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第16話~守る人~

 病院。あの攻撃の後、すぐに病院に運ばれた二人。なんとか一命は取り留めたが、かなりの重症らしい。

「……」

 手術室の前で座り、待つ。中では、高度な治癒魔法が行われているらしい。そこに一人の看護婦が通りかかる。

「あ! あの。二人は……二人は大丈夫なのでしょうか」

 恐怖で少し声が震える。

「え? ああ。大丈夫ですよ。今中でやってる医者は、この辺でも有名な魔法師です。安心してください」

 そういわれて、少し気が楽になった。こっちの世界では魔法があるだけあって、僕たちの世界の医学より進化してる。安心しようじゃないか。



 しばらくして、「手術中」という扉の上につけられた赤いランプの光が消える。そして、お医者さん。つまり、魔法師さんが出てくる。

「! 文美は大丈夫ですか!? ついでにハミーも!」

 そう聞く。すると、

「康雄。安心せい。大丈夫だ」

 後ろから文美の声。その姿を見ると、包帯を腕や足に巻いた文美の姿。でも、元気そうだ。

「よかった~。でも、かなりの怪我だね……」

「ちょっとぉぉ! 私はどうしたのですの!? ついでとは何ですの!」

「でも。それじゃあ戦闘は控えたほうが……」

「ああ。歩けるは歩けるが、どうも自由にならん。しばし休む」

「お姉さまも無視しないでくださいまし!」

 そうか。ちょっと戦い辛くなるな……


 二人の病室へ行く。ひとつの部屋にベットが二つ。二人用の部屋らしい。そこで、僕は文美たちに言った。

「とりあえず。一時的に戻ろう。魔法師さん。いつ退院できますか?」

「退院か……。急ぐなら明日でのいいけど。できれば一週間はここにいてもらいたい。魔法がちゃんと効いたのを確かめたいからね」

 明日。と一週間か。どうすれば……

「康雄。予はもう大丈夫だ。帰ろう」

「え。でも、ちょっと心配なんだけど……」

 文美も歩くのですらキツイ状態で、ハミーも動きにくそうだ。

「予が戻ると言ったら戻るのだ! わかったか!」

「はいはい……こうなっては逆らえませんよ~」

 この我侭は、絶対に覆せない。僕は知ってる。


「そうか。では、明日だな。それまでは安静だ」

 魔法師さんはそう言って病室を出て行く。さて、僕はどうしようかな……

「じゃ、僕はその辺を観光してるよ。あいつの情報も知りたいし」

 そう言って出ようとすると。

「待て康雄。行くでない」

 と文美に呼び止められる。

「どうしたのさ?」

 振り向くと、死にそうになった……。

「寂しいのだ……行くでない……そばにいろ」

 こ! こんな顔は初めてみた…今まで凛とした顔立ちで綺麗だった顔が……。か、可愛い! とくに上目遣いが!


「で…でで。でもさ、ほら。情報をね! 文美たちをこうした犯人を捜さなきゃ!」

 そんな顔を見ていたら本当に死んでしまう! そう思いながら後ろを向く。見ないように!すると、

「……康雄は。予の近くにいたくないのか……?」

 

 ニャァァァァァァ!!!! そんなこと言われたら「NO!」しか言えねえだろうよぉ! 近くにいたら可愛くてどうにかなっちまうよぉ! 

 

 だってさぁ! 現にハミーだって! 羨ましい嫉妬の顔が混ざりながら鼻血出して倒れてるもん! 僕がいたらどうにかなっちまうよぉ!


「そそそそそ。そんなことはないよ。文美の近くにいてあげたい。でも……」

「? でもなんだ?」

 そんな本当の理由なんていえない。何かいい回避方法は……!

「でも!」

「でも?」

 これしかない! もう僕の何かを失いそうだけどシャァネエ!


