短編「感傷」
感情を知っているけど、感情を自分自身で感じることができない主人公との恋愛?小説です。
感じ方では友情、恋愛どっちでもとれると思います…たぶん。
あとがきに蛇足と作者の解釈があります。
—————————人の感情っていったいなんだろう?
ふと疑問に思った。
人の感情はいろんなところで見かける。学校や家、駅でもショッピングモールでも人と結びつくものには感情がある。
ロボトミー手術というものがある。かの有名なノーベル賞を受賞した当時はまさに革新的な手術だったが、現代では患者の道徳的な観点などで禁忌の手術とされている・・・ロボトミー手術では患者の感情を低下させる、言わば患者の感情を消す手術らしいが。こんな事件を聞いたことがある、ロボトミー手術を受けた患者が、執刀医やその家族を殺そうとした事件、執刀医は生き残ったがその家族は殺された、そんな事件。当事者ではない自分では、その患者の意思はわからないがはたから見れば感情を消した相手への恨みつらみが犯行動機に見れる。感情がないのに感情で動いた、それとも憤怒などの怒りは感情ではないのだろうか?
わからなキーンコーンカーン…—————————
「らーちゃんっ」
「おわっ」
教科書とノートを机に直していたら幸が後ろから抱き着いてきた。
「危ないよー」
「えー らーちゃん運動神経いいからこのくらい大丈夫、大丈夫♪」
「よっ 相変わらず仲いいなー」ニヤニヤ
もうひとり来た深奏だ。
「…幸!いってこい!」
「やぁーー!」
「わぁあ」ドンッ
「いてて、こんのーやったなぁ!」
「わあぁあああ」
—————————放課後
「そういえば、未来 今日の授業ずっと外見てたよなー
も・し・か・し・て気になる人でもいたのか?」
「え!? らーちゃんの気になる人!誰っ誰!?」
圧がすごい…
「別にそんなのじゃないよ、ただ珍しい鳥がいるなって思っただけ」
「気になる鳥?どんな?」
「んーと、黒い羽の鳥?」
「…カラスじゃね?」
「カラスだね」
「えーっと、私もカラスだと思ったんだけどなんか違ったんだよね」
「なんかって?」
「…わかんないっ!」
「なんだそれ」
そんなことより
「幸、推しの先輩とはどうなったの?」
「えっ聞いちゃう?今聞いちゃう?ねぇねぇっ」
「また幸のねちねちモードが始まったよ」
「それがねぇー今週の日曜日っ なんと一緒にお食事に行くことになりました!」ドヤッ
「「おおーッ」」パチパチパチッ
「えへへ、ありがとう!それでね、一緒に服を選んでほしいのっ」
「いいよー」
「うん あっ私ついでに新作のパフェ食べたい!」
「いいね、服を選んだあとみんなで食べにいこっか、幸 いい?」
「うんっ 楽しみだなー」
——————————————————
「それじゃ、また明日ー」
「また明日っ らーちゃん気を付けてね!」
「また明日、未来気を付けてね最近不審者が目撃されたらしいし」
「うん、わかった。二人共、また明日ね。」
二人とは家の方向が途中で変わるから交差点で別れる。
帰ったら何しようかなー学校の課題何かあったかな?
「すみません。」
ん?
「えーっと、何か用でしょうか?」
「すみません。道をお尋ねしたいのですが」
「あー、大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。」
容姿は金髪に青い目、外国人の人かな?それにしても流暢な日本語だから生まれは日本かな?
「石山食事処という名前なのですが、マップを見ながら来たら道がなくて…」
「あー あるあるですね。よかったらご案内しましょうか?」
「いいんですか?」
「ええ。てかそこ自分家なんで」
——————————————————
「ただいまー」
「おかえり、未来。あらっそちらは」
「お客さん?かな。うちに用があるんだって」
「お久しぶりです。かなさん」
「まあまあ、マリアちゃん久しぶりねー、帰ってきてたのね」
「はい。お土産をお渡ししようと来たら道に迷ってしまい、そこでたまたまお子さんにお会いしまして」
「あれ?知り合いですか?」
「ええ。未来は赤ちゃんの頃だったから覚えてないかもしれないけど、私の姉、ひなおばさんのお子さんよ。」
なんとっ従姉だったとは。
「ふふっ。未来ちゃん、すっかり大きくなったね。高校生?」
「はい。入学したてでまだなれませんが。」
「立ち話もなんだし、マリアちゃん夕飯食べていく?」
「いいんですか?ぜひっ 実をいうと楽しみにしていたんですよ」
「そうなの?嬉しいわ、今日は豪華にするわね」
わぁーいごちそうだぁ
マリアさんは母と一緒に居間のほうに行った。今日、泊まるんだろうか?
