第12話~戻ってきた現代~
「うん。ここは確かに2060年。しかも南暦だ。魔族もいない」
「そうか。そかったぞ」
「よかったぁ~」
現代に到着して直ぐに、近くのコンビニに入って日付を確認したコニーがいう。なんとか元の世界に帰れたようだ。よかった……。
「んじゃ。俺は自宅に戻る。スーツを調整したいしな」
「わかった。では、康雄。予たちはどうする?」
スーツを持ってて目立つコニーが言うと、弓矢持って危ない文美が聞いてくる。う~ん。そうだな…。あ。
「父ちゃんだ。あっちの父ちゃんは後で助けるとして、こっちは大丈夫か心配だ。僕の家に行こう」
魔族の世界では、父ちゃんが怪我(だと信じたい)してると思うけど、こっちなら何もなかったはず。せっかくだから会いたい。
「うむ。わかったぞ。ではコニー。待ち合わせなどをどうする。まだ計画もない上、情報もない」
「そうだな。俺は俺で調べるが、お前たちはな……。まあ、何かあったら連絡する。現代なら、康雄の携帯電話も使えるしな」
ちなみに文美は場所を特定されるとヤバイらしいから携帯を持ってない。ということで、コニーと一時的に別れた。
「どういうことだよ……」
家に向かう途中。近所のおばさんに話しかけられた。そこで聞いたことは驚きだった。
『あら康雄ちゃん。お父さん元気?ついこの間交通事故で入院したって聞いたけど……』
父ちゃんが入院? なぜだ? ただの偶然とは思えない。とりあえず、病院に。と思った瞬間。僕の携帯が鳴る。コニーからだ。
『おい大変だ! とんでもねえことがわかった!』
通話ボタンを押すと、いきなりコニーが大声を出してくる。
「こっちだって大変だよ! 父ちゃんが交通事故で……」
『それも知ってる! とりあえず、家まで来てくれ!』
そう言われて電話が切れる。どうしたんだ? 父ちゃんのこと知ってるって……
「ついさっき見つけた。ゲザラスをアインに調べさせていたら見つかった」
と、紙束を渡される。え? これ全部読めと? 見た感じ100枚はあるよ?
結局2ページしか読めなかった。(飽きた)
「ったく……。康雄。ゲザラスが誕生したなら、絶対にゲザラスのいる世界といない世界ができるはずだろ? だったら、魔族の世界にいるならこっちにはいない。そう思った。だが、いるんだ。この世界にも」
呆れ顔で言われる。まあ実際信じられないけど。
「え? いるだって? 馬鹿にすんなよ! 今までそんなものの話聞いたことないよ?」
からかうのも文美だけにしてほしい。
「そうだ。俺も知らなかった。だが、ゲザラスは魔族の方とでは違う形でこの世界にいる」
「違う形とな? それはどういう意味だ?」
文美が珍しく聞いてくる。前を思ったが、あまり文美はこういう話に口を出さない。
「その紙を読めばわかるが、ゲザラスは。こっちの世界では木の名前だ」
……木?
「嘘だと思うだろ? だが、その紙の23ページ目を見てくれよ」
23ページ。ここか。
ゲザラスの木。大昔から存在する大木。世界各地にあり、何千年も前から行き続ける木。その木は他の木とは別で、周りの自然に力を与えていると研究でわかった。その根は地中奥まで続き、地球からエネルギーを取り、それを地上に与えているのではと推測されている。
「な?」
信じられない。ただ名前が同じだけでは……?そう思ったが、ただの偶然とは思えなかった。
「しかも、魔族のいる世界と似ている。あっちでは、魔力に対抗する手段として人間に力を与えてる。こっちは、生きるために必要なものとして自然に力を与えている。どちらも与えている」
「でも。なんで世界を滅ぼすのに力を与えなきゃいけないの?」
「それがわからないんだ。まだ調査を続けるが、流石に現代じゃ限界がある」
そうか。現代じゃなくて未来でも行くか?
「だから。別世界にも行こうと思うんだ」
へぇー。別世界ね。そりゃタイソウなもので…エェェェッェ!?
「別世界!? なんでまた!?」
「言ったろ? こっちでは情報が限られている。もしかしたら、別世界に有力な情報があるかも知れん」
そんな……。やっと落ち着いたと思ったのに……。いや落ち着いてないけど。
「だが。やはりそれには準備も必要だ。てことで、長旅になる。お前らも済ませることは済ましとけ」
そんな急に言われても……。済ます?
「コニー。それはもしや……」
え? 何? 文美。どうしたの? そんな悲しい顔して。
「ああ。帰ってこれない可能性もある」
「はぁ!? 帰ってこれない!? なんで!?」
「康雄。今なら間に合う。残れ。危険な旅になる。俺たちだって、生きていられるかわからん」
え……? いきなり帰れないって言って……次に残れ? 意味わかんないよ……?
