第18話~賭博~
「なあ……これ、意味ないよな?」
ヒューズが服屋から出てくる。理由は、この時代の服装に合わせるためだ。だけど、
「しかし、よくもまあ。このサイズの服があったな」
コニーはアーマーを着ているせいで少し体が太い。だが、ヒューズが普通にでかい。緑だし。
「和服……って言うんだね。日本に昔あったらしいけど、今は全然残ってないもんね」
少し聞いたところ、ここは日本が鎖国したままの世界らしい。1854年に黒船が来航し、開国された日本。だが、この世界では断った。その後、アネルカ合衆国から(この世界ではアメリカというらしい)宣戦布告をうけたが、日本は独自の武術を発達させ見事返り討ちにした。
そういう世界である。
「どうやら、機械とかの技術は海外から来てないんだな。そうなると、コニーって名前も言ったら怪しまれるか……」
コニーが言う。確かに、鎖国状態で外国人がいると不思議だ。捕まってもおかしくない。だからコニーやヒューズは顔を隠してるのか。
「で。まだゲザラスの事は聞けてないけど。どうする?」
「おそらくゲザラスは日本以外の世界にいるんだろう。でも、情報が入ってこない。石の事も聞きながら、外国に行く方法を見つけるしかねえ」
宇上鋼下石も、探さなといけないのか。これだったら日本にあってもおかしくないな。そうしていると、一人の男に話しかけられる。
「お前さんたち。少しいいか?」
小柄な人だ。まさか、外国人ってバレた?
「な、なんですか?」
「そこの小太りは弱そうだが、その二人。いい体格してるな。相撲でもしてんのか?」
へっぐぅ! また弱そうって! ひどい!
「相撲? それって、本で読んだな。たしか、円状の縄の中で二人が押し合いをし、外に出たほうが負けっていう」
ああ。それだったら聞いたことある。日本の競技だったみたいだけど、今は一部の人しかやってないやつ。この世界ではまだあるのか。
「いや。俺達はただの旅人だ。それより、二つほど質問をしていいか?」
「質問? 内容を聞かせてもらおうか」
質問。と聞くと、男は少しニヤつく。
「一つ。宇上鋼下石というとても硬い石を知っているか。二つ。国にばれないように外国へ行く方法。または外国の情報を手に入れる方法を知ってるか」
男は、質問の内容を聞くと、更に笑う。
「どちらも答えられるぜ」
「本当か! ありがたい!」
ヒューズが喜ぶ。だが、コニーは険しい顔をする。
「その顔。ただじゃ教えてもらえなさそうだな」
え? ただって?
「そっちの兄ちゃんはわかってるな。そうだ。条件がある」
あ。そういうこと。男はヒューズとコニーの肩に手を置く。
「お前達に。勝負で勝手もらうぜ……へっへっへ」
男が出した条件は、スポーツ勝負だった。この男は、西原藤次郎という賭博場を仕切っている者だった。
今、賭博でスポーツ勝負をかける。というものが流行っていて、その選手を探していた。そして、コニーたち(僕は除いて)が選ばれた。
期待どうりの勝負をしてくれたら、情報をくれるという。
「期待どうり。ってのは、勝てばいいんだな?」
「ああそうだ。しかし、俺だけが選んだわけじゃねえ。他の場の主も選んできた。そいつらに勝ってほしいんだ」
他。ということは、日本の色々な所にあるのだろう。
「お前さんたちは、見たところ強い。おそらく、他の奴らは勝つためにヒデェことしてくる。勝たねえと評判も落ちる」
「イカサマ賭博ってやつだな。ちなみに、どういう競技なんだ?」
コニーが言う。だいぶ乗り気だ。
「全部で4競技。相撲。弓道。露西亜小輪。騙合。だ」
ん?二つは聞いたことあるけど、露西亜小輪と騙合って?
