれ」


 私は胸をなでおろしながら、三ツ橋くんに呼びかけた。そして、気づいた。三ツ橋くんがいない。いな……い?



「は……?」



 茶色のふわふわの耳。触れたら柔らかそうな、色素の薄い毛質。


 三ツ橋くんの特徴そのままのたぬきが、ついさっきまで三ツ橋くんがいた場所で、頭を抱えてふるふると震えていた。


「三ツ橋くん……?」

「あ・ほ・がーーーーーー!」


 どこから飛び出してきたのだろう、稲佐山くんが猛ダッシュで三ツ橋くんたぬきを抱え込んだ。その震える背中が、おそるおそる振り返る。


「ま、万願寺、お前なんかみたか……?」


 見たわ!めちゃくちゃ見ましたわ!私ももはや、なんと答えればよいかわからない。ついでに、稲佐山くんにも教えてあげた方がいいのかもしれない。


「い、稲佐山くん、それ……」


私の振るえる指先が何を指すか気づき、稲佐山くんがさらに青ざめた。稲佐山くんの腕から、三ツ橋くんたぬきがぴょこんと顔を出す。


「つねきー、しっぽと耳でちゃってるぞー」

「あなたそれどころじゃないでしょ!」

「おめぇが言うな!このクソたぬき!」


 稲佐山くんからは、金色に近い黄色の耳と、ふわりとした尻尾が突き出している。


これは夢だろうか。たしかに、今日はずっと変だ。少女マンガの如く女子には絡まれるし、お伽噺みたいに臭い台詞を吐く同級生はいるし、それに対して私もペースを乱されているし、いっそ夢と言われた方が納得だ。


だが、三ツ橋くんたぬきは、稲佐山くんい抱きかかえられたまま、にっこり笑った。


「というわけで、僕は化けたぬき。稲佐山くんは化けきつね。これで、僕にもっと興味もってくれるよね、万願寺さん!」


 ついに、私はめまいがした。どうか夢といってくれ!!





「鉄の女」、万願寺さくらの高校生活は、まだ始まったばかり。

歴史と勉学が全ての私の学園生活は、こうしてこじ開けられた。

王子様のように甘い笑みを持つ、一人のたぬきによって。


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