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新入りの上玉

 ――セレニティア共和国の都、グランド・セレニス。

 ディミトリ・アドルテリオスは自室の豪奢なベッドに腰を下ろし、薄暗い部屋に響く女たちの嬌声を聞きながら満足げに微笑んでいた。

 戦争が終わった頃には毎日のようにジュリアとベッドを揺らしていたが、最近の「女傑」っぷりのせいで、すっかり異性として彼女を見ることが出来なくなっている。

 そのせいもあり、自身の容姿も活かしつつ、あちこちから美女という美女をかき集めては享楽に耽る毎日を送っている。本来であれば帝国を出自に持つ戦犯として断罪されているはずが、容姿の良さと圧倒的な強運で現在の生活を続けている。

 スキア率いる暗殺者集団の報告はまだ届いていないが、国内でも指折りの戦闘力を持った彼らが集団でかかればひとたまりもない。結果を聞く前からルナ・シャドウズが死に、漆黒の森は焼かれたと確信していた。

「ルナ・シャドウズか。所詮はダークエルフの小娘だ。女帝の意志に逆らうなど、無謀だったな」

 ディミトリは葡萄酒のグラスを手に、窓から見える夜景を眺めた。空には雲一つなく、月が奇麗だった。

 ディミトリはグラスを揺らしながら、未来についての考えを巡らせる。

 この先、ジュリアの暴君ぶりに民衆の限界が来た時、セレニティアの権力構造は大きく揺らぐ。いつの時代も、調子に乗った権力者は最終的に断頭台へと上がると相場は決まっている。彼女はバカだから、調子に乗れば乗るほど自分が死へと近付いていることに気付きもしない。

 いつの日か、彼女の振り撒いたヘイトは閾値を超える。

 その時に、ディミトリへ好機が訪れる。

 暴君でしかなくなった女帝を闇に葬り、敵国の将であった自分がセレニティアの皇帝と成り代わる日が。

「ガリオス、俺はお前の夢を引き継ぐぞ」

 彼はかつての盟友の名を呟き、微かな笑みを浮かべた。

 この世界の覇者になる――かつて盟友とともに誓った果てしない野望。それが今になって叶うところまで来ている。

 ガリオスは圧倒的な強さを持っていたにも関わらず、肝心な時に病魔に伏したところを叩かれた。あの不運さえなければ、世界を支配するのはガリオス率いるインサニティ帝国だったはず。

 だが、過去を悔やむ必要はない。

 今のジュリアはただの愚かな暴君に成り下がっている。タイミングさえ間違えなければ、いくらでも足をすくうことは可能だ。配下の者たちも、ジュリアが死んだら喜ぶであろうと思えるほど虐げられている。

「さて、今日も皇帝就任の前祝いをしておこうか」

 符牒を呟くと、すぐにドアをノックする音が響く。

「入れ」

 それだけ言うと、ドアが開いてぞろぞろと人が入ってくる。その誰もが、見目麗しい容姿を持った美女ばかりだった。

 毎夜運ばれてくる供物――国中から集められた女たちが、熱を帯びた視線で部屋に入ってくる。集められた女たちには、もれなく媚薬が盛られていた。供物は誰かの人妻も珍しくないが、薬が快楽と興奮で倫理観も道徳も忘れさせてくれる。

 ディミトリはグラスを置き、女たちを品定めするように眺めた。

「今日もなかなかの上玉だ」

 クズの英雄は上機嫌だった。薬が効いているせいか、何人かの女たちはモゾモゾと閉じた足を動かし、溢れ出しそうな欲望を抑制している。

 女たちを眺めるディミトリの視線がふと止まる。褐色の肌を持つ、異国情緒のある美女に目を奪われる。

 黒いヴェールに身を包み、ヒジャーブで顔を隠した姿は、他の女たちとは異質な気配を放っていた。

「新入りか」

 ディミトリが呟くと、ミステリアスな女性は頷くように(こうべ)を垂れる。

「カマルと申します。以後お見知りおきを」

「聞かない名前だが、悪くないな。それじゃあ、君は最後のお楽しみに取っておこう」

 そう言うと、ディミトリは他の女性たちを寝室へと引き入れていく。

 ――あの女は、きっと当たりだ。

 心の中で呟く。

 何人もの女を抱いてきただけに、最高の相手と出会えた時には何となしにその感覚が分かる。

 このミステリアスな魅力を持つ女性は、最高にそそる。他の女と一緒くたに味わうのではなく、単品としてかわいがって叫ばしてやりたい。

 端正な顔に下卑た笑みが浮かぶ。あのヒジャーブで顔を隠した女性が快楽に喘ぐ姿を見てみたい。品性も何もかも無くした、快楽の奴隷に変えてやりたい。そんな思いが湧いてくる。すでにディミトリの下半身は臨戦態勢になっていた。

 寝室へ行くと、媚薬漬けにされた女たちが待ちきれないとばかりにディミトリを迎える。ひとまずは、この溢れる性欲を前菜となる女たちでいくらか発散しないと。

「それじゃあ、始めようか」

 ディミトリがそう言うと、あちこちから品の無い嬌声が響いた。

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