表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/30

第1話~橘康雄という男~

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「俺も。俺も、連れて行ってくれ。お前たちの道に」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「某は侍でござる。少ござらぬとも、それがしが戦うまでは…」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「そいつは悪いやつなのか?ならば、私はそいつを懲らしめる」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

わたくしは。お姉さまを守るだけですわよ?」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「康雄君。うちの愛は止まりませんよ」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「俺の親友は……。俺を信じてくれるか……?」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

康雄やすおは……。お主のこと!」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


……

「……康雄! …康雄…! 康雄!」

 僕の名前は…確か橘康雄たちばなやすお。ということは、この名前は僕の名前…。僕はゆっくりと目を開ける。眩しい光と、見覚えのあるような天井が目に映る。

「康雄。起きたか。よかったぁ…」

 眩しい光が目に入るのと同時に、むさくるしい髭の顔が視界に入る。この顔は…、俺の幼稚園からの親友。クルーズ・コニーだ。

「覚えているか? 俺の顔。大丈夫か?」

「覚えているさ。忘れようとしても。お前が、女と酒が大好きで大天才科学者だってこととかさ。」

「はっはっは。そこまで覚えていれば上出来だ。」

 髭の塊とは言いすぎだが、そんな顔が笑う。懐かしい顔のような感じがする。

 そういえばここはどこだろう。自分の家ではないことは確かだ。こんな広い部屋、僕は持っていない。

「すまんコニー。僕、ここがどこで、何でここにいるかわからないんだ。」

「そうか。まあ無理もない。一瞬だったからな。お前、子猫を助けようとして車に座布団にされたんだよ。」

 そんなことが…。確かに、腹のあたりを見てみると手術の痕がある。

「それで、近くにいたこの俺が!親切な大親友が!俺専用の腕のいい医者の病院に連れて行ってやったのよ!」

 「えっへん」と言わんばかりの顔と腕組をして言うコニー。ま、どうせ病院の料金はあいつが払うんだろうから、いいけど。にしても、どうりで見たことあると思ったら病院か……。

「ああ。助かったよ。ありがとう。」

「な~にを。親友として当然だろ!ま、そこまでお礼がしたいなら拒否はしないけどなぁ~はっはっは!」

 やべぇ…すっげぇ殴りてぇ。

「といっても。結構お前の怪我。ひどかったんだぞ?あの先生方が苦難する怪我とはな…。ありゃ、普通の病院じゃ助からなかった。お前の給料じゃ死んでた。俺もここまでしたかいがあったってことよ。」

 そんなにやばかったのか。全然記憶がない分恐ろしい。

「ありがとう。父ちゃんも無職。俺も出社停止で金なかったんだ。助かったよ。」

「いいんだ。これくらいの金。俺の一か月分の給料の半分にもならねえ。」

 やべぇ…すっげぇ殴りてぇ。

「それにしても。何でお前。そんな悲しそうな顔を?」

 悲しそう?

「ああ。それは多分。今見てた夢のせいだと思うよ。」

「夢か?」

 コニーは近くにあった椅子に座りながら言う

「ああ。内容は覚えてないが、何だか…悲しい夢だった。」

 少ししか覚えていない。少しといっても、夢を見た…という事実くらいしか覚えていないが。

「ふーん。そうか。お前も悪夢で苦しむんだな。」

「お前は悪夢なんて見なさそうだな。頭の中までハッピーなお前は。」

「褒めるなよぉ~」

 褒めた覚えはないがな!



 コニーが帰った後。夢について思い出してみた。

「あの夢……なんだったんだ?」

 長く、暗く、悲しい夢だった。でも、よく覚えてない。忘れてはいけないような……。でも、思い出せない。不思議な夢だったな…。

 ここの病室。なぜかここも懐かしい。でも来たことないはず。訳がわからない。



━━━━━━━━━━━━━━次の日━━━━━━━━━━━━━━━

「もう退院していいのか。今の医学も進化したもんだな。」

「そりゃな。なんせ今は南暦2060年だぜ?癌だって一日で完治するほどだ。怪我なんて蚊を叩くより簡単だ。」

「俺の怪我はだいぶ苦労したようだが?」

「そうだったな。あれは…まあジャムビンの蓋を開けるくらいか?」

「お前。その基準どこにあるんだよ。てかジャムビン開けるのそこまで大変か?」

 2060年にもなってもジャムビンの蓋が固いのが苦労。


「そういえば。今日は俺の新発明を体験する約束だったが。大丈夫か?」

 そうだった…。確かジャンケンで負けた罰ゲームで…。できれば大丈夫じゃないと言いたいが…

「男の約束に二言はない。やってやるぜ。」

「うん。それでこそ俺の実験d……親友!」

「今実験台って言おうとしたね。絶対言おうとしたね。」

 こいつ人を最低な目で見ていやがる。


━━━━━━━━━━━━━━橘康家の前━━━━━━━━━━━━━━━

「さて。財布、保険証、携帯、鍵、でいいかな。保険証は実験で失敗した時に病院行ったときに…。」

 そう持ち物を確認して家をでる。コニーは先に発明品とやらがある実験室に行った。やれやれ……。家にも父ちゃんいないし。一人ぼっちだ~

「康雄。どうした。そんな顔をして。」

 と、鍵を閉めていると後ろから声が。振り向くと、僕の二人目の幼馴染の姿があった。

文美ふみか。こっちに戻ってたんだな。なんでもないさ。ちょっと今から行く場所が嫌なだけだ。」

 長い髪の毛を一本に束ねている女性は、草薙文美くさなぎふみ。こいつも幼稚園からの親友。なぜか昔から言葉遣いが特殊だ。よくコニーと文美と僕で遊んでいた。二年前仕事で海外に行ったはずだが。戻ってきたらしい。

