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おじいちゃんと白い結婚

作者: purapura

初投稿です

ヒロインはおじいちゃん

教育を間違えたのか、生来の気質なのか。

不出来な息子を怒鳴りつけた。

老人と呼ばれる年齢になっても爵位を譲ることができないのは、一人息子が凡庸とすら言えないからだ。

遅くにできた一人息子で甘やかした、と気づいた時は手遅れだった。

賭け事や女性問題のため、幼い孫娘を残し息子は離縁された。 庶子も把握してないものがいるだろう。


「どういうことだリカルド?屋敷を賭け事で失ったとは?」

「父上。紳士クラブでの勝負に負けまして…

どうにかなりませんか?」

伯爵家といっても裕福ではない。 

真面目に貴族として勤めてきたが、息子の後始末にも結構な財産が使われた。

屋敷を買い戻すような資産はない。


なぜこいつはこんなにヘラヘラしている?

顔こそ貴族らしく整ってはいるが、中身はどうしようもない。

思わず立ち上がったところで目の前が真っ暗になった。


半日後目が覚めた時には、左足がぴくりとも動かなくなっていた。こんな時に。

「おそらく脳の血管の病でしょう

もう少し落ち着かれましたら、車椅子で動かれたらよろしいかと」

医師は遠慮しながら伝えた。

私の足は治らないのだな。


ふと部屋を見回したら絵画が二枚外された跡があった。

呼び鈴を鳴らし使用人を呼ぶ。

「ここにあった絵画は?」

「リカルド様が画商をお呼びになっておられました」

あいつは私が倒れている間に金策に走っているのか。それともまた賭け事か。

はっと気づく。

「そこの二段目の引き出しの青い小箱を取ってくれ」

「こちらでございますか?」

カフスボタンが入っていたはずだが、値打ちものはなくなっていた。

亡き妻がくれたものも。

使用人を下がらせ、涙をこらえた。

数日たち、明らかに使用人の数が減っていることに気づいた。

家具も減っている。

動けない身体で何ができるのだろう。

介護人の数も減っていて疲れているようだ。

孫娘はどうなるんだ?息子はもういいが、あの子はまだ7歳だ。

不安になりながらも、息子は呼んでも来ないし、車椅子も来ない。

自害用の毒の瓶にすら手が届かない。


倒れてから3週間後、訪いがあった。

「リレンザ女伯爵アナベルと申します」

銀髪に碧い瞳、美しい顔立ちに潤んだ瞳。

肌はきめ細かく少女というには艶かしい色気があった。いや色気がありすぎる。

これでは変な男が寄ってきて苦労するだろう。


その後ろに年嵩の侍女、この女は目立たない顔なのに隙がない。何者だ。若い執事が付き添っていた。侍女は当然として執事?

黒髪の美形の若い男だった。顔つきと骨格からして貴族の血が入っているのだろう。


「私と婚姻していただけますか?」

いきなり少女から求婚された。

絶句していると

「もちろん調べさせていただきました

お身体のことも、紳士クラブでのことも」

「このような身体も動かない年寄りと貴女が婚姻する意味は?」

彼女は妖艶に微笑んで

「条件はつけさせていただきます。

伯爵にとっても悪くない話と思います。

全ての借金の返済、介護人も当家で雇います」

謎に条件が良すぎる。

若い執事が、

「お嬢様は今年デビューでしたが、この通りの美貌で爵位持ち、不愉快なことも多々ございました。ですので白い結婚がご希望てす。

婚姻条件はこちらになります。

他言無用でお願いします」

は?

子どもは私の嫡子にすることだと?

私はこの年でこの身体だから白い結婚は当然だ。子ども、産まれるのか?

顔を上げて女伯爵と執事を見比べる

なるほど、やはりそういうことでいいのか?

女伯爵には執事では身分が足りないか。

だからこの執事は心配で付き添ってきたのか。この執事は恐らく低位の貴族か、庶子なのだろう。女伯爵には釣り合わないくらいの身分。若く、情熱に溢れた男女。

なんだか羨ましくなった。

体が動くのなら妻の墓参りに行きたい。

閨を求められない体の不自由な老人との婚姻でも、子どもが嫡子なら家も継げるし他家との婚姻もできる。


「孫娘に爵位を継がせたい」

「それはもちろん大丈夫です。

婚姻を受けて頂けたら書面にします」

書類を持った執事の指先に目がいく。

美しい顔に似合わない不格好な指だ。

見たことがある爪の形だ。

「君は変わった爪の形をしてるな」

彼は苦笑して

「親指と人差し指が横に広いんてす」

この女伯爵はどこまで分かってやったのか。

鳥肌が立ったのは気のせいか。


孫娘は幼くして女伯爵になった。

動けない身体ながら、孫娘とひ孫たちを守るために長生きしないといけない。

息子は急な病を得てどこかで療養しているらしい、ということになっている。


庭で遊ぶ幼い子どもたちの笑い声が聞こえる

黒髪の男の子2人だ

あの子達はとーさま?と疑問形で呼んでくれる 

ひそひそとじーじ?とーさま?と話し合うのも可愛い。

若い妻は近くの東屋で休憩している。

私の亡き妻と同じ形の爪を持つ執事は、微笑みながら見守っている。

旦那様は亡き奥様一筋です(男性使用人談)

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