第六話~未来と凡人~
今回はちょっと長いです
「廃墟。廃墟。廃墟。どこまで行ってもごみの山だな。」
しばらく歩いてみたが、人らしきものも見えず、永遠と砂漠の上の廃墟を眺めるだけであった。
「はぁ。しかし、ここは本当にどこだ?瓦礫しかない。外国でもこんなところは…」
「文美も見たことないのか…。ん?あれは…」
遠くに何か布が落ちているのを見つける。急いで駆け寄ってみると…
「これは…!?」
「日本の…国旗だな」
日本国民なら誰でも知っている。国旗。それがボロボロになりながらもあった。
「え…。てことは、ここは日本?そんな…。」
「いや。まだわからんぞ。あくまで可能性だ。国旗が落ちているからといって日本だとは確実ではない。」
…信じたくは…ないな。
「とりあえず。今は医者だ。なんとしてでも人間を…」
そのとき。瓦礫の山から音がする。
「むむ?そこに誰かおるのか?」
「あ、怪しい者じゃありませんよ…」
そう恐る恐る(なのは僕だけだが)言うと
「ニンゲン…。ニンゲン…。コロすっ…!!」
「ぬぇぇ!?」
それは、とても人間とは思えないが、人間の形をしている生き物(?)だった。皮膚は所々はがれていて、声もかすれていた。僕がどこかに逃げようとする前に文美が前へ動く
「邪魔を……するなぁ!!」
すばやく弓矢を引いた文美は、人間でないと判断したのか、脳の真ん中に矢をぶち込む
「ニンげん…ごトきに……」
そのまま倒れる生き物。なんだったんだ?
「魔族…の感じではないな。そもそも魔力の装甲がなかった。なんだ…こいつは。」
「ここを廃墟にしたやつら…にしては知能もなさそうだし…。でも、こういうのがいるってことはコニーが心配だ。一旦帰ろう。」
「ああ…」
「ただいま~って。コニー。何してんだ?てか動いて大丈夫かよ」
帰ると、あきらかに動いた跡。つまり、流れる血が落ちた跡が色々な場所にある。動き回った証拠だ。
「ちょいと調べものをな。ここにも一応コンピューターがあった。」
「あまり動く出ないぞ。して、何かわかったか?」
座るいすもないので、床にベタッと座り話を聞く。
「いんや。全然。そもそも、ここのコンピューター。見たこともない形状の上にセキュリティーだ。なんとか解除したが、オフラインで何もわからない。ただ、ここは何かを研究してたってだけわかった。設計図が記録してあった。今の技術では到底開発できないセキュリティーだが。」
コニー…。それだけでも十分すげっす
「康雄。ちょいとこいつを見てくれ。こいつをどう思う。」
「凄く…大きいですw」
「ふざけるな。文美にボコってもらうぞ。じゃなくて、ここのメーカーを見てといっているんだ。」
流石にこのボケはやばかったか。文美が戦闘モードに入りかかっている。じゃなくて、メーカー?この機械の?えーと…
「CC・ジ・エブリー。ん?CCってクルーズコニーだよな?お前の名前入ってるじゃん。こんな会社いつ作ったんだ?」
「作ってない。俺の知らないもんだ。」
「コニー。ということは。」
文美が何かに気づいたように言う。わかってはいたが、
「そうだ。コンピューターに日付が載っていた。ここは、南暦2600年。今の世界では魔暦2600年だが。どの道、時計が狂ってないなら、俺たちのいた時代の540年後だ。」
「540年後ォォォ!??」
これには驚きだ。そこまで未来とは思ってもいなかったし。てか540年もお前の会社残ったんかい!!
「つまり。540年後に、日本はこうなる…と」
「ああ。微粒子移動も多少は元の位置とずれるが、せいぜいずれは半径100メートル以内。確実に日本だ。」
そんな…。なんで日本が…
「コニーえもん!なんとかならないの!!」
「誰がコニーえもんだ。ポケットからはピンクの扉ひとつでてこんわい!!じゃなくて、原因がわかれば…何とかなるかもしれん。」
それにしても…なんで。原因か…魔族…はここまでするか?
