第14話~魔法世界~
「ちっ。また変なのが増えた」
「なんですの! この変人失礼野郎は!?」
コニーと合流し、一度全員で時間の中心に戻ってきた僕たち(同じ時間の人だけだから普通に時空は移動できるけど)。なんだかハミーとジオは仲悪くなりそうだ。
「ん?ヒューズが見当たらんの。こやつに合わせて一番心配なやつなのだが……」
そういえばハミーには言ってなかった。ヒューズの外見がアレなことを。未来人ってのは教えたが。
「おいつなら忍者と特訓してるぜ」
ジオが言う。だかやっぱり机から出てない。まあそれは無視して、ウォーがいる部屋へ行く。
「お? 帰ってきたか。なんか新しいのもいるが……。まあいい。それより、このウォーってやつ。かなり強いぞ」
「当たり前だ。拙者は闘いの神であるからな」
部屋に入ると、あきらかに熱気がこもっていた。疲れの様子からしてヒューズの熱気だろう。ウォーはまったく疲れていない。
「……なんですの? この緑色とコスプレ人間は」
ハミーが不思議そうに言う。まあ無理もないが、ヒューズに驚かなかったことは意外だ。
「ヒューズ。こいつは文美の仕事友達の……」
「エーリッヒ・ハミーですの。あと、お姉さまとは友達ではなく、もっと親密な……」
「うん。わかった。馬鹿なんだな」
ヒューズ。話がはやくてとても嬉しい。そんな感じで話していると、ウォーが。
「うむ。面白い。新入りのやつも特別な力を持っている。さしずめ、偶然この騒動に入ってきたとは違うだろう。ゲザラスのせいで寄せ付けられたのだな」
色々言いたいことはある。特別な力ってのと、ゲザラスのせいってやつだ。まず聞くのは、
「ウォー。まず、ハミーにある力を教えてくれない?」
多分これのことも関係してるなら、こっちを聞いておいたほうがいい。そう判断した。
「そうだな。簡単に説明すると、弓矢女とはまた別の力を持っている。ある感情をパワーに変える力だな。だがまだ不完全だ。同じく魔法世界へ行くがいい」
文美にも特別な力があるんだっけな。で、魔法世界って、あの扉の魔法って書いてるとこに行けばいいのかな?まあ、次に聞くのは、
「あと。ゲザラスのせい……って?」
「お前は随分と踏み込むな。まあいいだろう。もともと、お前たちがこうやって時間移動できるのもゲザラスのせいだ」
「何!? そうなのか?」
コニーが反応する。
「ああ。まあ、私が確認した分は。一番最初の移動は運がよかったのだな。ゲザラスとは関係なく、偶然時空が歪んだ瞬間に移動できていた。だが、その後はゲザラス誕生の影響で時空が歪んだおかげだ」
つまり。最初以外の時空移動はゲザラスのせいってことか。
「そして、そのゲザラスの時空歪みによって、ほんの一部の人間が、他世界との自分と重なり能力の可能性を得た。その一部のやつらが、この騒動に巻き込まれる。ゲザラスの波動をうけてしまった者たちだな」
ゲザラスの波動。ってのは、つまりゲザラスが起こした時空歪みのことなのか。
「ちなみに、そこのメカニックは能力を得てないがゲザラスの波動を使って発明したものがあるだろ?そこの緑は、ゲザラスの攻撃のせいで生まれたろ?そういうのも巻き込まれるのだ」
別に能力外でも波動はあるのか。
「そしてそこの小太りだが……」
「おお! ついに僕にも特別な何かが!?」
ワクワクテカテカ
「何もないな」
へ?
「おそろしいほどなにもない。前も言ったが」
お?
「ゲザラスの波動を受けた形跡もなければ、ゲザラスの力を使ったこともない」
あれ?
「ただ単に首を突っ込んだようにしか見えん」
のォォォォォゥッ! 結局一般人かい!
「それにしても。私にも特別な力があるのですね。これでお姉さまを守れる力が増えましたわ!」
ああ……ハミー嬉しそう……
「そうか……。なら、次はその魔法世界に行くといい」
コニーが持ってきたアーマーを整備しながら言う。
「そうか。なら……ハミーと一緒か……」
「お姉さま。なぜ嫌そうな顔をするのですの!?」
そりゃなるだろ。
「だったら、次はヒューズと文美とハミー?」
僕はコニーと留守番か。
「いや。本当にすまないがヒューズにはまた残ってもらう」
あれ? そうなの?
「ちょっと力仕事があるんだ。全然外に出られなくてすまないヒューズ」
「いや。俺はもうちょっとウォーと戦いたいし。いいさ。康雄、二人を見張っとけ。間違いのないように」
え。見張っとけって、まあほっといたらやばそうな二人か……たしかに。
「ちぇー。折角お姉さまとお二人になれると思ったのですに……」
「康雄。予も一緒に来てほしいぞ。ハミーの件が主にだが」
はいはい。わかりましたよ~
「決まったか。どうたらお前らの世界におでん味アイスはなかったようだな。魔法世界でも探してみてくれ」
まだあきらめてなかったの? あっても買いたくないな。
「確か。魔法:あり。と書いておいた。一分の調査であると一瞬聞いた。確かめてくれ」
あるんかい。
「あ。それと康雄」
行こうとするとコニーにも呼び止められる。
「何?」
「俺からもお使いだ。ゲザラスについてのことと、酒を買ってきてくれ」
うん。え? ゲザラスはわかるけど。酒?