「でも! 僕いまから○○な動画見にいくんでェェ! 流石に一緒にいられんでしょォォ!?」

 終わった……僕への……視線……

「最低ですわね」

「なっぁ!? ハミー起きてたの!?」

「当たり前ですわ! お姉さまが寝る前に寝てしまうはずありませんわ!」

 うへぇ……最悪だ……。ちなみに文美は…


「……そ、そ、そうか。……気をつけてな……」

 ありゃ…顔が真っ赤だ……。こりゃ相当怒ってるのか? うう……忘却魔法とかないの…?  そう思いながら病院を出て行った。



「はぁ…終わった……駄目だ……」

 トボトボと街中を歩く僕。景色見る気分じゃないけど、魔法世界でもあまり風景は変わらないものだ。すると、声がどこからか聞こえる。


「そこの兄さん。ちょっと」

 よく聞くと、ビルとビルの間にある路地の方からだ。行ってみると、小さなテントがあった。

「中にお入り」

 そう聞こえたから、中に入る。するとそこには、包帯を顔中に巻いてる人がいた。声からして女性だ。

「な、なんのようですか?」

 不気味だ。多分血も染み付いてないから怪我はしていない。ただ顔を隠している。そう思えるからだ。

「うふふ……。あなた、この世界の人じゃないわね?」

「!?」

「ふふっ」

 なぜだ? なぜこの人は知っている? ばれてないはずなのに…。

「な、なぜそれを?」

「うーん。多分そのうちわかるけど、そっちの関係者って言おうかしら?」

 関係者?ジオやウォーみたいな人のこと? でもなんでそんな……。

「それはわかった。でも、なんで僕をここへ?」

「そう焦らないで。私だって、別にあなたを困らせようとしたわけじゃないの。」

 随分とゆっくりな人だ。じれったい。

「ゲザラスについて一つ教えてあげようとおもってね」

 な!? この人。知ってるのか。やっぱり。

「そうか。教えてください早く」

 そろそろイラついてきた。


「条件があるわ」

「やっぱりね。で? どんな?」

 だいたい想像はついた。多分簡単には教えてもらえないと。

「それは、ある鉱石を採ってきてほしいの」

 鉱石?

「その鉱石の名前は。宇上鋼下石ウジコウカセキよ」

「宇上鋼下石? 聞いたことないね」

 漢字の石なんて珍しいから覚えてるはずだけど。

「当たり前よ。あなたの世界と魔法世界にはない鉱石だもの」

「へ?」

「多分。別の世界だわ。その鉱石は、どんなものより硬く、絶対に削れない石よ」

 え。そんなこと急に言われましても。

「んじゃ。お願いね。これ以上聞いても何も答えないから」

 そう手を振られた。ああ~駄目だな。こういう人は絶対に話さないし。しょうがない。後でコニーに相談しよう。

――その後。驚くことにおでん味アイスが売ってたので、通貨も同じってことで買っておいた。なんでも魔法で3日は溶けないって言ったし。――



 病院に戻ってくる。もう夕日が見える頃だ。

「ただ~いま~」

 ゆっくりと病室に入る。寝てて起こしたら大変だ。案の定、2人は寝ていた。

「……寝顔もいいな……」

 そうつぶやきながら、椅子に腰掛け夕日を眺める。

「……この夕日も。あいつが世界を滅ぼしたら見れないのか……」

 つくづくそう思う。きっと、この世界にもゲザラスがいるなら、そのうち世界を滅ぼそうとする。どこの世界でも同じだろう。すると、

「康雄は……この世界を助けたのか?」

「うっひゃ!……っと。なんだ文美か。起きてたのね」

 ビックリした。いきなりしゃべるから。

「すまない。して、どうなのだ?」

 この世界を救いたいか? って、

「決まってるさ。救いたい。」

「なぜだ? 主は何も関係ないのだぞ? なのになぜ?」

 ベットの毛布をかぶりながら文美は質問をする。

「そりゃ……。この景色を……守りたいから? かな」

「景色?」

 とっさに思いついたことだ。でも……。

「そう。こうやって、人が築き上げてきた文化。歴史。ってのを、残しておきたい。壊したくない。だからだよ。僕は、守りたいものがある」

 僕には力がない。だから、人に任せることになる。それでも、僕は守りたいものを忘れない。文美やコニー、ヒューズやハミーも守りたい。欲張りだとは思うけど。


「それに。約束したし。約束してくれたし」

「ぬ?」

 約束したのは父ちゃんと。約束されたのは、文美と。

「文美。主が一緒に居る限り、予は主を守り続ける。そう言ったからね。僕は忘れないよ。信じるよ」

「そうだな。予も、守るものがあったのだな。うむ。わかった。その約束、果たせてもらおう」

 守る。その一言で、安心感が生まれる。不思議なものだな。


「文美。僕も、みんなを守る。何もできないけど、その気持ちを持っている」

「康雄……ああ。その気持ちが、予の力となる。礼を言うぞ」

 いつもの文美だった。こんな日々が続けばいいのに。戦いなんてない日々へ。そう思うこともある。だけど、それを実現するために今こうしてがんばっている。まだ途中なんだ。そう思うと、少し。楽になる。

 

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