戦慄の閨
寝室へ入ると、ディミトリは真っ先にカマルをベッドへと押し倒した。
カマルは抵抗せず、恥じらう素振りでされるがままになる。
「君の国は厳格な宗教国家だったか。だが、ここはセレニティアだ。こちらの流儀で楽しませてもらうよ」
そう言うと、ディミトリは返事も待たずにヒジャーブをまくり上げ、強引に唇を重ねる。乱暴で吸い付くような口付けは、どちらかと言えば性暴力の類いに見えた。
カマルは抵抗せずにディミトリのキスを受け入れる。舌が唇をこじ開け、口の中へと入ってくる。それすらも拒まずに舌を絡め返す。
「真面目な顔をして、やる気十分じゃないか」
ディミトリが嬉しそうにカマルのことをなじる。どんなに貞淑な女でも淫乱に変えてしまう媚薬をたんまりと盛っているのだ。お楽しみのお膳立ては十分にされている。
「君を見た瞬間からずっとこうしたかった」
ヒジャーブとセットになった黒いローブ型ロングドレスを乱暴にたくし上げる。そのまま下着を脱がせると、クズイケメンの英雄はむさぼるように吸い付く。唾液を使ってびちゃびちゃと音を立て、卑猥な音を演出していく。
「あんっ……う、ぁあ……っ!」
カマルが堪え切れないというように甘い声を漏らす。媚薬が効かされているのか、たかだか舌でつつかれているだけなのに押し寄せる快楽が止まらない。
勢いに乗ったディミトリは、そのまま汚らしい音を立てながら割れ目を舐めて吸い続ける。そうすると、ますます温い水はそこから溢れていった。
「それじゃあ、楽しませてもらおうか」
仰向けで息を切らせるカマル。まだまだ序の口だ。この程度で果てられては困る。本当の俺を思い知るがいい。気が大きくなるとそんな言葉ばかりが脳裏をよぎっていく。
先端を割れ目にあてがうと、そのままズブズブと沈めていく。カマルがか細い嬌声を上げて、ヒジャーブの上から自分の口を押えている。
――なかなかいい眺めじゃないか。
そう思ったディミトリは腰を振りはじめた。数回だけ軽く腰を振ると、その後はどんどんスピードが上がっていく。
「あっ……! うぅ、あああ……!」
堪え切れないカマルが思わず声を上げる。
日頃から数多の女を抱いてきたディミトリの抽送は並みの速度ではない。ディミトリは国政の能力こそカスだったが、ベッドの上では非常に優秀だった。
桃色の輪が現れ、それに包まれると力が湧いてくる。トップスピードでの腰ふりをいくらでも続けられそうだった。
「どうだ、私のは最高だろう? さあ、俺の偉大さを称えろ!」
ディミトリは腰を振ったまま両手を広げて叫ぶ。
女は征服してこそ意味がある。自身のモットーをベッドの上で体現する。それは今のジュリア相手には成しえない快感であった。
桃色の光に祝福されるように、絶頂が近付いてくる。とろけそうなほどに熱くなった接合部。快楽に任せてそのまま腰を振り続けた。
「うっ……」
ディミトリの意識が白くなる。絶頂に達して、筋肉質な体が激しく波打った。
カマルの中に、温かいものが注ぎ込まれる。
それはびゅるびゅるとしばらく脈動を続け、肉の壁を叩き続けた。
息を切らせながら、カマルと目を合わす。潤んだ瞳は、感じたことのない快感に戸惑っているかのようだった。
「最高にいい締まりだった」
そう言ってディミトリはベッドから立ち上がろうとした。
――だが、カマルの両足はいまだにディミトリの下腹部付近をガッチリと組んだまま離れなかった。
「……おい、もういいんだぞ」
「私は、まだ足りません」
「……そうか。君も予想以上に好き者だな。だが、それぐらいでいい。休憩を挟んで、第二ラウンドを始めようじゃないか」
「休憩? 笑わせないで下さい」
「……は?」
予想外の言葉が返ってきたせいで、ディミトリは膝立ちのまま固まる。
それと同時に、とても嫌な予感がしてきた。
ふと見やると、先ほどに少しだけ現れた桃色の光が浮かんでいる。それこそ盛り上がっている最中は気にならなかったが、冷静に考えればおかしな現象が発生している。
桃色の光に包まれると、力を失ったはずの性器が再びメキメキと固くなっていく。そこには自身の力で回復したというよりは、強制的に硬化させられたかのような違和感があった。
「ちょ……待て、お前……一体、何をした……?」
「何もしてなどいません。ただ、私はディミトリ様との一夜をもう少し続けたいだけ」
口元の隠れたカマルが目だけ笑うと、再び固くなったそれは吸い込まれるようにカマルの中へと引き寄せられていく。
「待て、待て……おい!」
「いいえ、これ以上待ちきれません。このままもっとお楽しみといきましょう」
艶然として微笑むカマルに、ディミトリは恐怖を覚えはじめた。
強力な媚薬を盛られた上に、人知を超えた絶倫であるディミトリの終わりなき抽送に耐え抜いただけでなく、さらにその上を行く女。それは明らかに、人間の領域を逸脱しているように見えた。
「お前は、一体……」
その言葉は下から来る律動によって遮られる。
「楽しみましょう。夜はまだ続くのですから」
ディミトリの冷静な思考は、脳内に溢れる快楽物質の波に呑まれていく。
「女に秘密は付き物ですよ」
カマルがヒジャーブ越しに微笑む。その妖艶な笑みには、どこかぞっとするような冷たさが隠されていた。




