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第八話 迷子

「うふふ!そうなの?それは素晴らしい事ね」


ある日目が覚めると外から女の声が聞こえた。

気になって窓から外を見ると…


「エルフ?」


長い耳が特徴のエルフ族、昔は長寿だったらしいが人間との交配が進み、今では少し長生きな程度。

しかしこんな場所にエルフの女一人?しかも僕の精霊達とあんなに楽しそうに!


「おーい!何してるのー?」


僕は窓から声をかける。僕の精霊達とあんなに楽しそうにして!何して遊んでるの!僕も行く!!


「あら?この子達のご主人様?ここはとても良いところね」


金髪の長い髪が風に揺れてキラキラと輝く、エルフは美形揃いだがその中でも頭一つ抜けているんじゃないか?


まあ精霊と比べたらそこら辺の人間と何一つ変わらないけどね。


「いや、何してるの?こんな何も無い場所で」


「ふふ、あなた達の自慢のご主人様なのかしら、少し顔色が優れないみたいね」


僕の話を聞いちゃいない…随分とフワフワしたエルフだな…吹けば飛びそう。

とりあえず僕も外に行くか。


僕は寝ぼけた頭でベッドを降りて玄関に向かう、扉を開けると…あれ?さっきのエルフは?


「ねぇみんな、さっきのエルフどこいったの?」

精霊達に聞いてみるがみんなよく分からないそうだ。

さっきまで目の前にいたのに?


「おり!おりおり!!」


「オリちゃん、今日は珍しく外にいるんだね。ん?エルフの人ならあそこにいるって?」


少し控えめな性格であまり外に出ないオリちゃんが外に出るなんて…何したんだあのエルフ。


オリちゃんが向く方を見るとさっきのエルフ?が走ってこっちに向かってくる。

なんか雰囲気変わったな、一瞬で。


「ね、ねぇ君。僕の姉さんがこの辺にいなかった?」

息を切らせたエルフは急にそんな事を口にした。


「姉?なんの事?それより髪切った?さっきまですごい長かったじゃん」


「それが姉さんだよ!どっちにいったか分かる?」


「いや何なの急に、ちょっと怖いんだけど」


全く同じ顔のエルフが出たり消えたり、もう軽いホラーだよこれ。


「僕と姉さんは双子なんだ。すぐ迷子になる姉さんで…今日も朝一緒にご飯を食べたと思ったらもういなくて…」


もうそれ迷子というか失踪じゃない?歯磨きとかしに行って迷ったの?


「僕の精霊達とさっきまで遊んでたよ、数秒目を離したらいなくなっててさ、そしたら君が現れたわけ」


「くそう…姉さん…どこに行ったんだぁ!」


うん、大きい声出さないでよ。みんなびっくりしちゃうからさ。


「また今日も姉さん探しか…仕事もあるのに…」

落ち込んだ表情で背を向けて歩き出すエルフを見送って…あれ?オリちゃんも付いていくの?


「おーいオリちゃん!帰っておいでー。多分面倒な事に巻き込まれるよー」


「おーり!おりおりー!」


「可哀想だから自分も探すって?仕方ない…心配だから付いて行くか…街にいる他の精霊達にも会えるかも知れないし…」


僕は小走りでエルフに近付き声をかける。


「オリちゃんが一緒に探してくれるんだって…心配だから僕も行くよ…」


「いや…これは僕の問題だし…」


「そうだね、キリが良いところで帰るよ。オリちゃんが満足したらね」


「うーん…まあ人手は多い方が助かるけど…まあ良いか、危険そうでは無いし…精霊も一緒なら…」


危険?まあ危険ではないよ?なんの話?


案の定と言うかなんというか…辺りを散策しても姉は全く見つからず、家に帰っているのではないかと街に足を運ぶ。


町に着くと入り口あたりに見知った顔が…セカちゃんだ!!


「おーいセカちゃーん!久しぶり!!元気だった!?帰りたくなった!?」


「キリノだ!!ねぇセシリア!キリノが会いに来てくれたよ!!」


「ん?おぉ!キリノじゃないか、研究室から出る事もあるのだな!」


失礼な、僕だって外出くらいするよ!ただ出る意味が無いから出ないだけ!


そして二人の前には朝見た長髪の方のエルフ、結構簡単に見つかったじゃん…弟の方の探し方も悪いんじゃないの?


