第23話~弓道~
弓道の勝負が始まる。ルールは至って簡単。的に、矢を当てるだけ。的には点数があり、中心にいくほど高得点になる。五回矢を放ち、点数が高い方が勝ちとなる。ただし、矢を的から外すと失格となる。更に、一回ごとに、ギミックが用意され、段々と当てるのが困難になってくる。あれ? 簡単じゃない。
「一回目の的は、固定された的です。では、頑張ってください」
出場している人数は5人だ。なぜか、横浜の選手がいない。出てないとこを見ると、きっとリタイアしたのだろう。
「では。放ってください!」
この勝負はすぐに終わるはずだ。それに、あの文美だ。外すわけがないし、真ん中に当てないはずがない。
「左から! 7! 6! 8! 10! 10!」
名古屋、大阪、神戸、京都、江戸の順で言われる。やはり江戸の選手も凄い腕前らしい。
「次の的は、動く的です!」
少しすると、的が動きはじめる。動き方は規則的で、正方形を描くように動く。スピードは徐々に速くなっていく。
「左から! 1! 2! 外し! 10! 9!」
あ。神戸の選手が的を外した。これで失格になり、退場だ。でも、文美はやっぱりすごい。あんな中で一番始めに当て、更にど真ん中だ。そう思っていると、選手観客席から大声が上がる。
「キャァぁァァ!! オネェェサマァぁ!!」
はい。ハミーがうるさいだけでした。観客席から手を振って叫んでいる。でも、文美はやっぱりすごい。あんな中で平然とした顔でいる。って、ハミーがいるってことは、コニーいないのか。
「次の的は、消える的です!」
次の的は随分と不思議な的だ。どういう仕組みを使っているのか、的が消えたりあったりする。しかも、一見不規則に見える。これは規則を見つけるかまぐれで当てるかの二択だ。
「左から! 外し! 8! 10! 9!」
今度は名古屋の選手が外す。今回は的が動いている訳ではないので、当たれば普通の点数だ。なので、大阪の点数は普通だ。しかし、文美の点数は相変わらず満点。これはもう勝利確定だろう。ちなみにハミーが出血(鼻)で保健室に逝ったらしい。
「次の的からは、威力が重視されます。鉄の的です!」
一旦的が回収されたかと思うと、別の的がつけられる。厚さは薄い方。でも、普通に打っても貫くことは無理な硬さと思われる。思いっきり弦を引き、更に命中しなければいけないだろう。
「左から! 外し! 10!? 10!?」
流石の司会も驚きだろう。あの強度を貫いたうえにど真ん中。しかも、江戸の選手も真ん中だ。そして、大阪の選手が消える。さあ、とうとう江戸と僕らの勝負だ。
「次の的の前に休憩です。では!」
休憩で座っていると、携帯がなる。今度は誰がでるんだろう? 文美だといいな~。
『康雄。そっちの調子はどうだ?』
「PEッ。んだよコニーかよ」
『いきなりなんだその態度!?』
期待していた分ショックだわ。てか、コニーはこっちにいないんだからかかってくる相手はわかってたんだった。
「で? 調子って?」
『文美だよ。どうせ今休憩だろ?』
「ああ。僕らと江戸の真っ向勝負だよ。点数では、文美が30で、江戸が28」
『なんだ。勝てそうじゃないか』
そう。と言いたいが、そうでもない。今までズルをしてきた江戸だ。何をしてくるかわからない。でもまあ、
「そうだね。コニーの言う通り、余裕のよっちゃんで勝てそうだよ」
と、言っておこう。心配させてもしょうがない。
「そういやぁ。ヒューズはどうなった? 調子はどう?」
元々、ヒューズの元気を取り戻すためにこの世界に来た(17話参照)んだし。少しは体動かして元気になったかな?
『ヒューズか? まだ良くなったらしい。だが、まだ完全ではないと』
「そうか……なんか方法はないかな?」
『いや。実は心当たりがあるらしいが……まあ、それはその世界の出来事が終わってからだ』
? なんだったんだ? まあ、とりあえずこっちに集中すればいいんだな。そうして、会話が終わった。