「それにしても…。やっぱり時間移動なんてするもんじゃねえな。こんなんじゃ、移動するたびに問題があってもおかしくねえ」
「む?それはどうしてだ?」
珍しく文美がMr.サイエンスに質問をする
「そもそも。時間移動は人類が触れてはいけない…というか。空想の産物だった。理屈がないものに、理屈を跡付けしてるんだから、問題があっても無理もない。バッサリ言うと、問題があってこその普通といってもいいほどだ。」
うん。さっぱりわからん。つまり、しょうがないのか。
「まあ。時間を正確にわからなきゃ時間移動もクソもねえ。移動するぞ。」
「移動ってどこに?」
「ここから一キロ言った先に、ショッピングモールがあったらしい。そこが仮に廃墟でも、何かしら残っているだろう。」
あの短時間でそんな情報を。こいつの脳はいったい何次元にあるんだか。
「コニー。大丈夫か?」
「ああ。段々と出血も止まってきた。おじさんのおかげだ。」
「父ちゃん…。助けるためにも、頑張るぞ…」
コニーを担ぎながら歩く僕たち。途中で2対のあの変な生き物に会ったけど、文美が瞬殺してくれた
「ここが…。なんとか形はギリギリ残ってるね。」
「だが、今にも崩れそうだな。コニーよ。本当にここがショッピングモールだったのか?」
「地図上ではな。とりあえず、慎重に探索しよう」
中に入ると、更に廃墟感が増した。さっきまでいた研究施設は、生活感がないだけにあまり感じなかったが、ここは人が来ていた場所。なんだか寂しくなってくる。とそのとき、
がらっ と音がする。すぐに反応し、文美はその方向に弓矢を向ける
「またか!うっとしい化け物め!」
すると、それはゆっくり出てくる。が、両手を上に挙げていた
「ま、待ってくれ。俺たちは感染者じゃない!」
「一般人…かな?びっくりした…」
人間のおっさん。ふぅ。人間いてよかった…
「やっとまともな人間か。安心したぞ。して、そこの者よ。医者はこのあたりにいないのか?こやつの傷が開いての…」
医者。という言葉に反応し、首を少し傾けるおっさん
「医者?そんなものはもういないよ。ヒーリングボックスがあるんだから。」
ヒーリングボックス?
「??何を言っているんだい?ヒーリングボックスは、怪我や病気を治してくれるカプセルじゃないか。あれがなかったら人間生きてないだろ?食料もないんだから。君たち、いったいどうやって生きてきたんだい?」
食料がない?マジで?
「主。食料がないとは、本当か?」
「さっきから何を言っているんだい?頭でも打ったかい?俺たちが最後に物を食ったのは数十年くらい前だよ。何かないかとここまで来て見たけど」
そんなに前。てことは、そのヒーリングボックスってのは、空腹も満たしてくれるのか?でも…
「おっちゃん。こういうのもなんだけど、畑で食料は作らないの?」
いくら砂漠でも、暑くはない。少し整地をすれば、畑くらいは作れるはず…
「作る?何を言っているんだい?何を作れっていうのさ?というかそのハタケって何だい?新しい機械かい?」
「(康雄。どうやらこの時代は第一次産業もおろか、産業自体がないらしい)」
産業がない?確かに、店も工場もない。そんな時代がくるのか…
「でもなんでそんなことに?滅ぼされただけならそんなことには…」
「確かにそうだ。だが今は仮定の段階だが。何らかの原因でここら一帯が廃墟になり、じょじょに産業という概念をもつ人間がいなくなったんだろう。仮にまだ受け継がれていても、俺たちの伝説と同じように。迷信にしか聞こえないだろう。」
そういうものなのか…。
「何を言ってるかわからないけど。とりあえず俺たちのところへ来ればいい。ボックスも使っていい。」
「どうすりゃいいんだ…」
「おいおい…。もう…これ…」
空気がやばい。ここにいるだけで鬱になりそう。
「彼らは、仲間の所から帰ってきたとこだな。おそらく、そこのやつらが感染してたんだろう。」
「うむ。さきから言っている感染者とは。何だ?」
あ。それ僕も聞きたい
「…君たちは何者だい?まあいい。君たちも見たろう?あの人間とは思えない姿のやつらを」
「あれか。」
「あれは元々人間さ。このへんには、通称 BRウイルスというものが散らばっている。それに感染すると、ああなってしまう。」
「そのウイルスはどうして発生したんだ?」
「わからない。俺たちが物心つくころにはもういた。なんでも、もっと北の方には、ウイルスの耐性がつく薬を作ってるらしいけど。そこが安全だという保障はない。ほとんどの人間は感染して、そこら中にいる。ウイルスに強いやつらが子孫を残して、強いやつだけが生き残る世界だ。だが、ウイルスも進化し続けてる。終わりも近い。」
…。そのBRウイルスってのは、少なくとも現代にはなかった。540年の間に何が…
「(康雄。その北にある薬を作ってる施設。そこなら何か手がかりがあるかも知れんぞ!)」
「(え?でも、感染したらやばいよ?)」
「(おい康雄。男がそんなでどうする。どの道ここにいても感染はするんだぞ。ヒントを探そう。)」
う…。確かにそうか。しょうがない。
「とりあえず。ヒーリングボックスを使おう。」
「ん?ああ。三台あるから、ついでに君たちも入るといいよ。疲れてるだろ?」
そうだね。どうせなら入るか。
「じゃ、お言葉に甘えて」
「あれ?もう終わり?早いね」
何分経ったかは時計ないからわからないけど。とりあえず疲労は消えた。けど…
「「(これって空腹は治らないんだ)」」
てことは、この人たち空腹に耐えてるんだな。凄いや…。ってあれ?コニーはボックスに入ってなかったみたい。
「コニー。お前が一番入らなきゃいけないだろ?なんで…」
「俺はこの機械が邪魔で入れなかったんだ。医者はいないっていうし。どうするか…。お?」
悩んでいると、コニーが何か見つけたようだ。その目線の先には…ボックス?
