第三話~時空移動~
「おい康雄!この辺なんだよな!?その文美ってやつがいるのは!」
かなり前を走る玄さん。やばい。追いつけない…
「は…はぃ…ぅ…」
もう駄目かも…ここで……疲れ死ぬ……
「ん?あれは…?」
「へぶしっ!!」
玄さんが急に止まるからぶつかった…。鼻痛いっす…
「おい。もしかしてあいつか?」
指をさす玄さん。その方向を見ると、確かに文美がいた。しかし、様子がおかしい。
「前方に敵が5体。文美ってやつ、傷ついた兵士をかばっていやがる…。あれじゃあ攻撃もできねーぞ。」
確かに、後ろに苦しんでいる兵士が二人。酷い出血だ。
「よし!康雄!お前はあの二人の兵士を影に運べ!あの魔族を俺は倒す!」
といい、ダッシュで駆ける玄さん。えーいきなり言われても…
「そこまでだな魔族の下っ端様よ。俺は今目当ての宝がなくただの旅費を無駄をしたことに腹が立ってんだ。ちょっと遊び相手になれよ…」
おうっしゅっ。あの人怖いよ!玄さんそんなこと思いながら一緒にいたの!?怖いよ!
「って。こんなとこに立ってる暇じゃなかった。兵士さんを…」
急いで文美の後ろへ行き、影にひっぱ…って重い!!文美も唖然としてないで手伝ってほしいもんだ!!
「なんだこいつ?」
「かまわねえ!二人まとめてやっちまえ!!」
凄いどこかで聞いたことある有名なフラグを立てて魔族が玄さんに走っていく。
「弾だって無料じゃねえんだ!5発で終わらせる!」
すると玄さんは、回転式拳銃の分解できるものを取り出す。そのまま飛び掛ってきた一体を蹴り飛ばし、もう一体に当てる。
「うごぉっ」
その隙に弾倉をはずし、ポケットから取り出した別の弾倉を取り付け組み立てる。その作業をしながら別の一体の攻撃をしゃがんでかわし、拳銃の部品で下から顎をたたく。
「んぐっ」
組み立て終わると、玄さんは本気を出したのか、ものすごい速さで魔族5体の後ろを取る。
「何!?」
「速い!」
そのまま拳銃を5発撃った。どうやら5体全員に当たったようだ。腹を押さえて苦しむ。そのまま僕たちの方へ歩いてくる玄さん。しかし、腹にくらっただけでは倒れない。魔族はまだ攻撃しようとしてきた。が、
「今お前らに撃ち込んだのは特殊な弾でな。」
玄さんが言い出すと魔族は動きを止める。玄さんはまだ言い続ける。
「ある程度の振動をうけると、爆発する弾だ。」
そう聞くと5体はビックッとする。
「つまりだ。俺はその効果が見たくてお前らに撃った。攻撃したいならしろよ。俺を殺すのとお前らの腹が散るの。…どっちが速いか――確かめようぜ…」
玄さんは帽子をクイッとあげて笑う。5体はそのまま全然動かない。そのまま僕たちのもとへ来た玄さん。そして、僕に何かを渡してきた。
「(これをあいつらが見てない方向に投げてみろ。面白いことが起きるぜ…)」
小さな声でつぶやく玄さん。これって…。よし、と。5体が見ていない方の、なるべく近くにそれをおく。そして、
パァンッ!!
