2 あの頃の出来事
過去です。
ー遡ること300年前ー
「おい!待て!そっちはダメだ!!」
「は!?…うわー!!!」
ちっ、どうすればいいんだよ。
倒しても倒しても、湧いて出てきやがる。クッソ!
魔境という魔物が生まれる森があるインペリアル帝国はこの頃窮地に立たされていた。
長いこと沈黙をしていた魔境が突然、氾濫したのである。つまりは、魔物が外に溢れ出したのだ。そしてそのタイミングを見計らったかのように他国が襲撃してきたのである。今考えてみれば、その氾濫も他国が仕掛けたものだったのかもしれないが、その当時はそんなことを考えている暇はなかった。
皇帝は直ぐに最強と名高い英雄のグラナージと最古の魔女イスキローテを呼びつけた。
「今の状況をどう見る」
「不味い状況としか言えないでしょう。」
「倒しても倒しても湧いて出てくる。こんなの地獄としか言えないですね。」
「どうにかできるか?」
「誰に言ってるんですか!できるに決まってますよ…って言いたいところですが、流石に敵が多すぎます。連携が取れない魔物だけならまだしも、人間は連携するし作戦立ててくるしで、厄介なことこの上ないですし…」
「どうにができたとしても、被害は抑えられるか微妙ですね。」
「お前たちでも無理か…帝国最強と呼ばれるお前たちでも……」
「「無理とは言ってない!!!」」
この言動からわかる通り、この2人とんでもなく負けず嫌いであった。
「じゃあ、どうにかしてくれるな?」
「「………はい」」
負けず嫌いのことは当然皇帝も知っている。まぁ、皇帝にしてやられた2人は何がなんでもこの事態をどうにかしなくてはいけなくなったのである。
「やられたー!!」
「あーー、戦いたくない」
…これでも本当に最強と呼んでいいのだろうか、甚だ疑問ではあるが、やる時はやるのがこの2人である。
「1点に集中させて、ぶっぱなすか。部隊を編成して敵をおびき寄せてそれぞれ撃つか。どっちの方が良さげ?」
「1点集中だと倒しきれなかった場合がヤバいんじゃない?撃ち漏らしが多ければ多いほど被害は大きくなるからね〜」
「そしたら、バラけさせた方がいいか?」
「それもそれだよね、どこかの部隊がしくったら。もしくは、上手く誘導が出来なかったら。そこのカバーに入れ程人員に余裕はないしね〜」
「…じゃあどうしろと??」
「私がこの帝国に結界を張る」
「帝国を囲むほどの大規模のをか!?流石にそれは無理だろ」
「魔力量はギリ足りる。やるしかない」
「…まじかよ」
「ただ、やったことないし。これだけの規模の結界を作るのに無詠唱はさすがに無理。しかも、普通のより約3倍の詠唱が必要になってくる。」
「なるほどな。その時間稼ぎを俺がすればいいわけか」
「うん、そういうこと。3倍って言ったけど、正確にはどれだけかは分からない。短いかもしれないし、長いかもしれない。耐えられる?」
「耐えてみせる。その代わり絶対に成功させろよ!!」
「誰に言ってるのよ!」
その後、長い長い戦いが始まった。
多くの兵士が戦いに敗れ、散っていく。
「ごめんな。みんな……」
「クッソったれ!!!!!!」
多くの平民が抵抗できずに、息絶えていく。
「なんで??何もしてないよ!!助けてよ!!!!」
「ママー、パパー、痛いよー」
多くの動物が逃げ惑い、食い尽くされていく。
「グラァァァァァァァァ」
知らない言語が飛び交い、知らない匂いに埋め尽くされていく
そんな地獄のような時間が。
今終わる。
「遅いっての、ローテのやつ」
次の瞬間眩い光と共に結界が張られた。
歓声が上がる。
士気が上がる。
絶望をしていた人達は立ち上がる。
雄叫びを上げる。
最後の戦いだ。
「戦えるやつは戦え!!」
「敵兵に増援は来ない。魔物もこれ以上は増えない。」
「後片付けもこっちもちかよ。勘弁してくれよ」
「全力で、国内にいる敵を始末しろ!!!」
「1匹たりとも逃がすな」
「やっつけろ」
「ここは我々の国だ!!」
次々に鼓舞の言葉が上がる。
その中にグラナージの悲痛な叫びが聞こえた気もするが…
この時戦ったのは兵士だけでは無い。
動けるものは、周りのなんでも使って戦った。
それこそ、果物や飲料、箒にバケツ、何でもだ。
投げつけて、叩いて、ばらまいて。
意外にも効果はあった。
目に果汁が入ったり、滑ったり、単純に痛かったり、邪魔だったり。
そのおかげで思ったよりも早く、国内にいる敵を一掃することが出来た。
こうして、インペリアル帝国は危機を免れたのである。
これがあの日の出来事であり、絵本の題材になった遠い昔の戦いのお話。
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「いやーもう戦いはやりたくないねー」
「同感だ」
読んでくれてありがとうございました!!