第15話~負け~
「ふむ。ということは、魔力の形をイメージするのだな」
練習場で、魔法を上手に使う方法を習った文美とハミー。さっそく練習に入る。
「予は炎と言っておったな。ならば……」
そう言いながら文美は弓を引く。そして小さな声でつぶやく。
「技名…技名……」
…。おい。
「ちょっと文美。もしかして技名考えてるの?」
「そのとおりだ。やはり美しいものには名前は必要だ。何か……そうだ」
なにか閃いたのか、より一層弓を強く引き、的に向ける。
「炎の矢!」
叫ぶ。と同時に矢が放たれる。だいたい想像はついていたが、やっぱり矢は燃えている。しかし、矢自体が燃えているわけではない。実物はすげぇ…な。
「キャー! お姉さま! カッコいい!」
ハミーがうるさいが。矢は的のど真ん中に当たり、そのまま的は燃え尽きる。
「……初心者だよね?」
先生が驚きながら言う。実際凄いとは思うけど。
「次は私ですの」
今度はハミーが的に体を向ける。
「電気。イメージで魔法が完成するなら、ほぼ可能性は無限大」
まあ魔力の強さにもよるけど。
「でしたら!」
ハミーはどこからか針を取り出す。一瞬でわからなかったが、あれが彼女の毒針だろう。その針を、ハミーは空中に投げる。すると、
「やりましたわお姉さま! 私の思った通りですの!」
その針が空中で止まっている。おそらく、電気で磁力をうんだのだろう。でも、その発想をすぐにできるのは凄い。
「ですが。まだ終わりませんわ!」
そう言いながら、針に向けて手を挙げる。すると手から何か線上のものが針に向かって流れる。
「針は金属ですの。電気はとうぜん流れます」
針が光出す。電気をため込んだのか?
「いきます! 電撃!」
ハミーは手を的に向けて振る。すると針も一緒に飛んでいき、的に直撃。だが……
「やりましたわお姉さま! これが私の愛ですの!」
その電気は的をこがし、何か模様を浮かび上がらせる。それは、
「予の顔だの……」
「うん」
こげで描かれた黒い線。それは綺麗に文美を描いていた。
「むむ……。炎の矢!」
瞬時に弓を引き炎の纏った矢を放つ。的は一瞬で灰になった。
「ノォォォォォ!」
そのハミーの顔は悲劇そのものを語っていた。
「さて。魔力は十分に使える。戻るか」
練習場を出た僕ら(一人がまだ悲劇)は時計を探す。が、遠くで爆発音が鳴る。
「なんだ!?」
「なんですの!?」
ハミーが復活した。爆発のした方からは人が逃げてくる。
「行くぞ!」
「はい!」
「え」
ちょ。待って。
「ここだな」
一つのデパートと思われる店の前へつく。そこからは煙がでてい、あきらかに爆破が起こった場所だ。
「! あれは誰ですの!?」
ハミーが指さす方向を見る。そこは、煙の中の一人の人が歩いてくる様子だった。
「なんだ!? あいつ。仮面?」
中から出てきたのは、変な仮面を被った人だった。仮面は真っ黒で、上に向かってトゲが3本ある。見ていると少し怖い。その人は、手に袋を持っていた。
「これも外れか。別へ行こう」
そう言い、ゆっくりと歩き出す。
「おい待て! 貴様! この爆破に関係あるのか!」
文美が叫んで呼び止める。大丈夫なの?
