第8話~守る笑顔~
感想にて指摘された点を直して書きました。
「そういう訳だ。この本を元に、植物を育てろ」
帰ってきてすぐに、イージスドームを教えてくれた老人のところへ行った。
「この本はあの若造が持っていた……。しかし、これに書かれていることは全て迷信なのでは……」
やっぱり迷信と思われていたか。ここで迷信ではないと教えるのは難しいと判断した文美は言い始める
「試したのか?迷信かどうか確かめたのか?」
「それは……」
「試そうともせずに諦める輩がどこにおる! もし迷信を諦めずに試すやつは馬鹿かもしれないぞ! しかし、試そうもせずに諦める馬鹿はもっと馬鹿だ! 予はそのような馬鹿、好まぬぞ」
同じ馬鹿でも違う馬鹿。それは、何事にも言える。僕も、さっきそう学んだ。
「想像してみろ。地面いっぱいの食物。口いっぱいの食べ物。そして腹いっぱいの満足感。それを求めずにどうする?」
「しかし……」
「ええい! はっきりせんか! ほしいものがあるのなら、手を伸ばすがいい! その伸ばした手は届かずとも、主らの成果となる。もっと求めよ。そして、結果を掴むのだ」
すると、それを一緒に聞いていた他の人たちが老人に話しかける。
「俺は……。食べたいです。腹いっぱい」
「俺もです。味わったことのない満腹。感じてみたいです」
「お前ら……」
「それみい。主が判断せずとも、周りはすでにやる気で溢れておる。働け。そして、苦労の先にある幸せを得よ」
困った顔をしていた老人も、周りの人に言われ、段々と柔らかい顔になってきた。
「やりましょうよ。駄目でもともとです」
「そうですよ。俺たちにはもう失う物がないんですから!」
「……そうだな……。やってみるか……」
そう言う頃には、もう老人の顔は笑顔でいっぱいだった。
「うむうむ。そうだ。欲しがれ。そして、得よ」
凄いな。文美は、いろいろな人を見てきたせいか。人を導く力がある。
「姉さんや……。あんたのおかげだ……。みなに希望を与えてくれた。もしよかったら、このまま導いてくれんか?」
「やはり予には才能があるな! しかし、予たちにはやるべきことがある。できることならそうしてやりたいが……」
「そうですか……」
「しかし。予はお主たちのことを見守っておる。安心せい」
「ああ。分かったよ。姉さん」
皆はやる気でいっぱいだ。一番最初に来たときの鬱しみた空気でない。そして文美は、人の中で一番若い青年に話しかける
「それと。願いがもうひとつある」
「なんだい? できることなら、なんでもするさ」
「簡単だ。もう成功したら、他の人にもその技術を教えてやって欲しい」
「そんなことかい? わかった。今なら感染者にも勝てる気がする。俺たちに勇気を与えてくれて本当にありがとう」
「いや、与えたのは予ではない。主らが自分たちで見つけた希望だ。予はただ本を返しただけだ」
するとまた老人が手に何か持って帰ってくる。
「姉さんや。これは本の気持ちだ。私たちには使えん。あなた方が持っていてくれ」
そう言って渡してきたのは、何かの鍵だった。
「ん? これは何の鍵だい?」
「それは、大昔まだ文明があった頃の……。ほばーくらふと式バイクというものらしい。乗り物らしいが、お前たちなら使える気がする」
「バイクか……。文美。乗れる?」
「いや。乗り物は基本的に使わん。康雄は乗れるか?」
まあ文美が免許取ったら交通事故のオンパレードが始めるだろうし。
「一応ね。しばらく乗ってないけど。」
「そうか。よかった。感染者に壊されないよう、廃墟の中に隠してある。北の方には感染者が多い。気をつけるのだぞ」
「確かこの辺にあるんだったっけ」
廃墟の中を探す。尖っている部分もあって危ない。
「ふむ。遠くからBRが来るぞ。急げ」
「お?これかな?ちょっと形が違うけど、構造は同じみたいだね。ホバークラフト式ってのは」
普通のバイクの車輪をはずして、ホバークラフトの下についてるエアクッションをつけた感じだ。
「キーも入ったし。エンジンは……ついた。発信準備完了!」
いやはや。父ちゃんがリストラされた時売ったから、バイクに乗るのは久しぶりだ。
「よし! 予は後ろだな。こう乗るのか?」
文美は現代のバイクで言う車輪の部分に座る。このバイクなら確かに落ちないだろうけど。現代でやらせたら危なくてしょうがない。
「えっと。僕がここに乗るので、文美はその後ろに座ってください」
「こうか?」
……。胸! 胸が当たってます! 最高です! でも集中できません!