大きな音がなる。5体はその音にビックリして、泡を吹いて倒れこんだ。玄さんが笑っている。
「あ…?何が起こったのだ?康雄?この方は?」
あ。すっかり忘れていた。文美のこと。
「ごめんごめん。紹介するよ。この人は、宝を探して世界中を旅する男。向井玄さんだ。」
紹介をするが、まだ玄さんは笑ってる。だったらこの隙に、
「(実は、この人には僕たちは魔族がいない地方からの旅人だっていってるんだ。)」
「(そうなのか。わかった。話をあわせよう。)」
言い終わると、やっと玄さんは「ふーふー。ひーはっは。」と、笑いが収まってくる。
「して玄殿。助けてもらい感謝する。」
「いんやいんや。俺だっておもしれーもんが見れた。」
玄さんは帽子を深く被りなおし言う。
「しかし玄殿。これはいったい…」
と、泡を吹いて倒れている5体を見つめる。
「ああこれかい?言っておくが、振動うけると爆発ってのは。嘘だぜ。」
あ。やっぱり。
「なんと。それなのに攻撃を許したのか!」
「ああ。だって、そんなもんが腹にあったら、魔族だって怖くて動けねえからな。その緊張感マックスのあいつらに、こいつをお見舞いってわけよ。」
と、さっき僕に渡されたものを出す玄さん。
「これは…爆竹?」
「ああそうだ。いつ爆発するかわからない状態に、後ろで爆発音したら気絶ぐらいするはずだぜ~。いや~面白かった。」
そしてまた笑い出す。
「おい康雄よ。この男。中々肝のある男だな。」
「ああ。あんな堂々とした嘘。初めて見た。」
本当。玄さんは不思議な人だ。ずっと笑ってるけど。
気絶してる魔族をロープで縛って隅っこに隠しておく。これで少しは安心。
「んで?お前らどうすんだ?このままここにいても、国が負けるのを見るだけだぜ?」
玄さんがタバコを吸いながい言う。ん?負ける?
「玄殿。負ける…とはどういうことだ?今こちらの国は勝っているのでは?」
そう。確かにそう聞いた。何かの間違いでは?
「いいや。俺、聞いたんだ。魔族がこういってるのを。」
『人間も馬鹿だよな~。今戦ってる軍が三軍だとも知らずに。』
『だな。他の軍は順調に別ルートで攻めていることにまったく気づかないで。』
『おろかなやつらだ。何がゲザラスの力だ。そんなもの怖くて魔族やってねえっつうの。』
「って。」
「何?それは大変だ。すぐに兵に伝えよう。」
すぐさま立ち上がる文美。だが、玄さんは続ける
「やめた方がいいぜ…」
「なぜだ!このままでは国が負けるぞ!」
「だが。今の状況でそれを伝えても、捕まって死刑になるだけだ。」
なっ!なんだって?
「今お国のお偉いさんは、勝利目前にかなり喜んでいる。そこにどうだ?今戦ってるのは弱弱しい魔族で、今もっと強いのがお前らのところに向かってる。なんて言ったら。嘘か冗談かと思われて幸運ってとこだ。」
そんな…。つまり、現実から目をそむけるのと同じじゃないか。
「くっ…それでも…」
文美は座ろうとしない。やっぱり行く気か…。と思った瞬間。
「おお~?ここになんと人間がいるぜぇ~」
「本当だ。まさか周りの偵察で食料が手に入るとは!」
「さっさと捕まえて食おうぜ!どうせ三軍との戦闘で疲れているやつらだろ?」
「おおぉーい!!皆こいよぉ!!人間だぜぇ!!」
やばい。と思ったときにはもう遅かった。すでに何十体もの魔族が集まっていた
「これは…流石の俺でも…」
「弓矢一つではたりんぞ…」
囲まれた…。どうすれば…ああ…。だめだ。そう思い目をつむる。すると、さっきは魔族の倒れる音だったが、今度は何かが降りてくる音が聞こえた。
「待たせたね!ごめんよ!!」
目を開けると、そこにはヘルメットを被った人。声からして男…ってこの声どっかで…?
「くらえ!ガトリング砲!!」
すると、肩につけていた機械から何かが飛び出し、腕にはまる。そのまま魔族に向けて、
ガガガガガガッ!!ガガガガガガッ!!
その音が響く。どうやらあれはガトリングガン。あの男が魔族に向けて撃ちまくる。ゲザラスの力は込められていないようだったが、威力が強いのか。着々にダメージは与えていった。
「うっ…あ…」
最後の一体が倒れる。あの男の攻撃ですべての敵が倒れた。
「ふー。これで全部か。」
そういうと、ヘルメットが「プシュー」という煙と音をたてて開く。やはりそこにはおなじみの顔
「コニー。遅かったじゃねえか。」
そう。ヘルメットからはコニーの顔が。あれはコニーだったのだ。
「すまない。色々準備をしていたんだ。こっちの世界でも。」
こっちの世界?
