7 魔法の腕試しは帰り道にて
……恐ろしく切り替えの早い2人ですね〜。
「ねぇねぇ、いい?」
「…はぁ、疲れるだろうが」
「感覚鈍ると取り戻すの大変じゃん。それに、調査も兼ねられるし!」
「…」
「わかった、わかった。グラ、こうしよう」
「なんだ?」
「私がぜーんぶ倒す!グラは私の後ろに入ればいいよ。で、あれして!あの〜、植生調査!」
「……はぁ。わかったよ。」
「ヤッター!久しぶりだ、腕が鳴るぜ!」
「口調どうなってんだよ」
イスキローテはたまに魔境の中をわざと、気配消しの魔法を解いて、歩き、魔法の訓練というか腕試し的に魔物を倒している。
ここ最近は全くしていなかったため、帰り道を利用して魔法を使おうとしているわけである。
付き合わされるグラナージとしては、わざと危険を犯す真似をするのは嫌なので、勘弁して欲しいところであるが、イスキローテへの信頼はあるので、許可をした。、
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魔境の前。町の出口からここまでは認識阻害と気配消しの魔法をかけていたため、誰にもバレていない。
当たり前だが、魔境の近くには人どころか動物1匹もいない。
「じゃあ、準備はいい?」
「俺は大丈夫。てか別に準備することないだろ?」
「まぁ、そうだね。全部私が倒すから」
グラナージに防御魔法をかけてから、イスキローテは魔境へと歩みを進めた。
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魔境へ入り、いくらか魔物を倒してから2人は気づいた。
「ねぇ……なんか……」
「ああ。」
「……私!鈍ってない!?」
「とんでもなく、鈍ってんな」
今までなら簡単に始末できていた魔物に苦戦するようになっていたのである。そこから、魔力の扱いが下手になったのだとこの2人は思った。
「え〜。鈍る前に、と思ったのに〜。」
「鈍った後だったか」
「うわ〜。」
「てか、辺境伯が言ってたようや変化は無くないか?」
「あ、それ思ってた。普通だよね。いつもと一緒」
「足が早い小物はいない。」
「ホイ!!!ふぅ〜。遅いデカ物ならいるけどね!」
ドンッ!
遅いデカ物の魔物が倒れた。
鈍ったと言っても、辺境伯のところでは10人で戦ってどうにか倒せるかくらいの強敵を、なんやかんや一撃で倒せるのであるから、流石である。
ただ、本人曰く、魔力量の消費が激しいらしい。
「植生も特に目立った変化は無いな。」
「こんな花だったけ?」
「ああ。」
「なんかもうちょっと違った気がする〜」
「そうか?」
「うん。花の形がもうちょい細長かったような?」
「そこまで詳しく見た事ないな。」
「え〜。正解が分からない。やだな〜こういうの。気になる。」
「そこまで気にならないだろ」
「え〜。」
「そもそも、花1輪くらい変わってても大きな問題はない。聞いてる限りほんの少しの違いみたいだし。植生には大きな変化がないと言っていい。気にすることないだろ。」
「それはそうだけどさ〜。気になるよ〜。」
魔境の半分くらいまで行くと魔物の種類が変わってくる。
魔力量の多い。いくらか思考が働くタイプの魔物に変わってくる。
「この魔物の存在をみんなが知ったら卒倒するだろうね〜」
「ああ。知能がなくても、倒すのがきついのに、知能があると知ったらもう無理だって思うだろうな。」
「うんうん。」
「まぁ、案外弱いが。」
「さっすがー。英、雄、さん!」
「ウザ」
「アハハハ」
そんな軽口をたたきながら、どんどん進んでいく。
家がある地点まではまだ少しかかる。
「詠唱が必要な程のはいないね〜、よっ!」
ドサッと魔物が倒れる
「ん?あれ?まだ死んでない。頑丈だ。」
「ローテが弱くなったんだろ」
「え〜そんな〜。フレアニードル〜」
青く輝く炎が針のように細くなり、魔物の脳天を貫く。
魔物は絶命した。
軽く詠唱しただけで、これだけの威力を放つのだから、やはり最古の魔女なのである。
「さすが。」
「グラだってこのくらい剣でどうにかできるでしょ。」
「できるが、そんな気の抜けた声を出しながらは無理だ。すごいよ、ほんと。」
「……えぇ。褒めてます〜?それ。」
「褒めてるよ。」
「……え〜じゃあちゃんと褒めてよ。よっ!フレイヤ〜!」
「……ちょっとの嫉妬心が邪魔する」
「………待って。……それは褒め言葉だ〜!!」
「ローテの感覚どうなってんだよ。」
「普通だよ〜。」
魔物を倒す手はとめずに、そんな取りとめのない会話をしながら、家の前まで来た。
「はい!とーうちゃーく!」
「案外、鈍ってたな。」
「うっ。また練習再開しないとな。」
「頼むわ。」
「頑張ります。」
ギィー。と音を立てながら、扉を開いて……驚いた。
白い釣鐘形の花が、
テーブルの真ん中に置いてあった。
「あ、これだ。」
「え?」
「あの場所に生えてた花。」
読んでくれてありがとうございました〜!
補足
買い物したものは空間魔法で運ぶことが出来るので、魔境ではほぼ手ぶらで、動いてます。
怪しまれないように、町を出るまでは手に持ってます。