番外編~康雄の思い出①~
今回は、本編に関係なく。康雄たちの過去について触れます。読まなくても十分ですよ。
時間の中心にて。ヒューズと康雄は暇だった。
「……なあ康雄」
「ん? なんだい?」
ヒューズは暇そうなまま康雄に聞いた。
「お前たち三人って、かなり仲がいいが。昔はどんな感じだったんだ?」
「昔? そうだね。小学校の頃は時々しか会ってないし。一番仲を深めたのが幼稚園と高校の時だね」
康雄は懐かしそうな顔をしたままヒューズを見る。
「できればでいいんだが。聞かせてくれないか? 昔を」
「いいけど……。なんで急に?」
「俺は記憶がない。だから、絆の作り方がわからないんだ。だから、仲の良いお前らの話をと」
「ふーん。わかった。じゃあ話そうか。まずは僕たちが仲良くなったキッカケでも」
そうして、康雄が話し始める。最初の話は、幼稚園の時。ピクニックの話だった。
━━━━━━━━━━━━━━幼稚園時代━━━━━━━━━━━━━━━
「はーい。皆ー。ここでお弁当を食べまーす」
幼稚園の先生が大きな声で園児に言う。ここは山の山頂だ。ここまで登ってきたのだ。低い山だが。
「やったー。弁当だー。腹減った~」
そうはしゃいでいるのは、小太りの特に可愛くもかっこよくもない子。誰でもわかるように康雄だ。康雄はバックを開けて弁当を取り出す。そしてウキウキしながら弁当を開けると……
「……父ちゃんめ……」
『はずれ』
その一言が書かれた紙切れ。それだけが弁当箱の中にあった。どうやら父親のせいらしい。しばらく紙切れを見つめ、先生の方へ歩く。
「……先生。紙って食えますか?」
「んー? って康雄君!? なんでそんなに泣きそうなの!?」
先生に紙切れを持って聞く康雄は涙目であった。
先生が泣きやましていると、一人の少女が歩いてくる。
「こらー! お主! 男たるものが食料程度で泣いてどうする!」
口調が女の子ではない。しかも、弓矢を担いでいる。これはどう見ても文美にしか見えない。
「ひぐっ……だって弁当がぁ……」
「泣くな弱虫! しょうがない。予の昼飯をやろう。ついさっき捕獲した新鮮なやつだ」
そう言って手をひらを康雄を突き出す。その手の上には……毛虫。
「ぐえぇぃ!? け、け、毛虫!? なんで君! 手でもってるの!?」
「文美ちゃん!? 危ないからその虫さん地面に置こうね!」
普通、毛虫は手でもってはいけません。先生でもあわてています。
「これしきの毒。予には効かぬ! さあ! 食え!」
「絶対無理だよ!? 口に入れる時点でブラックアウトだよ!?」
「文美ちゃん! 置いてお願い!」
小さな手だけなら可愛いかもしれない文美の手。だが、その上には毛虫が動いてる。
先生と康雄が騒いでいると、今度は男の子が近づいてくる。
「先生。弁当を開いたら新生物が……」
「「「なんで!?」」」
男の子の持ってる弁当箱。その蓋の隙間から何か飛び出して動いてる。
「多分、人工生命の試作品と食材を間違えたんですね。せっかく遺伝子の不具合もないし、順調に進化していたのに。どうしましょう。こいつ」
そんな難しい言葉を知ってる。しかも髪型もビシッとしていて、いわゆるイケメン。幼稚園児にして。 これはもうコニー特定だ。
「コニー君はどうして人工生命と食材を間違えるの!?」
「脳とハンバーグが似ていたもので」
似せるな気持ち悪い。すると文美はコニーに。
「おい主。そいつは食えるのか?」
聞くな。
「え? こいつは、ネズミの心臓と人間の血液。猫の細胞とキリンの皮膚を使ったし。大丈夫じゃないか?」
「君ぃ! それ全然大丈夫じゃないよ!」
その三つのどこに食える要素があるのだろうか。
「先生! 僕の弁当どうしましょう!?」
「先生。予の弁当が騒いでる間に逃げてしまった。どうする」
「先生。これ食えますか?」
三人に攻められる先生。段々先生も泣き目になり、
「先生の弁当をあげます…ぅ。三人で分けてください…ぃ」
広いスペースを見つけ、三人で先生の弁当を食べる。
「ムシャムシャ…それにしても。君は弓持ってるし、君は意味不明な言葉ばっかり使うね…モグモグ」
康雄はおにぎりを食いながら二人に言う。
「もちろんだ。こいつは予が愛用する弓矢なのだ。手放す訳がない」
「意味がわからないのは、俺が頭いいからだ。どうだ、参ったか!」
文美は弓を構え、コニーはドヤ顔しながら言う。
「…ゴクリッ…はっはは。面白いね、君たち。僕は橘康雄って言うんだ。君たちは?」
おにぎりを食い終わってから聞く。
「ふむ。予も主を気に入った。予を怖がらないやつは初めてみたぞ。予の名は草薙文美だ。よろしく頼むぞ」
文美は、弓矢を持っているせいで友達が少なかった。というか近寄らなかった。怖がらない康雄は珍しいはずだ。
「俺もだ。なぜか知らないが避けられていたが、お前たちが始めてだ。話を聞いてくれたのは。俺の名前はクルーズ・コニーだ。よろしく頼むぜ」
コニーはうざいからであろう。
「うん!これから僕たち。友達だね!」
「友達か。悪くない。いいだろう」
「特別になってやろう。感謝しろよ」
康雄を手を差し出すと、二人が手を握る。こうやって、三人の友情は始まったのであった。にしても、こいつら本当に幼稚園児だろうか。