「ニンゲンッ! マテッ!」
最高の気分を味わっているとBRが向かってくる。あのやろういいところだったのに!!
「文美! 飛ばすよ! しっかり掴まってな!」
「行け!」
おもいっきりアクセルを踏む。すると、流石ホバークラフト。凸凹道でも揺れなしで移動できた。しかも速い!
~~~青年移動中……~~
━━━━━━━━━━━━━研究所前━━━━━━━━━━━━━━━━
「振り切ったね」
「いや。おそらく違うな」
え? 違うって?
「あの感じ。わかるぞ。やつらはここにいる 何か に任せたのだ。やつらより強い 何か に」
「何かって?」
「わからん。しかし、やつらもある程度の知能はある。きっと強いのだろう」
強い……か。コニー追いつけるかな?
「しかしまあ。危険なことは確かだ。康雄。主は安全を優先せい」
「言われなくてもわかってるぜ!」
「キシャァーー! ニンゲンッ! コロスッ!」
「ぬおぁ!? 文美!こっちも助けて!」
「ええい! うっとしいわぁ!」
次々と倒していく文美。確かに、さっきのBRよりは少し強い。腕が変形し、攻撃範囲がだいぶ上がっている。
「ふん。まったく。こいつらはどれだけいるのだ」
「それにしても変だね……」
「変? こいつらは姿からして変だが……」
「そうじゃないよ。そのウイルスってやつのこと。」
ウイルスで変異するとしても、ある程度の知識は残る。それでも変異は続く。このウイルス……。ただ人間を殺すウイルスでなく、何か目的があるのか……?
「このウイルスは。あの化け物によるものなのかの?」
「そうとも考えられるけど。まだわからない。そもそも、まだあいつの目的がわかってない。ただ地球を滅ぼすのか……」
しかし。あの化け物が拡散させたとしたら、やつには不都合だ。ただ殺すだけのはずなのに、なぜ完全に殺さず変異体で留めるのか……。なぜ知識の力を残すのか。残っていたらやつには不都合のはず。なぜだろうか?
「だが、ここが敵地なのはかわらん。康雄、注意せい」
「うん。だけどな~。空間移動装置があれば、ここまで一発だったのにな~。コニーが調整したいって言うから置いてきたけど」
「む? 康雄。それは無理だぞ?」
え?どうして?
「空間移動装置は、コニーの実験室にあった物だけが空間を移動できる。あの持ってきたやつは、ただ周りの物を微粒子化するだけのものだ。そうコニーが言っていた」
そうだったのか。じゃあ、あれは本格的に時空移動装置ってわけだ。その場で微粒子化して、時間の数字があっていればそれが時間を飛ぶ。ってね。
「む? 康雄。何か聞こえんか?」
「何って……。なんだ?」
確かに耳を済ませると、どこからか音が聞こえる。「ザザッ……ザザッ…」という音だ。すると、今度は大きな音で声が聞こえる。スピーカーからだ
『そこに人がいるのか……?よかったらこっちに来て話をしないか?』
「これは……」
「研究所の放送だね。てことは、この声の主は……。放送室にいる。ためしに行って見よう」
「む? 康雄! 敵だったらどうする!?」
「大丈夫だよ。文美が。守ってくれるんでしょ?」
「…………。そうであったな。だが……。先に行くと危険だぞ?」
「だいじょ…ってウォァァァ!?」
目の前にBR。お得意の反射神経で後ろに飛ぶ!
「だから言ったろうに!」