「魔法世界なんだ。きっと珍しい酒や美味そうな酒があるだろ?なかったら、こっちにはないビールやワインでもいい。酔えるやつを頼む」
こいつ、どこでもエンジョイしようとするな。ま、どぶ水氷よりはいいな。
「わかったよ。あったらね」
そういって、部屋を出て、扉のある部屋へ行く。
「ここだな。康雄。ハミー準備はいいか?」
「大丈夫っす」
「いつでもいいですわよ」
僕とハミーが言うのを確認すると、文美は扉を開いた。そのまま真っ白の世界へ。
「ふむ。ここが魔法世界か。随分と狭いな」
「あれ? ここどこかで見た気がすますわ?」
「違うよここトイレだよ。男性用」
ばっちりトイレ(個室)だよ。なんでこんなとこに……
「大変なとこに出たな。出るとき大分見られたぞ」
「野郎達の汚い目でお姉さまが穢れてしまいますわ」
ハミーは見られるもの嫌なのか。
「しても。外見はあまり変わらぬの」
文美もそういうとおり、建物も普通に高く。車も(若干浮いてる)走ってる。空飛んでる人もいるけど少数。まあ予想はしていた。
「さて。どこに行けば情報が……」
「この世界にも情報屋はいますの?」
そこもドイツ語か。でも情報屋ってのはいいかもな。
「そういえば。この世界の僕たちっていないの?」
「いても会えんぞ。前にコニーから聞いたのだ。別世界では自分に会うことは不可能に近いと」
またコニーお得意の理屈かな? でも、あえないのか。魔法が使える僕ってどんな生活してるのか楽しみだったのに。
「ん? ほ~」
ちょっと歩いていると、変な人に呼び止められた。
「お前たち。珍しい格好してるな。しかも魔法を持っているのに身についていないと」
珍しい格好と言われて気づいたが、確かに周りの人は少し服が違う。それを見抜けるとは……こやつ、やりおる!
「ほう。主、予たちの力が見えるのか」
「ああ。私の魔法は、相手の魔法を見る力だ。お前さんは炎属性か。かなり強いな。開花すれば凄いことになるぞ」
そう聞いて文美は。
「聞いたか康雄! 予はやはり別世界でも凄かったぞ! どうだ!」
「スゴイデスネー」
こっちの身にもなってみろ。ハミーは獣の目で睨んでらっしゃる。
「そっちの金髪ちゃんは電気属性だな。こっちは姉さんより少し弱いが、使い方次第で炎に負けないパワーになる。それに、電気属性は特定の感情で脳に電気が入って、自分の能力を上げてくれる。かなりいい魔法だ」
「ありがとうですの。その特定の感情とはわかりますの?」
「いや。すまないが私にはわからん。みんな自分で探す。開花したら試せばいい」
ハミーも凄いな。どうせ僕はないんだから……ね。
「驚いたのはそっちの兄ちゃんだ」
え! まさか! 実はすごい能力者!?
「まったく魔力がない」
アァァァーー!
「本当に珍しい。今のご時世、魔力のない人なんて1割にもならん。逆に珍しいぞ」
くしっ……へしっ……結局……か。
「まあ。魔力がほしいなら、ゲザラスの石でも買うこったな。高いけど」
はぅ……ん? ゲザラス!? 聞き返そうと思ったが文美の方が早かった。
「おう主! 今ゲザラスと申したな!」
「え? そうだけど」
「もっと詳しくもうせい!」
まとめると、
・ゲザラスの石。とは、持つと数段階魔力が上がる石。
・高度な魔術師がいないと、掘り出せない珍しい石。今では一般化されてる。
・深い海底にあり、長い年月をかけて海底で貯めた魔力を持ってるとされてる。
・限りがあるのかは不明。だが、今現在ではとりにくいだけで、限りは見られない。
・歴史書にも、石はあったと書かれていて、大昔からあったことは確認されてる。しかし、大昔の人々はどうやって海底まで行ったか不明。
「そうか……」
「お前ら、知らなかったのか?」
「ちょっとありましたの」
「おじさん。ありがとう」
やっぱりこの世界でも、人間に力を与えている。どういうことなんだ?
「それと聞いてよいか主」
「はい?」
「この近くに予たちの魔力を開花させてくれる場所はないか?」
多分これ聞けば変な人と思われるけどしょうがない。聞いたほうが早いのだ。
「それなら、そこに練習場があるよ。魔力があるなら、あとは使い方を知って使い続けるだけ。それだけで上達する。まあ筋トレみたいに毎日コツコツとだけど」
筋トレを同じ扱いかよ。
「わかった。礼を言う」
「ああ。こっちも珍しいかったし。いいさ。んじゃ、また会ったらな!」
そう言っておじさんは歩いていった。いい人だったな。さて、これからは魔力を使うのか。でも、本当に文美は力持ってたな。どうりで人間離れした力を出すわけだ。