「どういうルール……じゃなくて。どんな風に行うんだ?」
「相撲は、普通にマワシをしてやって、賭け人勝つという方に賭ける。弓道は、真ん中に近いほど点数が入り、賭け人はその点数を当てる」
そこまではまだわかる。
「露西亜小輪ってのは、露西亜から来た、るーれっとっていう小さな輪って意味のやつだ」
ロシアンルーレットかよ!まあ、ここならそういう考えだね……
「で。俺らはそれを変えて、料理を使った」
「料理か?」
「ああ。これは命の危険がある。4つの料理を出され、そのうちの一つに猛毒が入ってる。それ以外を食べるんだ。大食いと運が詰まったやつだ」
命がけだな。そんなのやる人いるのか?
「騙合ってのは、騙し合う勝負だ。その決まりは、俺も聞かされてない。なんでも、大主がその場で言うらしい……」
そう聞くと、コニーは驚いた声で言う。
「何!? お前達が決めたわけじゃねえのか!」
「…? そうだ。この企画は、大主っていう、江戸の大賭博主がやるやつなんだ」
大賭博主。なんだか悪いイメージしかないな。
その後。日にちを聞いて、一度時間の中心に戻った。
「ふむ。それで予たちに」
「ああそうだ。相撲はヒューズが出る。弓道は迷わず文美だ。騙合は俺が出るが……露西亜小輪がな…」
悩んでいると、
「それなら私が出ますわ」
ハミーがサラッという。
「ハミー。誰も料理が文美とは言ってないぞ?」
「ハミー。毒といっても文美の矢じゃないぞ?」
「ハミー。4つっていっても文美が四人じゃないよ?」
「お主ら。どういう頭しとるのだ」
まったく。ハミーも聞き間違えが半端ないな。
「違いますの! そんな聞き違いするわけがないでしょ!?」
だってね……。
「私。実は料理が……」
「下手だから毒には慣れてるの?」
「…」
なんか殴られました。
「料理が得意なんですの。毒入りの暗殺もしますのよ? まともな料理を作れないと。それに、毒入りかを見分ける訓練もしましたわ」
あら意外。にしても料理をね~。
「それならハミーに任せる。康雄は、俺達に賭け続けてくれ。自腹で」
「ひゅい!? なんで! 僕今月給料ないからもう500円しかないんだよ!?」
この500円でどう死のう……じゃなくて生きようと何度考えたか。
「だからだ。俺達は絶対に買って見せる。その金で、賭け続けろ。そうすれば、金が少しつづ増える」
え! そうか、皆……僕のお金を気にして…(うるっ)
「そうすりゃ、俺が貸した一万も返してもらえる」
「すれば、予の貸した3万も返してもらえるの」
酷いや二人ともォォ! それじゃすぐに0円だよォォ!?
「運よく、あっちの世界でも硬貨が同じだ。使える」
くそっ……利息ないからまだいいけど……。うう……。
そうして。三日後となった。
「いいか?まずは俺とヒューズと康雄でいく。勝負によって、お前らと交代にくる」
「ああ」
「はいですの」
そう合図を確認すると、その賭博場に行く。
「……お。来たな。って、おい。三人だけじゃねえか。4競技だぞ? あと二人連れてくるって……」
場の前には藤次郎が立っていた。そこには、賭け人と呼ばれる勝負に賭ける人が集まっていた。
「二人は後でくる。で。最初の競技はなんだ?」
もちろん僕らは和服で。その人だかりの中には、選手と思われる大男もいた。
「勝負の順番は、相撲。露西亜小輪。弓道。騙合だ。大丈夫か? この勝負には俺らの場の先がかかってる」
「大丈夫だ。だが、約束したからな! 情報をくれよ」
「それも了解だ。俺しか知らないといってもおかしくないからな」
その時。大きな声が奥の方から聞こえた。
『選手。および場主の方々は待合室へ入ってください』
「呼ばれたな。行くぞ」
「ああ。康雄。しっかり応援頼むぞ」
「うん! 頑張ってね!」
三人は奥の部屋へ入っていく。これから、勝負が始まる!