「まさかコニー。もうここの状況がわかるのか!?」
「ん?そうだけど?」
ウォォォォォォォ。僕が小一時間かけても理解不能なこと現状を…。もう理解しただとォォォォ!!
「(ここは過去の日本で。なぜか迷信と思われていた魔族と魔法がある…ってとこだろ?)」
「(ああそうですよ!そのとおりでござんす!!)」
くっそォォ。この天才め!
「で?この機械はどうしたの?」
「一分で戦闘用ヘルメット作った。」
「この天才めェェェェ!!!」
「そうだコニー。戻れるのだろうな?元の時間へ。」
「ああ。それも一分で帰る装置を作った」
「「この天才めェェェ!!」」
あ。今度は文美も増えた
「あ…。康雄。こいつもお前の仲間か?」
おぅっと。今度は玄さん忘れてた。
「この機械のおっさんがクルーズ・コニーだ。コニー、このひげのかっこいい兄さんが向井玄さんです。髭見習え」
「なん…だと…。あ。そうだった。おい康雄。これはまたやべえぞ。」
と、急に顔色を変えるコニー。なんだ?
「お前も実感したとおり、この世界には魔族がいて、過去だ。」
「ああ。不思議だな」
「まず過去についてだが、わからん。なぜか空間移動が時間移動になっちまった。」
わからないなら話すなヴォケェ!!
「次に魔族だ。どうやらかなり前からいるらしいが、俺たちの記憶にも歴史書にものってない。これはおそらく、別世界にいるって考えたほうがいい。」
別世界?それって、あの鏡の世界的な感じか?でもなんでまた…
「おい康雄。空間やら歴史やら。俺にはさっぱりわからんのだが…。とりあえず、お前には信用できる仲間がいるようだな。」
信用か。確かに、できるやつらかもしれない。
「んま、なんか集まれたみたいだし。俺たちもここで別れだな。」
「え!そんな。もう行っちゃうんですか?」
会ったばかりなのに…
「俺もここにいたら弾減らすだけだからな。だが、またお前とは会える気がするぜ。」
「会える?」
「ああ。トレジャーハンターの勘ってやつだ。んじゃな!」
そういい残して、玄さんは林の奥へ消えていった。
「康雄。どうする」
「僕に聞くな天才野郎」
「予は十分に楽しんだぞ。」
なんだこの一等感のない三人は。
「そういえば、なんでコニーはその武装を?」
「空間移動の時は、物質を一度微粒子に分解してそれを別の場所に届ける。だが、その微粒子が妙な動きをしてな。よくよく調べると時間を越えていた。だが、現代の歴史書に書かれているとおりでは、中国との戦争が3年にわたってる。今は戦争中で危険とみた俺は、急いで戦闘ヘルメットを作ったってわけだ。」
「ん?でも、三年じゃないぞ?なんでも去年で収まったっぽいけど。」
「そうなんだ。やはり魔族といい技術といい。あらゆるものが変わっている。どうしたものか…」
過去にきただけで別世界行きか…。僕にはさっぱりだ。
「とりあえず、今の現状が見たい。現代に戻ろう。」
「コニーよ。戻る方法があるのか?」
「さっき作ったって言ったろ死に底ないが」
━━━━━━━━━━━━━コニーが凄い勢いでボコられています━━━━━━━━━━━━━━━━
「じ…じゃ…。いきま…すか…」
「コニー。言葉には気をつけろ。死んだら元も子もない」
もう傷だらけで立ってるのが奇跡だ。
「んじゃ…。微粒子再変換装置と書いてリプレイと読む機械。略して微粒子再変換装置。スイッチオゥン!!」
「「それ略しになってないよ(ぞ)ォォォォォ!!!?」」
コニーが天才で文美が天才で康雄が凡才。