おばあちゃん
私が医療事務員だったその病院で、祖母は通院していた。大腸癌で、入院となり。
院内で、息を引き取った。
その時私は別場所に勤めており、時折見舞いに行っていたのだが祖母はいつも私のことを看護師達に褒めていたのだという。
通夜。
高熱を出した私は、斎場にて寝込んでいた。無理しなくても良いからと母は自宅に戻るように言ってくれたが、私は斎場で一夜を過ごすことにしたのだ。
呻きながら市販の熱下げ薬を飲み、母が持ってきてくれた毛布に包まる。眠りに入った私は、声を聴いた。
「心配だねぇ、身体が弱いからねぇ。大丈夫かねぇ……」
あれは絶対に、祖母の声だった。頭を撫でてくれた気がした、目が覚めたら熱は下がり、すっかり体調を取り戻した私は祖母の遺影を見る。
書道教室に、珠算教室を経営し、詩吟に剣舞を私に教えてくれた祖母。若き頃に小説で賞を戴いたことがある、才色兼備であった祖母。
祖母の棺には大事にアルバムにおさめてあった、私が県の大会で優勝した詩吟の新聞記事に写真、誕生日に贈った衣服などが入れられた。
落ち着いた後日、一番最初に習った詩吟を詠ってみた。優勝した際に詠ったものだ。別れの歌ではないが、これが最も自身の中でしっくりきた。
祖母は、今の私をどう見つめてくれているのだろう。まだ、心配していてこの世にとどまっているのだろうか。ならば孫の私は……何をすれば良いのだろう。
私が魂の存在を信じている理由として、こんな祖母の話もあったりしたわけである。
詩吟に剣舞、漢詩を再び始めようか。また、舞ってみようか。