制服を着替えて、晩御飯ができるまでゴロゴロしよー
——————————————————
「いやぁ、マリアちゃん美人になったなぁ」
「ありがとうございます。」
「今、芸能関係で働いているんだって?ドラマ出演とかしてない?おじさんグッズ買占めちゃうよ」
「お父さんそれはさすがにキモイ」
「え」ガ—ン
「ふふっ。にぎやかですね」
「マリアちゃん。芸能関係ってどんなお仕事してるの?」
「いろいろしていますよ——————————————————
いやぁうまうま。やっぱり、食事処を経営しているだけあってご飯はおいしい。
マリアさんとうちの家族がにぎやかに会話している。コミュ力高いな。
「未来ちゃん。」
「ん?なんですか?」
「未来ちゃんって学校では部活何に入ってるの?」
入っている前提か。
「んー部活は入っていませんねー帰宅部です。」
「そうなの?未来ちゃん運動部に入っているんだって思ってた」
「何でですか?」
「なんか体つきが違うっていうか雰囲気が、強そうだなーって」
強そう?
「未来ねー運動神経いいのに全然外に出ないんだよ」
「えー何かしないの?」
何かって…
「めんどくさいじゃないですか。別に運動選手になるわけでもないですし、そんなに必要ないじゃないですか。」
「もったいない。バスケ部に入りなさいよ。モテモテになるわよ?」
「お姉ちゃんがバスケ部に入っていたからって私も入るかはわからないよ。それにモテたくて高校に行っているんじゃないし。」
「えー」
なんで恋愛方面に行くかなー
「私ももったいないと思うなーせっかくの高校生活何か打ち込めることがあったら楽しいんじゃない?未来ちゃん次第だけど」
打ち込めることかー…
「そうですねぇ、まあ興味が出るものがあったら」
——————————————————
「おはよう、幸、深奏」
「おはよう!らーちゃんっ」
「おはよう、未来。」
「二人共早いねー待たせちゃった?」
「そんなに待ってないよ。まだ待ち合わせ前だし。」
「ちょっと早いけど、もう行っちゃおっか」
「じゃあっしゅっぱーつ!」
あっという間に時間が過ぎ、みんなでお昼を食べに来た。深奏が食べたいと言っていたパフェがあるお店だ。
「このあとどうする?」
「んーゲーセン行く?」
「おっじゃあ、幸 音ゲー勝負しようぜっ」
「いいよー負けないよ!」
わぁ、きれいな火花だー
「あれ?未来ちゃん?」
「未来ちゃんだ!久しぶりっ中学校卒業式以来だね、同窓会に来ないからみんな寂しがってたよー」
「…ひさしぶり、そっかー寂しがってたかーその日ちょうど体調を崩していけなかったんだーごめんね」
「えっ大丈夫?ってもう一か月近く経ってるからもう治ってるか。そっちの二人は高校の友達?」
「うん、そうだよ。それより、こっちに手を振っている人がいるけど大丈夫?」
「ほんとだっ、実は今日はデートなんだぁ」
「そうなんだ、楽しんできてね」
「ありがとう、じゃあまたねっ」
「うん、じゃあ」
同級生はデート相手の人に駆け寄っていった。
「らーちゃん、さっきの中学校の友達?」
「うん、そんなところ。まさか会うなんて思ってなかった」
「未来ってあんまり中学校時代の話しないから、てっきり友達いないんだと思ってた」
「失礼なっ。いるよ」
「えー怪しいなー」
「うるさいなーそれより、行こゲーセン」
——————————————————
「ただいまー」
「おかえり、未来ちゃん」
「あれ、お母さんは?」
「お友達とお茶会だって」
「へぇー」
マリアさんはノパソを開いて何かを打ち込んでいる。
「マリアさんは今何してるの?」
「んー、お仕事」
「大変そうだねー」
「そうね、大変ねー」
——————————————————
「ただいま」
「おかえり、お母さん」
「おかえりなさい、かなさん」
「今、お父さんが夕飯作ってくれてるよ」
「あらっ 本当楽しみねー」
——————————————————
「マリアちゃん、もう帰っちゃうのかーもう少し泊って行ってくれてもいいんだよ?」
「ぜひそうしたいんですが、仕事なのでねぇ」
「そっかぁ、仕事かぁ」
「またいつでも来てくれていいからね。その時はまたごちそうを用意するわ」
「ありがとうございます。楽しみにしてますねっ」