「あれかい?あれは長い間使いっぱなしで壊れたボックスだよ。もう使い物にならないね。これでこの三台が壊れれば、俺たちも終わりだ」
…この人たちさっきからネガティブだな…
「壊れてるか…。だったら、分解してもいいよな?」
「え?別にかまわないけど。どうするんだい?」
なんかコニーの目光ってるし
「実はな。空間移動よりも機械鎧よりも考えていたものがあったんだ。コンパクトサイズの発電機。といった感じかな?」
発電機?
「言ってしまうと、これは俺が一番最初に考えた発明品だ。理論上では完全なものだった。今でも最初に書いた設計図は覚えている。だが、あの時代では無理があった。」
「技術的に…とか?」
てか一番最初って、幼稚園入ったばっかりの頃かよ
「いや。材料だ。今一番発電できるのは原子力。だが、そんな危ないもの手のひらサイズにできない。だが考えた。最強のコイルを。」
「コイル?それって、あの磁力を使ってやるやつ?」
「そうだ。あの原理を利用して、最強の磁力と無数に巻いた銅線をやればいいか。と。だが、幼稚園の頃だ。考えは甘い」
そこで甘くなかったら化け物だよ
「だが大人になった。するとどうだ。できそうな材料があるじゃないか。ミスラジウと、ジリュリョウム鉱石。」
「ミスラジウムは聞いたことあるよ。確か、320度以上で熱していないと固体になり、絶対永遠にそのまま形を変えないっていうやつだよね。」
「予はジリュリョウム鉱石を聞いたことがある。海底深く沈んでいる鉱石で、野球ボールの大きさでも3トンするというやつだったな。なんでも、半径5キロの鉄などをひきつけるほどの磁力だとか。」
「二人ともよく覚えていたな。が、現代ではどちらも入手しにくいものだった。が、さっき調べると、そのボックスの材料に入ってた。」
「なんと…」
「今の技術は凄い。磁力を抑える装置があったり。400度で内部を熱し続ける装置までもがあった。あれほどボックスがあるんだ。十分なほどだ。」
う、嘘だろ…?
「して。その発電機を作ってどうするのだ?」
「文美。お前もうちょっと考えろよ。このペースメーカーを改造するんだよ。俺が自由に動けるように!」
「ということで俺はしばらくここにいる。だからお前たちは北にある施設へ行ってくれ。俺もあとから追いつく。」
「ああ。任せろ」
「え?あ。うん…」
なんかやだな…。そう思っていると、おっさんが話しかけてくる
「君たち、まさか北へ行くのかい?」
「ぬ?ああそうだ。われらには使命があるのだから」
本当に堂々というな…
「やめた方がいい。あっちは感染者の住処だ。行かないほうがいい…」
「なんだ。みっともない。それでも男か?」
「もう…終わりなんだ…俺たちも……皆も…」
「黙れ黙れ!!そんなんでは前へ進めんぞ!!だいたいだな!」
その時僕は、文美の言葉を止めた
「文美。これ以上言わないでほしいんだ…」
「む?なぜだ。予はただこいつらに根性というものを…」
「あまり言いたくないけど。彼らはただの凡人だ。 僕も、そうだからわかる。何の力もない。ただの人間なんだ。文美やコニーは、人の言う天才。いや、大天才だ。」
「康雄…」
「ここにいる人たちも、僕も。何の武器もなければ、誇れる点もない。ただの……人間なんだ。僕だって、二人みたいな頼りになる人がいなければ。ここで同じように震えているだけだもん。」
「康雄!それは違うぞ!康雄とこの者たちとでは全然違うぞ!!現に康雄は、304年前も助けに来てくれた!」
「それは玄さんがいたから…」
「だったら!同じことが起これば、もう康雄は一人で何もしないのか?」
「それは…。多分…何かするとは思うけど……」
「康雄。このさいだからはっきり言うぞ!康雄には、予のような特技もなければ!コニーのような超天才脳もない!」
はっきり言われるとショックだな
「だが!主には勇気がある!危険でも、自分の心を信じて立ち向かう勇気!これは誰にでもあるものではない!」
「それでも…」
「そこまでだ二人とも」
言い合っていると、コニーが言って止める
「康雄の言うことも間違ってはいない。こいつらだって、好きで勇気と力を捨てたわけじゃない。この恐怖の中で退化してしまったものだ。文美。お前だって、現代で辛い思いをする人間を見ただろ?しょうがないことでもあるんだ。」
「…」
「だが康雄。お前もそのすぐに自分を下に考えるな。悪い癖だ。お前だって何かしらの長所がある。大丈夫だ。」
そう…なのか…な。
「とりあえずだ。いつ次の問題が起こってもおかしくない。急いで情報を手に入れるんだ。」
「うん。わかったよコニー。ありがとう。」
「(ムスー)わかった。行こう。」
僕たちは出口に向かって歩き出す、
「お前が俺に礼を言うのは……まだ先だがな…」
ん?
「コニー。なんか言ったか?小さくて聞こえなかったぞ?」
「ん?いや、独り言だ。気をつけろよ!」
なんなんだか?