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6 密談は辺境伯の屋敷にて


「いやさ、前々から思ってたんだけどさ」

「俺も思ってた」


「「屋敷、町から遠くない?」」


「「まじで!」」


「いや、遠いよね?やっぱ。」

「遠い。」

「もう少し近くしてくれないかな〜」

「いや流石に無理だろ。それは」

「まぁ、そうだよね」


「メイドさんたち町に買い出しとか行くのかな〜?」

「どうだろ?屋敷に届くんじゃないか?」

「……確かに。そりゃ近くなくていいか。」

「遠い方が良いのかもな。近いと、暴動が起こった時に準備するより前に来られるからな」

「……確かに。防衛のため。でもそれなら魔境の近くに屋敷を建てればいいのに。近づかないでしょ?」

「まぁ、近づかないというか近づけないだがな」

「町づくりとは難しい。」



そんなどうでもいい会話をしていると、辺境伯の屋敷に着いた。



「うん、長かった〜」

「ほんと長いな。」


「お帰りなさいませ。」


「ただいま?」

「まるで家だな」


「伯爵様は書斎にいらっしゃいます。御手数ですが……」


「了解〜」

「仕事が溜まってんのか」


仕事が溜まると書斎から出てこなくなる。それは先代も同様であったために、親子だなーと感じる2人だった。


「血が繋がってるとやっぱ性格も似るんだね。」

「血が繋がってるからか、一緒に暮らしていたからか」


「にしても、装飾品がないね。ここは〜」

「こっちの方が俺は好きだな。」

「だだっ広くて、あんま好きじゃないかも。ギラギラしてる城も嫌だけど。」

「あー、あれは眩しくて耐えられなかった。」

「ね!絶対あんなにいらないよ〜。特に謁見室とか」

「ある意味で、皇帝を見なくて済むから良いかもしれないがな」

「…確かに、言われてみればそうかも〜」


「ここだったっけ?」

「たしか、そうだな」


普通は案内する使用人がいるが、この2人には誰も付いてはいけないという命令が出ているため付き添う者はいない。そのため、迷うことが多々ある。というかほぼ毎回どこかしらで迷子になっている。



コンコン

「戻ったよ〜」

「話がある。時間を取れるか?」


「……あぁ。魔女さん達ですか。どうぞ。」


「……疲れきってない?なんか」

「魔女さんって言う時点でだいぶきてるな。」


ギィー。


「失礼しま〜す。」


入った先には、大きな仕事机の上に大量の書類の束。そして、それに埋もれかけながら必死に羽ペンを動かしている辺境伯の姿があった。

よくよく見ると、部屋の至る所に書類やら何やらが散乱していた。


(何日分の書類貯めてたんだろ〜)

(いや、さすがに多すぎる。何か起きたのか?)

(買い物に行く前に会った時には疲れてなかったよね〜?)

(あぁ。ということは行っている間に何かが起きて、この量の書類が一気にきた)

(相当ヤバそうだね〜)



「どうしました?入口で突っ立って。」


「いや、なんでもない。」

「すごい書類の山だけど、話の時間は取れそう〜?」


「あぁ、はい。少しなら。」


((疲れてる))


「単刀直入に言うね〜」

「待て。人払いが先だ。」

「あ〜。そうだった〜」


「人払いが必要な事案なのですか?」


辺境伯の顔が絶望に変わる。


「まぁ、」


「はぁ。全員下がれ」


その場にいた使用人が全員下がる


「防音の結界を張ったから、話が外に伝わることはないよ〜」


「助かります。」


「ずいぶん疲れているみたいだな。大丈夫か?」


「お2人が町に出た後に少々トラブルが発生しまして、」


「少々のトラブルでできる量の書類じゃないでしょ〜」

「苦労が絶えないな。」

「お疲れ〜」


「はい。ここまで、めんどくさい事案に関わるとは思っていませんでした。」


「アハハ!辺境伯がめんどくさいって言うなんて相当だね〜」

「まぁ、貴族をしてれば、巻き込まれることはあるだろう。」

「まぁ、そうだね〜。めんどくさいからね、ほんと」


「そういうことで、今はとてもゆっくり話ができる状態ではないので、申し訳ないですが、」


「あー!そうだった。」

「単刀直入に聞く。魔鬼って知ってるか?」


「…初めて聞きますね。」


「うわー、知らない側の人間だったか〜」

「魔境の管理を任されるくらいなのだから知っていると思ったのだがな。」

「皇帝もクズだね〜」

「それは本当にそうだと思うが、口に出すのは駄目だ。」

「は〜い」


「その、まき?と言うのですか?それが一体?」


「さすがに君は知っといた方がいいと思うから、教えようと思うんだ。」

「元々、この話は皇帝と俺たち、そして、魔境を管理する辺境伯の当主みが知らされることとなっている情報だ。」

「だけど、たまにその恐ろしさに耐えられなくて精神を病んじゃう人が現れるんだよね」

「だから、確認をするようになった。」

「本当にこの真実を知りたいですか〜?って!」

「で、覚悟はあるか?」


「必要なことであるならば。」


辺境伯はこれより前に皇帝からめんどくさい事を頼まれて既に疲弊していた。そこにまだ、何かあるのかと思うといっその事気絶したいと思った。


「そっか〜」

「では、魔鬼に関することを話す。」

「あ、待って待って。」

「なんだ?」

「もう1つ確認〜。


ステイド・ルクロンバ。」


「は、はい。」

(本名で呼ばれた!?)


何故こんなに、辺境伯が焦っているか。

それは今まで、イスキローテから本名で呼ばれたのは、魔境の管理を引き継ぐ時、本当にこの責に耐えられるか?と真剣に聞かれた時だけだからだ。

これから質問される内容は、それほどにも重要なことなのであるということが、その一言で、わかった。





「英雄グラナージを信じ抜くことが出来る?」




「……え?」


意味がわからなかった。

信じ抜くという言葉はどういう意味だろうか。

何故?グラナージ様が裏切るなんてことがあるのか?

いや、は?


「それは……」

「重要な事だよ。グラナージ。」

「……」

「で?どう?信じ抜ける?」


「どういう意味でしょうか?」


「そのままの意味だよ。お前が尊敬している、英雄グラナージ。それが本当はどんな存在だったか。それを知っても、今までのように接することができるか?」


「グラナージ様のこともイスキローテ様のこともここ数年しか分かりません。英雄。最古の魔女。それしか情報は持ってません。」


「それはそうだろうね。」


「私個人としては、信じます。しかし、辺境伯という立場からすると、現段階では断言することはできません。」


「…まぁそうなるか〜」

「当たり前だな。」


「ただ。」


「ん?」


「情報が集まれば判断することは可能です。。」


「…なるほどね〜」

「そしたら、今回この話はこれで終わりにしよう。」

「そうだね。この話をするのに辺境伯の覚悟及び判断は絶対必須。」

「ああ。だから、保留にする。」


「…。」

「いつになるかは分かりませんが。それでも良いのであれば。」


「うん。」

「これだけは伝えておく。建物の古さに注意しろ。」



「は?」


「よし、言いたいことは終わった〜。」

「じゃあな、また来月。」

「仕事がんばれ〜」


「え?は?」


バタン。


困惑の辺境伯を置いて、二人は去っていってしまった。

びっくりするほど、マイペースである。

読んで頂きありがとうございました〜

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