マリアさんは明日の朝に帰るそうだ。私と家を出るのが同時だから途中まで一緒だ。
——————————————————
「それじゃあまたね、未来ちゃん」
「はい、またいつでも来てください」
「ええ。次も美味しいお土産持ってくるから期待しててね」
「はい」
マリアさんと別れ、学校へ向かう。
「おはよう、らーちゃんっ」
「おはよう、幸。あれ?深奏は?」
「まだ来てないよ、休みなのかなー?」
「どうだろう?」
結局チャイムが鳴るまで深奏は来なかった。
遅刻か体調不良…前者だっ
「えー、藤木は今日は体調を崩して休みだ。皆も気を付けて」
えー、残念。それにしても、体調不良か大丈夫かな。
——————————————————
今日のお昼は幸が例の先輩と食べる約束をしていたらしく、一人で学食に来ていた。
何食べよっかなー
券売機で券を買い、おばちゃんに渡し席に座ってしばらく待つ。番号を渡されているのでモニターに表示されたら取りに行く。高校の学食でこういう形式は結構珍しいのかな? 因みに、昼食はかつ丼だ。楽しみー
「こんにちは」
昼食を取りに行って、黙々と食べていたら美人さんに話しかけられた。
「こんにちは、どうしました?」
「昼食をご一緒してもいいですか?」
「…」
周りをみたら結構空いている席はあるが?
「あー、ごめんね。怪しかったね、私。二年の桜威 玲奈。」
「私は一年の石山 未来です。」
「一年生かー どうりで見かけたことがなかったんだ。どう?学校生活には慣れた?」
この人普通に座ってきたんだが…まあ、別にいいか。
「まだあまり…」
「そっかぁ 中学校と高校って結構変わるよねー。私も最初慣れなさ過ぎてよく、登校中迷子になったんだー」
「そうなんですか、私も結構なりますね、迷子。移動教室とかで。いつも友達に助けてもらっています…——————————
この後結局チャイムが鳴るまで話し込んでしまい、二人共大急ぎで教室に戻った。
んー、先輩ゲットだぜ?
——————————————————放課後
「らーちゃん、ごめんー。今日、先輩と帰ることになったんだー」
「そうなんだ。じゃあ、お礼として今度ジュース奢ってね」
「ありがとうっ。それじゃ、また明日」
「また明日ー」
青春してんなぁー
昇降口に来て靴を履き替える。
今日は帰ったら何しようかなー
「未来さん?」
「桜威先輩?」
なんと、一日に二度も会うとは。
「一人?一緒に帰らない?」
「いいんですか?ぜひ」
先輩もどうやら一人のようだ。昼食の時もそうだが、この人 一人が苦手なのかな?
「へぇー、お友達がね。青春だねー」
「そうですねー。こっちは早くくっつけって思ってるんですが。どうやら相手も奥手なようで」
「中学生の時からでしょ?ラブラブだね。」
「そうですね。」
「そういえば、未来さんはもう部活は決めたの?」
「部活ですか。入っていませんね」
「そうなの?」
「はい。いいと思うのがなかなかなくて」
「中学では何部に入ってたの?」
「中学ではー 美術部に入ってましたね。」
「美術部!?てっきり、運動部に入ってたと思ってた。」
「え?何でですか?」
「何というか、こう オーラ?」
「何ですかそれ」
「えー未来さん運動得意そうじゃん」
「そんなことないですよ」
なんでみんなそう思うんだ…
「じゃあさー」
「はい」
「生徒会、入ってみない?」
…生徒会
「んー、そういうのはちょっと…」
「えー、向いてると思うんだよねー」
「そういう先輩は何部に入ってるんですか?」
「私?私は生徒会だよ。」
やっぱり
「てか、生徒会って部活動扱いなんですね。」
「まあ、そうだね。一応部活と掛け持ちできるけど、やってる人は少ないかな。」
へぇー
「で、どう?生徒会入ってみない?」
「お断りさせていただきます。」
「えー、入ろうよー。楽しいよ?」
しつこいなー
結局、別れる途中まで先輩の勧誘攻撃は続いた。
——————————————————
「おはよー深奏、幸。 深奏、体調大丈夫?」
「おはよう、未来。ありがとう 大丈夫だよ」
「おはよー、らーちゃん。昨日はごめんねー」
「昨日?どうしたの?ケンカ?」
「ちがうちがう。昨日ねー幸が———————————
——————————————————放課後
ザワザワ
「ん?なんか騒がしくない?」
