永遠の愛を
生まれ変わる最中、まどろみの中で夢を見ていた。
それは燃えるような復讐心ではなく、ジュリアと過ごした甘い日々だった。
――まるで、走馬灯でも見ているみたい。
状況はまるで逆のようにも見えるが、ルキア・シェイドと呼ばれていた時代の記憶が蘇ってくる。
「わあ、綺麗!」
ヴォトゥム・ルクス教会を初めて訪れたジュリアは、思ったことを素直に口へと出した。
――ヴォトゥム・ルクス教会。
そこで愛を誓い合った二人は永遠に結ばれるという言い伝えの残る教会。多くのカップルにとって盛大な死亡フラグにしかならないような伝説も、付き合ってばかりの者たちにとっては非常にありがたい言い伝えに映る。
ヴォトゥム・ルクス教会の内部は、まるで光魔法にでも包まれたかのような美しさだった。色とりどりのステンドグラスから差し込む光が、石造りの床に虹色の模様を描き、静謐な空間を柔らかく彩っている。
祭壇の奥には、愛の神ルクスの像が穏やかな微笑みを浮かべ、訪れる者を優しく見守っている。教会へと入った瞬間、何もかもが恋人たちを祝福してくれているような雰囲気があった。
ルキアはジュリアの手を握ると、教会の中央をゆっくりと歩いた。二人の足音が石畳に小さく響く。たったそれだけで、この瞬間が永遠に続くかのように感じられた。
ジュリアの金髪がステンドグラスの光を反射して輝き、青い瞳は星のように煌めいていた。ルキアは胸の奥で熱いものが込み上げるのを感じ、思わず手を握る力を強めた。
「ジュリア、こんな場所に来るなんて、夢みたいだね」
彼女の声には戦士らしい凛々しさとは異なる、柔らかな緊張が滲んでいた。
ジュリアは思わずクスッと笑い、ルキアの手を強く握り返した。
「夢みたいなんて、ルキアらしくないこと言うのね。でも……私も、こんな気持ち初めてかもしれない」
彼女の声は少し震えていたが、その瞳はルキアを真っ直ぐに見つめていた。そこには、王女としての気高さではなく、ただ一人の女性としての純粋な想いが宿っていた。
二人は祭壇の前に立ち、互いに向き合った。教会の静寂が二人を包み込み、世界には自分たちしか存在しないかのように思えた。
ジュリアの手を両手で包み込み、深く息を吸った。
「ジュリア、あなたとこうしてここにいることが、信じられないくらい幸せなの。この戦争が終わって、たとえどんな困難が待っていても、私はあなたを愛し続ける」
ルキアの声は真剣で、言葉の一つ一つに想いが込められていた。戦場で鍛えられた強さとは裏腹に、今の彼女はただ愛する者を前にした、脆くも美しい存在だった。
「それってプロポーズ?」
おどけるように言うジュリアの目に涙が浮かぶ。彼女は微笑みながら、ルキアの手をギュッと握り返した。涙を拭ってから、一国の王女は続ける。
「ルキア、私もよ。あなたと一緒にいられるなら、この世界がどんなに私たちを拒もうと関係ない。神様だって、きっと私たちの愛を祝福してくれるわ。だって、この気持ちは、絶対に偽物なんかじゃないもの」
二人の視線が絡み合い、そこだけ時間が止まる。ステンドグラスから差し込む光が二人を柔らかく包み込んだ。
ルキアはそっと手を伸ばし、ジュリアの頬に触れる。その感触は柔らかく、温かかった。
吐息が唇に触れる。愛おしさで狂いそうになる。こんな気持ちを味わったのは初めてだった。
どちらからともなく、二人は目を閉じる。ゆっくりと唇が触れ合う。柔らかく、温かく、互いの魂が溶け合うようだった。
それは一瞬の出来事だったが、永遠にでも続きそうな深い愛を思わせた。
唇が離れると、ジュリアは恥ずかしそうに微笑み、ルキアの胸にそっと額を寄せた。
「ルキア、約束よ。ずっと一緒にいようね」
「ええ、約束しましょう。たとえどんなことがあっても」
ルキアはジュリアを抱きしめ、彼女の金髪にそっと指を絡めた。教会の光が二人を照らし、この瞬間が永遠に続くことを約束しているかのようだった。
「この幸せが、いつまでも続きますように」
誰にも聞こえない声で、ルキアは密かに呟いた。
――ヴォトゥム・ルクス教会の言い伝え通り、二人の愛は永遠に結ばれるはずだった。
だが、永遠に続く愛など存在するはずがない。
この神々しい瞬間ですら、数多の恋人たちが張ってきた死亡フラグの一つに過ぎなかった。