「……ふっ……」
一度振り向いたがすぐにまた歩き出す。それに文美は怒ったようで、
「くっ。貴様! 話を聞かぬか! 炎の矢!」
矢を放つ。それ気に入ってきたね。まっすぐ仮面に飛んでいき、当たる瞬間。
「雑魚めが」
当たる瞬間。矢に向けて腕を一振りする。すると矢の炎は消え、矢もバラバラになった。
「なっ……」
文美が驚く。するとハミーが前へ出る。
「お姉さまを無視してほしくありませんわ! 電撃!」
今度の技は針をそのまま投げる。その針は空中で電気をまとい、仮面に向かう。
「……」
針が体の近くに来た時。仮面は一指し指をだし、針に当てる。
「なんですの!?」
そう。仮面のやつは、ハミーの針を指先で、先端は尖っているのにも関わらず指で止めたのだ。
「羽虫が。あまり我の周りを飛ぶ出ない」
そう仮面のやつは言い、こちらに向けて手を向ける。
「! 危ないですのお姉さま!」
手を向けられ、瞬間的にハミーは文美の前へ行く。そして、
「炎の果」
手から炎が出る。その炎は、大きく燃え上がるとハミーの方へ飛んでくる。
「イメージですの! 雷の壁!」
そうハミーも叫ぶ。すると電気の塊で作られた壁が前に出現する。多分、電気の塊とは変な表現だ。だが、そう表現しざる負えない。
「羽虫め」
しかし炎は壁を貫きハミーに直撃する。
「っっああっ!」
その身体は炎に包まれ、少し燃えたかと思うと消えた。ハミーは少し黒く焦げ、そのまま倒れる。
「ハミー! 貴様ぁぁ!」
文美は完全に怒っている。顔が本気だ。
「まだ諦めぬか。無駄だ」
「うるさい!」
そう文美が叫ぶと、身体を炎がつつむ。これは文美の魔力だ。
「お前は炎属性か。ならば先の魔法はあまり効果がないな」
仮面が手をこちらに向けながら言う。同じ魔法は効果が薄れるのか。
「そうだ! わかったらハミーに謝れ!」
「まだわからぬか。見逃すといってるのだ。我の魔力には太刀打ちできまい」
仮面はそう言ってまた歩き出す。
「……。謝れと申してるだろうが!」
文美は仮面に向かって腕を振る。すると、仮面の周りに炎の円ができ、完全に囲んだ。
「ほう」
「これで貴様を炎で焼くのは簡単だ!」
そう文美が言うと、仮面はゆっくりと手を文美に向け、
「誰が炎属性しか持ってないと言った?」
手から何か出た。それしかわからなかった。だが、文美を見ると、
「がっ……は……」
腹・肩・足に穴が一つづつ開いていた。
「文美!!」
文美は弓を杖代わりにし、かろうじて立つ。すると、仮面の周りの炎は消えた。
「ぐっ……き…さま……」
文美の体からは血が流れる。しかし、しっかりと仮面のやつを睨んでいる。
「まだその目を続けるか。……とどめだ」
仮面はまたもう片方の手を出すと、炎を出す。やばい。そう思った僕は、自分でも驚く行動にでていた。
「やめ…ろ」
「?」
僕は、文美とハミーの前に出ていた。
「やめろ!これ以上二人に手を出すと……許さない」
そこにいれば、確実に攻撃は当たる。僕なら即死してもおかしくない。
「お前は……魔力を持っていないな。なぜだ。なぜ助けようとする」
わからない。わからないけど。
「大事な……仲間だ…」
「わからんな。お前は無力だ。そのまま逃げれば、安全にいられた。なのになぜ、無理に首を突っ込む」
僕だって足が震えてる。どうしようも…ない。
「僕だって怖い。でも、二人が死ぬのはもっと怖い……。だからさ……」
今にも逃げ出したい。けど、体が動かない。
「なぜ……なぜ……」
「?」
仮面は下を向き、何か呟いてる。いまいち聞こえないが。
「羽虫が! 気が変わった。そのまま我を邪魔するな」
仮面が下から前を向いたかと思うと、そう言う。できれば邪魔したいけど、僕には何もできない。
「ま…て!」
「文美。ごめん。今は諦めて」
「……」
そのまま仮面のやつは消えていった。なんだったんだ?
「とりあえず。今は二人を助ける。戻るよ」
「く……すまない」