「ああ。つい二日前に帰ってきた。にしても…これからと? 何だ? 病院でも行くのか?まだ注射怖いのか?」

 ニヤニヤした顔で見てくる文美。注射ね~。それで済んだら嬉しいもんだ。

「病院はもう行ったよ。もっと嫌な場所だ。実験室っていう…」

「ほほう。実験室…というと。コニーだな? また実験台か! はっはっは! お前も大変だな」

「うるせいわい。お前はいいよな~。国の裏で働く天才の駒ですものな~」

 彼女の技術は神の領域級だ。幼稚園から弓道を習い、そこを小学校入学までマスターすると独自流で弓矢を超越。その腕を見込まれ、今や狙った場所へ手紙や物を届ける裏の駒。

「そうでもないぞ。あれは結構命がけなのだぞ。」

 何を…。2キロ先の僕らには全然見えない的に真ん中当てするくせに…

「そのような顔をするな。そうだ。予もその実験とやらをしてみたいぞ。いつも使われるだけだからな。久しぶりに使ってみたい。新発明を。コニーにも会いたいしな」

 YES! 身代わりGET!




「おう?なんだ。文美も来たのか。というか生きていたのか。てっきり死んだのか…」

「主の脳天を打ち抜くことも可能だ」

「サ、サーセン…」

 彼女愛用の弓矢を引く文美。彼女ならやりかねない。

「そ、それより。これが俺の新発明だ」

 と、布をかぶせてあった大きな物体を見せる。布が被ったホコリを飛ばす。そうして見えてきたのは、人が一人入りそうな透明カプセルであった。大きな台の上に設置されていて、その台は近くのコンピューターに大量のコードで繋がれている。

「なんだこりゃ? 新手の土管か?」

 今にも赤い帽子の髭おっさんが出てきそうだ。

「土管か……。似てるかも……な?」

「ほほう。似ているとな。して、どのようなものだ?」

 コニーがカプセルの周りをまわりながら話す。

「これは、空間転送装置だ。ここに入ったものを別の場所に瞬間的に移動できる。一瞬でだ。だが、それは物でしか試してない。だから、人間でやってみたいんだ。」

「そんな危ないものを親友にさせようと…」

 最低だとつくづく思う。

「大丈夫だ。失敗したとしても移動しないでその場に留まるだけだ。安心して入れ」

 く…。信用できなさすぎる!

「康雄。お主の役目。予にくれぬか?」

「ほへ?」

 文美さん今なんて?

「面白そうだ。その実験。予にさせてもらおう」

「え。マジで?」

 そりゃたしかに身代わりゲットだとは思ったけど。まさか本当に

「で。でもいいのか? 絶対危険だぞ?」

 すると文美は「ふふん」と笑って

「安心せい。予は幾つもの場を乗り越えた。こんなものへでもな…」

「あ。お前なら失敗してもいいな」

 一瞬だった。コニーに向けて文美が弓の弦を引くのは。コニーは手を挙げて「スイマセン…」と。


「康雄!よく見ておれよ!」

 カプセルの中から叫ぶ文美。いや~、可愛いな。怖いけど。

「よし。転送を始めるぞ」

 結局ボコボコにされたコニーが操作台の前に立つ。彼曰く「弓撃たれるよりはよかったさ。体中いてぇ」らしい。

「スイッチオゥン!」

 ボタンを押すコニー。すると、カプセルの中が光出す。

「見よ! 予が人類初めての転送者となるのだぁ!」

 光が増していく。とうとう文美も見えなくなった。ただ声だけが聞こえ。

「見ておるか!見ておるか!」

 と聞こえる。ちなみに僕は暇だったんで時計の秒針見てた。わ~3時33分33秒だ~

「ん?分子の動きが妙だな…。……! やばい! 康雄! 目を塞げ!」

「はい!?」

 コニーが叫ぶ。反射的に目を抑えたが…何が…

「うぐっ…」

「なっ…!」

 手で塞いでいてもわかった。手とまぶたの間から漏れる激しい光。これをまともに見ていたら目をつぶしていた。しばらくするとあの光が消える。目を開けると、カプセルの中に文美の姿はなかった。

「あ…あれ?文美は?」

「おかしい…転送先は確かに部屋の中にした…。この反応は…」

 コニーがぶつぶつとつぶやく。言うならはっきりと言ってほしい。呟くならフォローしてやるからあっちでやれ。

「やばいことになった。文美はどこか知らんが遠い場所へ転送された。」

「何!?だったら今すぐ迎えに…」

「わからん。どこにいるのか。今すぐ転送すれば、転送の軌跡が残っているから行けるが…」

「……わかった。転送しよう。文美を知らん場所へほおっておけない。」

 そんなことすれば僕も帰ってこれないかもしてない。だけど、文美も一人にできない。

「…。わかった。軌跡が残っているのも2分が限度だ。急げ。」

 はっ! 準備なんて最初からできてらぁ!

「俺もあとから追う。気を付けろ。」

「ああ。まかせな!」

 カプセルの中に入る。カプセルを閉めると、太っているせいか少し狭かった。しかし、外の様子はバッチリ見える。

「よし。いくぞ!スイッチオゥン!」

 お前はその言葉がないとスイッチ一つ押せないのか。前も部屋の電気消す時言ってたし。 そう考えていると、段々と意識が遠のいていく。

橘康雄は時を渡るようです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