表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

婚約破棄されたのでブチ切れた私、実は創造スキル持ちだったのでざまぁしてやるつもりだったのですが──

作者: 安珠あんこ

 ここはグランデール王国、王宮の広間。

 王太子が婚約者の女性に婚約破棄を宣告していた。


 王太子リオンが声高に宣言する。


「クレア・キャンベル。お前との婚約を破棄し、国外へ追放する」


 広間に集められた貴族たちは冷ややかな目で元婚約者のクレアを見つめている。


 そして王太子の隣には、自称「聖女」のエレナが悲しげな表情をして立っていた。


「クレア様、神はお告げになりました。あなたの指図で、私は命を狙われたと──」


(神が告げたですって? そんなふざけた理由で、私の罪をでっち上げるなんて……!)


「クレア、聖女の命を狙うという行為がどれほど重大な罪になるか、お前もわかっているだろう? それをこのエレナは、どうか国外追放だけで済ませてほしいと私に懇願しているのだ」


 クレアは聖女を睨みつける。


(王太子に取り入るために、邪魔な私を排除しようというわけか。この偽聖女め、化けの皮を剥いでやる!)


 突然、エレナの背後に悪魔が現れる。


「バ、バカな? 何故聖女の後ろに悪魔が出現するのだ!」


 目の前の光景に、大広間にいる貴族たちが騒然としている。


 そのまま悪魔はリオンに近づいていく。


「おい、来るな! やめろ。やめてくれえー」


「王太子様をお守りしろ!」


 王太子の元へ近衛兵が駆け寄る。しかし、近衛兵たちの周辺にも、別の悪魔が出現する。


「エレナ、君の加護はどうした? 聖女の力で早く悪魔を追い払ってくれ!」


「え、え……」


 エレナは何が起きたのか理解できずに呆然としている。


「あらあら、聖女様ともあろうお方が、悪魔を相手に何もできないのですか?」


 クレアはくすくすと笑っている。


 エレナは恐怖のあまり、失神してしまう。


 すると、何故か悪魔は突然姿を消した。


「エレナが気絶したら、悪魔はいなくなりましたねえ。これはどういうことかしら?」


 貴族たちが騒然とする中、クレアは笑いが止まらない。


「聖女様かと思っていたけど、実は魔女が成りすましていたのかしら? ふふ、リオン様、大変なところでしたねえ。王太子様に女を見る目が無いと、国が傾きますよ」


「だ、黙れクレア。私を侮辱する気か!」


「……せっかく最後のチャンスをあげたのに、まだその女の肩を持つの? もう、許さない!」


 ブチ切れたクレアがスキルを使いかけたその時──。


「あはは、なんだよ。クレアも魔女だったのかよー。計画が狂うじゃねえかー」


 突然、エレナが笑いながら起き上がった。


「さっきの悪魔、お前が出したんだろう? 咄嗟に気を失ったふりししたら都合良く消えたもんなあ?」


「やっぱり、あなた、魔女だったのね!」


「あん? お前もだろうが」


「お生憎様。私は自分のスキルで悪魔にそっくりな人形を作って操っていただけよ。あなたみたいに本物の悪魔を使役させたりはしてないわ」


「なんだよ。スキルで紛い物を作っただけだったのかあ。ちっ、俺としたことが、早とちりしたぜ。ついてねえなあ」


 聖女を演じていた時の可愛らしい声とは一変して、彼女はまるで男のような低い声で喋っている。


「まあいい。どのみちこの国は滅ぼす予定だったんだ。お前のせいで予定が早まったがな!」


 エレナは悪魔を召喚するために赤い宝珠を取り出すと、魔法で王宮の外へと転移する。


 王宮の広場に落ちた宝珠の周辺に、一瞬で巨大な魔法陣が形成された。


「我と契約する悪魔アシュタルトよ、王太子リオンの魂を糧として、この地に降臨せよ──」


「ぎゃああああ!」


 王太子の全身がみるみるうちに燃え上がり、消滅する。そして、巨大な魔法陣から、王宮の高さを超えた巨大な悪魔が現れた。


「まさか、リオンを生贄に捧げて、あそこまで大きな悪魔を呼び寄せるとは──」


 悪魔は口から灼熱の炎を吐く。城下町があっというまに燃え尽きてしまう。


「あはは。これはいい。街中がゴミのようだ。アシュタルトよ、この国を全て燃やし尽くしてしまうがいい!」


(これはマズい。早くなんとかしないと──)


「仕方ない、それなら私は──」


 クレアは「創造」のスキルを発動して、彼女の頭の中のイメージを具現化する。


 その瞬間、王宮の上空に現れたのは、大きさ約20メートルの純白の機械人形。


 それは、この世界に転生する前の彼女が夢中だったロボットアニメの主役機そのものだ。


「は? こ、こいつ、なにを召喚したのだ!?」


「召喚? 違うわよ。この子は私が創ったの」


「創る……だと? こんな巨大な機械人形を? そんなふざけたことが──」


「できるのよ。私のスキルはね、頭の中でイメージしたものを、なんでも具現化できるの。こんな大きさの機械人形でもね。そういうスキルを授かっているの」


「なんだと……」


「もちろん、さっきの悪魔と同じで、出すのも消すのも自由自在。それにしてもリオンのやつには、本当にがっかりだわ。でもそれ以上に、私はあんたにムカついてるんだけどね!」


 そして、クレアは宣言する。


「今からその悪魔ごと、あんたを地獄へ送ってやるから、覚悟なさい!」


 巨大な機械人形【ヴァンダム】が膝をつき、コックピットが開く。


 クレアが搭乗すると、イケメン執事という設定のAIナビゲーターが起動して、彼女の目の前にアバターとして現れる。


「クレア様、本日はいかがいたしましょう?」


「あの悪魔、アシュタルトを殲滅する。ヴァンダム、力を貸してくれ」


「承知しました。ターゲットは悪魔アシュタルト。オールウェポン、アンロック完了。クレア様、いつでもいけます」


「よし、やつの頭上から攻撃する。とりあえず上空へと飛んでくれ」


「承知しました」


 次の瞬間、ヴァンダムは光の翼を展開して、上空へと飛び上がる。


 そして、アシュタルトの頭上で静止すると、地上に向けて、ロングレンジキャノンを構える。


「上空からの攻撃はそう簡単にはかわせまい! 一撃で仕留めてやる! ヴァンダム、撃て!」


「了解。出力100%。VN粒子砲、発射」


 虹色に輝くVN粒子のビームが、悪魔の全身を包み込んだ。


「こんなの……反則だ……」


 エレナは悪魔アシュタルトと共に消滅した。


「ターゲット、殲滅完了」


「ありがとう、ヴァンダム。もうこの国には用はないわ。そうだ。私たちでこの世界を平和にしましょう。紛争をしている国に、私たちが武力で介入するの」


「素晴らしい提案です。クレア様」


「私たちが各国の共通の敵になれば、世界は一つにまとまるわ」


「世界平和のために、自分から進んで悪役になるというその覚悟。なかなかできるものではありません。このヴァンダム、最後までクレア様にお付き合いいたします」


 こうして、後に白い悪魔と呼ばれて各国から恐れられることになる、機械人形ヴァンダムが誕生したのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
現在進行中のよりイケテル。
ヴァンダムって、ガ◯◯◯ですね。 赤い彗星は出なかったんですね。 ←年齢が…
それなんてソレスタルなんたら
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