8 花の謎は家にて
なんか、スローライフ、ほのぼの雰囲気を書くつもりだったのに、ちょっとシリアスになってませんか?
「なんだ?この花」
「ここには普通の人は来れない。魔女であっても並大抵の者は来れないし。」
「辺境伯のところのやつでも無理だろう。」
「王族直属の騎士でも、私たち同等の力は持っているわけはないから、無理」
「残るは……」
「あーぁ。今まで平和だったのに。」
「最悪だ。」
この家に何者かが侵入するということの前にこの魔境に足を踏み入れること自体が不可能である。にも関わらず、2人の留守中に魔境に入り、しかも、強固な防御及び認識阻害の結界が張られている家に忍び込むことは人間には無理だ。
そう、無理なのだ。
となると、可能性は一つだけ。
人間では無い存在。
「あーぁ。やばい。」
「ほっといてどうにかなるかな〜?」
「ならないと思うぞ。」
「なんで、この花見てみろ。」
「え?」
単なるスノードロップ。
イスキローテが何かが違うと言った花の方はおそらくスノードロップに似た、すずらんだろう。
イスキローテは何が問題なのかと、首を傾げた。
その直後、理解した。
「あ。」
「花言葉。」
「アハハ。」
花言葉。
この花の送り主は、この2人がそれに詳しいことを知ってか知らずか。どちらにせよ、意図を持って悪意を持って、このスノードロップをこの家に残していったのだろう。
最悪だ。
2人が町に出た時にそれぞれ一瞬は感じたはずの嫌な予感が、こうも最悪な形で、しかもこんなにも直ぐに起こるなどどうすれば予想が出来ただろうか。
無視をするべきではなかったが、どうすることもできなかった。
沈黙が続く。
2人とも自分の愚かさに失望し、どう立ち回るかを練っている。しかしどうにも思いつかない。
どうしたって無理なのだ。
戦わなずに終わらせるのは。
こうして、考えているうちに気づけば太陽が上がりきっていた。
「とりあえず、絶対にやらなければならないことを書き出そう。」
「そうだね。」
「皇帝への連絡が急務か。」
「今の皇帝は一体何をどこまで把握していてるんだろうね。」
「……わからない。ずっと目を背けてきたからな。」
「ツケが回ってきたってことか〜」
皇帝とは、即位時にしか会っていない。
めんどくさかったというのもあるが、今回の皇帝はどうにも厄介な気がしたため、 2人とも避けていたのである。
「次にやるのは?」
「辺境伯かな、それか、あの店を調べるか。」
「どちらにせよ、町に降りる必要があるな。」
「だね〜。」
「あの話をした後に辺境伯に行くのはな。」
「ちょーっとキツいよね。待つよって言った癖に、待てない状況になっちゃったからね〜」
「だな。」
……ちょっとキツイ、という感覚をこの2人が持っていたことに、少しばかり驚きを感じるが、今はそんなのどうでもいいことである。
「そしたら、あの店の調査を先にする?で、諸々が確定してから、辺境伯に言いに行こう」
「……だな。」
「辺境伯を巻き込むのは絶対だから。」
「そうだな。」
店を調査とは言っても何をすれば良いか。
2人は悩んでいた。
万が一、本当にあの店が魔鬼の何らかの拠点であった場合、この2人がそこに入っていくのはマズイのである。
かちあった瞬間にドンパチが始まってしまう。
あの町中でドンパチし始めるのはさすがに避けたい。
伝説となっている2人に加えて魔鬼が、全力で戦うのである。周りの被害はとんでもないことになることは容易に想像がつく。
どうしたものかと考えていた時。
「あ。」
グラナージは事情を知っていそうな人物に心当たりがあった。
「布屋のおばさん。」
「え?」
「あの人なら、きっと何かを知っている。」
「……!」
「そこから情報を探す。」
「了解。」
そこからの行動は早かった。
必要なものの準備。
イスキローテ。
回復薬を大量に作った。
割れない容器を作り、グラナージに渡した。
結界の構築をしておき、直ぐに使えるようにする。
防御結界
気配消し
認識阻害
容姿変容
身体強化
ありとあらゆるものを念の為で作っておく。
魔導書の該当箇所に印をつける。
いつもは、覚えているものだけで事足りるが、魔鬼との戦闘になる場合はそんなのでは足りないからだ。
魔鬼との戦闘で使う魔法は、間違えると一気に周りを破壊し尽くす可能性がある、そのため魔導書は必須なのだ。
グラナージ。
頑丈なズボンを作る。これは必須。剣を扱う以上、動きやすい服というのは絶対条件である。
初めての生地のため苦戦しながらも、さすがの器用さで完成させた。動きやすくてびっくり。
持っていく剣を選び、その剣をイスキローテに頼み強化してもらう。
魔改造である。
貰った回復薬をズボンにガーターで括り付ける。
ちょっとした準備運動と、目慣らし。
不要なものは取り払う。
各々必要な準備を整えた。
「終わった〜」
「こっちも終わった。」
そうふたりが口にした時、ふと気づいた。
花が蕾に変わっていることに。
「あれ、これは確定演出だったりするのかな〜」
「間違いないだろ。」
「ハッハッハッ。」
「ほんと。ふざけないで欲しいわ。」
読んでくれてありがとうございました!
どうしましょう。この後。
題名のセカンドライフは一体どこへ?