「確かに。なんだろう?」
「こんにちはー。未来さんいる?」
教室内の視線が私に突き刺さった。
「らーちゃんっ いつの間にあんな美人さんと知り合いになったの?呼び出されているしっ」
「誰?先輩?」
「昨日、知り合ったんだー。何か用かな?」
「お、いたいた。未来さん、今日一緒に帰ろー」
まさかのお誘い。
「いいじゃん、いいじゃん!一緒に帰りなよー」
「気を付けてね、明日感想を期待しているよ」
深奏、お前は一体何に期待しているんだ。
「いいですよ 帰りましょうか、先輩」
「お友達もごめんねー横取りしちゃって」
「いえいえっ ぜひ担いでいっちゃってください」
担いでって。私は御輿か
「にぎやかなお友達だったねー」
「そうですね、いつも楽しいですよ」
——————————————————
「てか、先輩何しに来たんですか?」
「何しにって、一緒に帰ろうと思って誘いに来たんだ」
「…本当ですかぁ?」
「ばれちゃったかー」
なんとなく、この人についてわかってきたぞ
「いくら言われても入りませんよ」
「えー、お願いっ 未来さんが入ってくれたら絶対盛り上がると思うんだよー」
「いーやーでーすー」
「そこをなんとかぁー」
この日以降、私は後悔した。厄介な先輩に捕まったと。
——————————————————
廊下で
「未来さーん、はーいーろー」
「嫌ですっ」
——————————————————
教室で
「未来さん、未来さんが生徒会に入ってくれたらきっと多くの人が助かるよ。主に私が」
「何を助けるんですか…」
「…疲弊した心?」
——————————————————
放課後
「おっ そのキャラクターって例の?」
「そうですよっ 桜威先輩知ってるんですか?」
「うん。たまに見るよー、主人公が面白いよねー」
「そうなんですよっ 正義感が強いんですけど———————————…
——————————————————
「…なんかいつの間にか仲良くなってない?」
「まあ、ほぼ毎日勧誘に来てたらねー」
「先輩いい人だねっ もう、あきらめて入っちゃったら?らーちゃん」
「ええー」
「てか、なんでそこまで嫌なの?いいと思うんだけどな生徒会。」
「確かに。こんなに頑なになるって珍しいしね。」
うーん。
「…なんとなく?」
「なんとなくかぁー」
「らーちゃんのなんとなくってよく当たるよねー」
「まあ、人間の直感って脳が今まで記録した情報を元に無意識に出されてるらしいからよく当たるのはそのせいじゃないかな?」
「…らーちゃんってたまにどこから持ってきたかわからない雑学言うよね」
「頭いいよねー未来」
「おだてても何も出ないよー、はいグミあげる」
「わぁーい、グミだー」
「ありがとう、未来」
——————————————————
「ただいまー…って」
「おかえり、未来。同じ高校生の子来てるけど同級生?」
「えーっと」
「あれ?未来さん?未来さんだっ」
桜威先輩が手を振ってくる。
先輩の他にも五人…まさか
「こんにちは、桜威先輩」
「こんにちは、未来さん。店名からまさかとは思ってたけど」
「はい、家です。」
「そうだったんだー」
「玲奈、そちらの方は?」
先輩の隣にいた人が質問した。
「あっ紹介するね。一年の石山 未来さん」
「あー、あの噂の」
…なんの噂
「玲奈が最近ちょっかい出してる子。」
「へぇー可愛いねー。僕は三年の生徒会書記西宮 陽十」
「私は三年の生徒会副会長佳永木 璃々」
「同じく三年、生徒会長の弥堂 正輝」
「二年の生徒会役員椿木 静」
「同じく生徒会役員二年環島 透」
わぁーわぁー勢ぞろい。
たぶん夜には名前忘れてるだろうなー
「丁寧にありがとうございます。改めて一年の石山 未来です。何かの集まりですか?」
「そうだよー。体育祭について話し合ってたんだ。」
三年生の確か西宮先輩?が答えた。
「体育祭?」
「そっ うちの学校七月にあるから早めに打合せして大体の進行を決めるんだ。」
へぇー
「せっかくだから石山さんも参加してくれないか?」
「えっと、」
「あー、今ね。競技について話し合ってて、せっかくだから新しい種目を追加しようって話になってね。それで、一年生はまだ生徒会に入ってないから意見を聞きたかったんだ。」
