2.カマ、勇者クビになる。
「おお…勇者様お助けくださいませ。このフォルマ国と、我々をお助けください。」
そんなこと言われたってどうやって戦えばいいのよ~。
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「ナツメ殿、準備が整いました。」
「ほんとにゴブリンと戦うのよね?ゴブリンって耳がとんがって、餓鬼みたいな見た目の…。」
「ガ…キ?それはなんです?」無愛想な憲兵は聞いてきた。
「えっと、アタシがいた国の昔に存在したといわれるモンスター?的な?」
憲兵は首をかしげた。
「てか、アンタ名前教えなさいよ。」
「俺は、ユーリスです。」
ユーリス、…ふうん。顔も体も悪くはないわね。
性格はアタシと合わないようだけど。
「ナツメ殿、行きますよ。」
扉を出て少し行くとと薄い緑色の醜い、ちっちゃいのがうじゃうじゃいた。
「ぎゃー!!きもちわるぅーい!!」
無造作に剣を振りまくるがひと振りもあたらない。
「ッ…!ナツメ殿!周りをよく見てッ!」
ユーリスがほかのゴブリンを相手しているときにもう一匹がアタシに向かってきた。
「ナツメ!あぶないっ」
『ファイアブラスト!』
遠くから聞こえる声で向かってきたゴブリンが燃え上がった。
「キャッ、なにこれ、熱っ。」
他のゴブリンたちも燃え上がる中、ユーリスとアタシは炎の先を見つめた。
そこには見慣れた洋服をきた青年が立っていた。
そこからあっという間にゴブリンたちは討伐され、
周りの憲兵たちは歓喜とざわめきであふれかえっていた。
帰りの馬車ではなんとも言えない沈黙だった。
(どうしよう、すっごく気まずいんだけど…。寝たふりでもしときましょ。)
そうして城に帰ると王は頭を抱えていた。
「はぁ、勇者だと思っておったのに…。なんと…。」
(あ~はいはい、聞こえてますよ。)
いやみごとを言われつつもニコニコしていると
あの青年も王の前に通された。
「おお、あなた様のおかげでフォルマ国は助かりました。お名前を教えてくださいますか。」
「僕は、リョウです。」
「リョウ殿、この度は本当にありがとうございます。」
王がリョウってやつと話している間、
後ろで気まずそうに立っていると、王は冷めた目でこっちを見た。
「おや、まだおられましたか…。お主にもう用はない。たちされ。」
えぇ~、その変わりようは何?
貴殿から主呼びって、態度変えすぎでしょ。
「それによく考えれば、口調は女みたいで気持ち悪い。」
久しぶりに浴びせられる罵声に好奇な目。
腹立たしい気持ちはどんどん虚しさに変わった。
そうよね、ゲイだし、特にオカマだからね。
それは今まで生きてきた中で何回も味わった経験だった。
「わかったわ。でもこのまま出ていくとアンタら呪いながら死んでいくことになるわ。
オカマの呪いはと~っても効果があるのよっ。
この国の繁栄を願うならアタシが困らないくらいの資金を頂戴ッ!」
と言うと国王は少し青ざめた様子で金貨100枚を用意させ、
アタシは城を出ていった。
「まったく嫌になっちゃうわ。ほんと。」
そうして街中を歩いていると後ろから「ナツメ殿~」と声がした。
振り向くと遠くからユーリスが走ってくる。
「あら、ユーリスじゃない。あ、アタシ勇者クビになったから殿はつけなくて結構よ~。」
少しユーリスは気まずそうにしながらも「そうだったんですね。」の一言だけだった。
「あら、アンタあまり驚かないのね。」
「まぁ、…それよりこれからどうするんです?」
確かにどうしようかしら。
この国のこともよく知らないし。
少し考えてみたけれど特に何も思いつかなかった。
そんな時はもう飲みに行くしかないわよね。
「ふぅ・・・そうね、今日はいろいろありすぎて疲れたわ。今日はもう何も考えないッ!
ユーリス、今日はおごるからついてきなさいッ!」
そう言ってユーリスの肩を組んだ。
「え、どこ行くんですか。」
「わかんないわッ、どこかいい飲み屋教えなさいッ!」
そう言ってアタシとユーリスは飲み屋街に消えていった。