「康雄。これは主のためを思って言ってるのだ」
文美まで……。なんでさ……
「なんでなんだよ……」
「康雄……」
「すまない……」
まただ……
「まただよ……。僕を一人ぼっちにしてさ……。母さんもそうだった……。学校帰ったらすぐ病院行って……。ずっといたのに……。学校行ってる間に死んじまった。なのに幸せそうに……眠ったように……」
「いつも一人だった。父ちゃんも遅くまで帰ってこないし。二人は研究と修行でいない。何にもない時間だった。今もそうだ。二人は行っちゃって、僕はまた父ちゃんの病院通い……」
「それは……」
「どうして……こうも一人なのかな……。いっつも…僕は」
下を向いていると、涙が床に落ちる。涙をずっとこらえたが、もう限界だった。はぁ……。こうも泣き虫じゃ……やっぱり置いていかれちゃうな……。そう思ったとき、両肩に何か温かいものが乗った。
「康雄」
「康雄よ」
涙まみれの顔を上げると、二人が僕の肩に手を置いていた。
「康雄。お前は一人じゃない。残れなんて言って悪かった。お前は、自分で行くって決めたんだもんな」
「そうだ。予は知っている。主には誰にも負けない。強い勇気がある。一人ではないぞ。これからも、ずっと」
コニー……文美……。二人は一息つくと、声を揃えていった。
「なんてったって俺は。泣き虫なのに頑固なお前の。親友なんだからな!」
「なんと言おうが予は。よく泣き勇気があるお主の。親友なのだからな!」
二人共……。それを聞いた僕は、涙が止まらなかった。胸がジーンと熱くなり、同時に安心も生まれた。不思議な感じだった。
少し落ち着いた頃。次の話に移った。
「さて。康雄も来るし。俺は更にアーマーの強化をしなきゃな。文美。お前は?」
「予も。主を守るため、少しばかり修行をせねばな。康雄。一緒に来い!」
「うん! コニー。ありがとう。文美、ありがとう。僕、二人と一緒にいる。役に立たないかもしれないけど、応援してる」
きっと、戦うメンバーの中で、応援係り。というものはそうそうないはずだ。かっこ悪い。それでも、僕は誇りに思った。勇者の応援係りなんて、滅多にできないからね。
そうして、またコニーと別れた。コニーの家を出たとき、文美が言う。
「さて。修行をするには山にでも登るか」
まあ軽く山に登るって言ってほしくないけどさ。
「ねえ、それより父ちゃんを……」
そういいかけたとき、文美の顔が変わる。
「……!」
何か信じられないものを見つけたような表情。どうしたんだ?
「文美。大丈夫か?」
「……まさか……場所が特定された? 名前も変えた……発信機? ついてない……でもこの気配……」
さっきから小さな声でつぶやいている。なんだか緊急事態のようだ。
「文美。なんかわからないけど落ち着いて。見つかりそうなら隠れようよ」
「ああ。康雄。大変だ。予の場所が特定された。急いで隠れる」
やっぱり。敵はどっかの国の刺客か? 走って隠れられそうな場所を探しながら考える。
「……ここまで来れば……」
結局近くの山に登って洞窟に入った。疲れた……
「おい康雄。念のため携帯の電源を切っておけ。本当は捨てたいが、それではコニーとの連絡がつかん」
それって、僕別行動したほうがいいのかな?でもそれじゃ文美と連絡が……。悩んでいると、
「! 近い!」
そう小さな声で言う。確かに、足音が聞こえる。洞窟の更に奥まで行く。
「康雄。大丈夫だ。いざとなったら……」
かなり真剣な顔だ。いったいどんな敵が?
足音がすぐそこまで来る。見つかる……!そう思ったとき、人影が見えた。そしてその人影は、文美の方に向かって襲い掛かる。
「くそっ……」
「文美っ!」
助けようとしたが駄目だった。その人影は文美と接触。戦闘が始まる……と思ったら。
「お姉さま! やっと捕まえました! さあ! 私と一緒にあまぁ~い夜を過ごしましょう!」
……は?
「やめいハミー! 予は何度も拒否したはずだ!」
「いいえ! 私のお姉さまへの愛は簡単には崩れないのです! ムフー!」
文美の上に乗っかっている少女。長い金髪を結ばず垂れ流して、外見は……絶壁。この会話からして……そうか。
「文美。一日だけの付き合いは危険なんだよ? もし何かあったんなら責任取らないと……」
「主までそう申すのか!? 違うぞ! こやつから関係をだな!」
「いいえ! そう。一日だけの付き合い。それでも私は……お姉さまを愛し続けると心に決めたのです。そう……永遠に!」
やっぱりね……。文美も駄目だな~
「むむむ……。ええい! ちとは予の話を聞けぇぇ!」
その叫びは洞窟おろか、山の麓まで響いた。
新キャラ登場