第22話~次勝利~
今回はちょっと長めです。
「(題名を)またまた変えさせていただきましたぁ~!」
「怪しいって。どういうことだよ?」
ハミーの言葉に疑問を覚える僕。聞き返すと、思いもよらない答えが返ってきた。
「さっきの食事……。ふたつあったでしょう? 私の感じる毒では……」
次の言葉を聞いた瞬間。頭が混乱した。
「どちらにも入ってるんですの」
どちらにも入っている。それはつまり、どちらを選んでも当たる。ということだ。それはルール上おかしい。4つのうちのそれかに入っていて、その中から選ぶはず。なのに……。
「今、コニーと話ていたのですが……。あらかじめ解毒剤を飲むにも、毒の種類がわかりませんし……」
これははっきり言って絶体絶命だ。食べても死に至る可能性と負け。食べなかったら負け決定。どちらに転んでも僕達にとってはかなりの痛手だ。どうすれば……。
「最終手段で、食べた後、普通に私が装う……なのですが」
「! そんなのダメに決まっている! それじゃあハミーが危険じゃないか!」
「……わ。私は大丈夫ですの。今はこの場を乗り切るしか……」
「いいや! ちょっと待って。何か……ないか……」
僕たちにある手段……。ヒューズの時は解除薬を渡せたけど……。
「! そうだ! ハミー。急いで行ってほしいとこがあるんだ!」
「さあ! 再開します。今残っているのは3人。残り選ぶのは一品、誰が残るのでしょうか!?」
また再開し、少しずつ観客が会場に集まり始める。うまくやってればいいけど……。
「先ほどと同じ場所に座ってくださいね~。おっと、そこじゃありませんよ~」
選手が全員座ったのを確認すると、司会が大きな声で。
「では! 最後の料理。選んでください!」
そう言い、3人が料理を選ぶ。実際、二分の一という最悪の運試し。どうなる……。
「選びましたね? では、食べてください!」
「待ってください! やっぱりこっちにしたいです!」
そう叫んだのは一般人。青ざめている。きっと怖いのだろう。でも、おそらくあの人の料理二つにも……毒が。
「ダメです。早く食べないと無理やり口に押し込めます」
そう司会が言うと、急に一般人の後ろに大男が現れ、口に料理を流し込む。ひ、酷い……。
「がはッ……く…そ……」
可愛そうなことに、その人は倒れた。泡を吹いていないとこを見るとやはり別の毒らしい。
「さ。こうならないためにも早くお食べください」
その人が運ばれたのを確認すると、司会は二人に催促する。
「ふっ……うまい」
江戸選手が食べる。すると、毒は入ってなかったのか。パクパク食べる。そして、ハミーの方を向き、「どうだ?」という顔をする。あいつはあの顔からして、毒が両方に入っていることを知っている。さて、そろそろかな?
「ヘァァックション!!!」
大きなクシャミが会場に響く。勿論皆音源を探す。すると、音源の方向は意外な場所だった。
「おっとっと。すまない」
そこは選手観客席と呼ばれる場所。その名の通り、選手が試合を見れる場所だ。しかし、イカサマなどないように試合場とはかなり離れている。そして、その音源の招待はヒューズだった。あいつはクシャミもでかいんだな。てかクシャミできるんだな。
「コホン。気を取り直して。羽実選手、食べてください」
そういわれ、ゆっくり食べ始める。ハミー。その時江戸選手は、まさに「勝った」という誇らしげな顔をしていた。だが、その顔が青ざめるのも遅くなかった。
「ごちそうさまですの」
ハミーは何事もなかったかのように完食した。
「おいおい! ちょっと待て! なんでお前が平気なんだよ!」
とうとう言ったか。江戸選手が立ち上がり言う。まあそうだろう。予想外だろうからな。
━━━━━━━━━━━━━━休憩時間の会話━━━━━━━━━━━━━━━
「! そうだ! ハミー。急いで行ってほしいとこがあるんだ!」
「言ってほしいところ?」
「ああ。そこは、僕達の世界のコニーの研究部屋だ」
「は? なぜですの? そんなところに勝てる方法なんて……」
「違うんだ! 実は、その部屋にはもう一つ。というか試作品の転送装置があるんだ」
「……? それで?」
「それを持ってくれば、ここにあるやつとで二つ。意味わかるか?」
「単刀直入に言いなさい糞蟲」
「ヒドッ。じゃなくて。いい? まずハミーが最初に、別の人の席に座るんだ」
「そんなことしても注意されて終わりですわ馬鹿」
「ヒドッ。違うんだ。その時、その試作品をばれないように置く。そして、自分の席に座る」
「? アホが」
「ヒドッ。ってなんで言ったの!? でなく。そうして、なんかでハミーの方の注意をそらしている間に、試作品を置いた席の毒なし料理と、ハミーの毒入り料理と入れ替えるんだ」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ずるい! おかしい!」
「あら江戸のお方。なにがずるいので?」
「ウルセェ黙れ! 俺は確かに毒が二つ入るのを見た! なのに平気なんて……!!」
あいつバカだな。自分から言いやがった。
「あなた。今、ご自分で自分の罪を吐いていますわよ?」
「や……今のは……」
すると、さっきの大男が出てきて江戸選手を持ち上げた。
「な!? 何するんだ! 俺は言われた通りに……!」
連れ去られた。というか持って帰られた。なんだったんだろうか。それに最後の「言われた通り」という台詞。それは、このイカサマもさっきのドーピングも、江戸の大主がやったことってことなのか?
そう考える間にも、次の試合の準備が開始していた。次は、文美の弓道だ。普通ならいいけど……。