「姉さん!また迷子になって!」


「あら、ルーク。どこに行っていたの?もうそろそろお昼ご飯の支度をしないといけないのに」


「姉さん!さっき朝ごはん食べたばかりじゃないか!急にどこかに行くのやめておくれよ!」


「あらら、私はたどり着く所へ、たどり着く時、たどり着く。それだけだわ」


「またそれかい!?探す方の身にもなっておくれよ!誘拐なんかされたらどうするんだ!」


「それは怖いわねぇ…でも今日は風が気持ち良いのよ。そうだ、今日のお昼は外で食べましょう。きっと良い場所が見つかる、そんな気がするの」


弟君…君苦労してんだな…。


「セカちゃん達が見つけたの?この色々迷子の子」


「おいキリノ…流石に失礼だぞ…。私達が巡回をしていたら見つけてな、何やらフワフワしていたから声をかけたんだ」


「この人すごいフワフワしてたの!もうね!風で飛ぶくらいだったよ!」


そうだね…僕もずっとそう思ってるよ…。


「一応姉を見つける事はできたよ、ありがとう」


なんだ、御礼とかもしっかり言えるのか。何となくそういうタイプじゃないと思ってたよ。

まあなんとなくだけど。


「まあ人探しは終わったし、セカちゃんともっと遊んで行こうかな。今日はオリちゃんも来てるんだよ!」


「おりおり!おーり!」


「オリ!久しぶり!元気だった?」


「おり!」


とりあえずセシリアには席を外して貰って、家族水入らずお喋りでも…。


「姉さん!?」


一瞬全員が目を離した瞬間、姉は煙のように消えていた…。この流れでどこか消えるなんてある?


「まただ…姉さんったらまた迷子に…」


「ねぇ君、もう姉に縄とか付けておけば?このままだと迷子探しで一生終わるよ?」


「自分の姉に縄付ける弟がいるとでも?」


いやもう縄くらいじゃ生ぬるいくらいだよ、毎日探し回るより良いでしょ?


「キリノ…流石にそれは…」


「キリノ!ダメだよ!女の子縛っちゃ!めっ!」


えー…なんで僕が悪者?だからロクな事にならないって…。


「オーリ!」


そして弟に飛んで行くオリちゃん…ほら…だからロクな事にならない…。


「え?何?」


驚く弟は淡い茶色に包まれ…あぁ…。


「あ、あの…私がもっといっぱい…手伝えば大丈夫かなって…」


フワフワのパーマのような茶髪、透き通る琥珀の色の目をしたオリちゃん…可愛いし綺麗だ…。

少しモジモジしてるのもまた可愛い!


「え?これって大精霊?何が起こったんだ?」


「オリも成長したんだね!この姿だといっぱい出来る事あっていっぱい楽しいんだよ!」


「そ、そうなのかな…でも、嬉しいな」

元気いっぱいのセカちゃんとオドオドしたオリちゃん、なんと微笑ましい。どっちも可愛いよ!


「ルーク、と言ったか?その…キリノの精霊はちょっと特別でな…まあきっと良い方向に向かうと思うぞ」


セシリアは良いよね!!セカちゃんと毎日楽しそうでね!!


「あ、あの…宜しくお願い…します…ルークさん」


「え?あ、うん…まさか大精霊が僕に…エルフからしたら夢のような話だけど…」


エルフって自然を大事にするから精霊も大切にするんだっけ?いい心掛けだ。そこは父さんも認めよう。


「それでオリちゃんはどんな固有魔法が使えるの?」


「えっとそれは…うーん…つ、使ってみます」


「固有魔法?一体何の話を…」


まあ…この世界には色々あるのよ。


「い、いきます」

オリちゃんの固有魔法…一体どんな…。


重々しき(オリハルコン・)知の継承(ボーナス)


「あ、あの、お姉さんの姿を考えて下さい…」


「姉さんの?うーん…あれ?姉さん?」


何?どんな魔法?


「姉さん!あんな場所に!お茶なんか飲んで…」


「ねぇオリちゃん、何が起こってるの?」


「えっと…あの…感覚を共有する魔法…なの。今はお姉さんと共有してるからね…いる場所が分かるの」


うん?今までと比べると…地味?なんとなく他の子達と比べるとスケール感が…いや!オリちゃんの固有魔法を地味とか言うな僕!父親失格だ!


「すごい…これで姉さんを探す手間が…ありがとう、オリ」


「う、うん。それとね!それとね!他にも色々出来てね!」


「もう大丈夫そうだな、私達は仕事に戻る。キリノ、今度は来る前に連絡をくれると助かる、私達はこう見えて結構忙しくてな…」


「え?行っちゃうの…」


「キリノ!お仕事が落ち着いたら遊びに行くよ!ご飯作ってあげる約束もあるもん!」


わ!そんな嬉しい事…泣きそうになるじゃないか!

仕事に向かう二人を見送り、残されたルークとオリちゃんと僕…。


「オリちゃんの固有魔法もっと見たいし…僕も付き合うよ…」


「う…うん…。なんか悪い事したみたいだけど…」


「お父さん…きっといつかお父さんにも誰か憑依できる?かも」


「うん…最近毎晩夢に見てるよ…」


…………………。



しばらく歩くが姉の姿は見えない、あの一瞬でどこまで行ったんだ…。


「姉さんは足が速いというか…消えるんです…なぜか」


その謎を解き明かす方が早いんじゃない?


「今どの辺なの?」


「うーん、さっきまでこの辺に…オリ、申し訳無いんだけどもう一回頼めるかな?」


「う、うん…いつでも言ってほしい…かな。いくよ、重々しき(オリハルコン・)知の継承(ボーナス)


「えーっと…今は…」


次の瞬間、ルークの顔が真っ青に…


「どうしたの?何かあった?」


「姉さんが…本当に誘拐されてる…盗賊か…許せない…」


誘拐?しかもエルフの女の子を?


「今助けに行くから!!」


そう言ってルークは走り出した。

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