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私から弟に渡ってしまった、怨念のネックレス

 院内での話を続けようと思ったのだが、やはり在り来たりな話になってしまった。何か新しい話を友人から聞くまで、別の話をしようと思う。


 N県に、有名な神社がある。変わった名前で一度聴いたら忘れられない、口コミで広がった山奥にある非常に行き難い神社だ。

 とある冬、弟が友人一同とそこへ行った。友人の一人が毎年必ず参拝に行くということで、今回はその子が新しい職場に就職する為、報告に行きたいとのこと。一台の車で定員ギリギリ、八人で出向いた。

 雪に埋もれた神社までの道のり、辿り着くと白いサムイを来た老人が「雪が酷いから本日はもう閉めるよ、危ないから早くお帰り」と告げた。

 長い髪は清潔とは言えず、弟は神社で働く下働きの人だと思ったらしい。

 ともかく、G県から出向いている弟達はここまで来たので参拝をした。そこへ再び姿を現した先ほどの老人。

「G県から来たのかね! こんな雪の中を! ふむ、何かの縁だろう、来なさい」

 その、老人こそこの神社の神主様であった。

 弟達は案内されて一つの部屋に入ったのだが、そこでいきなり神主様が声を荒げた。

「君! 何を持っているのかね、見せなさい。そう、その奥の君だよ」

 一番最後に入室した弟を神主様は呼びつけた、胸に禍々しいものがある、という神主様に弟は顔を引きつらせる。コートの下から取り出したものは、銀のアクセサリーで有名なブランドのネックレスだ。

 黒い革ひもに、ダガーと百合のモチーフ。あのブランドである。

「こんな危険なもの、どこで手に入れたのかね!? よく今まで無事だったね、祓うから貸しなさい」

 友人達に見守られながら、弟はそれを手渡した。神主様に浄化されたそれは、もう身に着けても大丈夫とのことだったが、弟は硬直したままだった。

「ひ、人から貰ったもので。自分で買ったわけではないのです」

「そうか……久しぶりにそこまで怨念が染みついたものを見たよ。銀は身を護ると同時に、悪い気も入りやすい。持ち主に問題があるね。気を付けなさい」

 弟は言えなかった、それがどのようにして自分のもとに来たのかを。

 コートを着ていて、そのネックレスの存在すら知らず、まして最後尾にいた弟のそれを指した神主様はやはり噂通りの人らしい。

 

 さて、問題のネックレス。

 弟は言えなかった、それは私が所持していたものだった。だが、私が買ったわけではない。、私が元彼から貰ったものだった。

 元彼はそのブランドが好きで、数種類持っていたのだが、付き合い始めてすぐにその一つを私にくれたのだ。

 かっこいいのだが、私には似合わない。

 別れてから、それをどうすべきか悩んでいたら弟が「売ったり捨てるくらいなら、くれ」と言ったのであげた。

 弟は喜んで毎日それを身に着けていた、高校を出て初めて手に入れた高級ブランドである。欲しかったモチーフだったのだ。

 元彼が普通の元彼だったらよかったのだろうが、そうではない。

 私から別れを告げたのだが、その後。ストーカー状態になり私を殺すだの、親しい人達を殺して苦しめるだの言い始め、警察やら弁護士やらにまで事態が広がる羽目になった元彼なのだ。

 霊ではないのでその時の話は省くが、余程霊より性質が悪いと私は思う。

 神社から帰宅して、弟が一言。


「これ、ねーちゃんが持っていなくてよかったと心底思った。今頃死んでた気がする」


 弟が無事でよかったと姉の私は思ったが、家族全員で元彼から貰ったと思われる物を全力で処分した。タグのついた熊の某ぬいぐるみはフリマで売ってしまったのだが、引取先は無事だろうか。

 強いて言うならば、まだ実家に元彼に買ってもらった太○の達人コントローラーがあるが……それは大丈夫だろう。

 

 その神社に、弟が行ってくれたのはきっと、守護霊様のお導きに違いない。そうに違いない。

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