なるほど。うちの学校は三年生が受験期間で11月から引退していくからその時期に生徒会長選挙を行い、役員は先生や元役員の推薦、本人の希望などで決めていく。通常6人で運営、進行していく。だからこの時期ではまだ一年生は生徒会に入っていない。
「それならお役に立てるかわかりませんが。」
「ありがとうっ、未来さん。」
いったん部屋に戻り、荷物を置いてきてから話し合いに参加することにした。一応ノパソも持ってきた。
「それで、候補はおにごっこ、ドッチボール、全学年リレー…他に何かあるか?」
「「「「うーん」」」」
確かに、新しいのを考えるとなると難しいよなー
ノパソを開き、検索欄を開く。
「一応調べてみたら、色々と面白そうなのありましたよ。」
画面を先輩方に見せる。
「どれどれ、タイヤ取り、バケツリレー、妨害玉入れ?」
「へぇー、他にはどんなのある?」
「他にはー…—————————
「ありがとうっ 未来さんのおかげで順調に決めることができたよ」
「いえ、調べるだけなら誰だってできますから」
「いやー、石山さんすごいね。パソコンを使って情報収集、話し合いで出てきた意見をまとめる。確かに玲奈が必死に生徒会に誘うのはわかるなー」
「いえいえ」
「食事も美味しかったよ、また来るね」
「はい、ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
「わぁー店員さんバージョンの未来さんだ」
「気を付けて、帰ってくださいね」
「またねー石山ちゃん」
ガヤガヤ
「賑やかだったわねー」
「そうだね」
「夕飯もう少ししたらできるから居間で待っててね」
「はぁーい」
——————————————————
「おはよう幸、深奏。」
「おはよー、未来。」
「おはよう、らーちゃん。ねぇねぇ昨日のアニメ見た?」
「見てなーい、なんか面白い場面あったの?」
「うんっヒロインがねー」
うんうん、平和だなー
「石山ーいるかー?」
先生?どうしたんだろう?
「ちょっと行ってくるね」
「うん」
「はい、どうしましたか?先生」
「ちょっと、来てくれないか?」
「いいですけど」
何かやらかしたか?
先生の後ろをついていくと、札に生徒会室と書かれている教室前についた。
「連れてきたぞー」
「あっ 未来さんおはよう、昨日ぶりだね」
「桜威先輩?」
なぜか生徒会員勢ぞろいの場所に連れてこられた。
何か嫌な予感がするなー
「実を言うと今年から生徒会役員を推薦から決めるんじゃなくて生徒会長選挙まで希望者から手伝い要員を募集し、生徒会の仕事を手伝ってもらってその中から更に希望者を募って決めることになったんだ。それで、未来さんにも参加してほしくて。」
…なるほど。希望者を募集→生徒会長選挙までお手伝い要員として生徒会の仕事を手伝う→お手伝いに来ていた人の中から希望者を募ってその中から役員を選ぶ。こんな感じかな。
「昨日の話し合いで俺からも参加してくれたら助かると思ってな。今日の朝、皆で話し合って先生に話を通したんだ。」
「私からもお願い、今のところ一年で希望者が二人だけなんだ。」
うーん
「ねっ。お試しだと思って、いいと思ったらこのまま生徒会役員にもなってほしいな。」
桜威先輩……
……「お断りします。」
…シ—ン
「えっ ここは受けるところじゃない!?」
「あちゃー、だめかー」
「えー、手伝ってくれたら助かるんだけどなー」
「まあ、本人の希望だからな、はー忙しくなるなぁ、手伝ってくれたら楽になるんだけどなー」ジ—
「そうだねー忙しくなるねー」ジ—
「また、あの地獄の日々を過ごすのか…うわー」ジ—
圧を感じる。
「どうしてもだめかな?未来さん」
「そもそも、なんでそんなに私にこだわるんですか、先輩」
「んー、なんとなく?」
なんとなくって
「石山、先生からも頼むよ。本音を言うと本当に希望者が全くいないんだ。このままだと、来年の生徒会が成り立たない。」
えーそんなこと言われても知らないですよー
「仕方ないですね。じゃあ、生徒会のお手伝いとしてなら参加します。ですが、生徒会には入りません。」
譲るならここまでだ。
「本当っ!」
「っ」
先輩が勢いよく近づいてきて手を握ってきた。
「あ、あくまでお手伝いとしてなら」
「ありがとうっ うれしいよ!」
「よかったー、これで三人確保。安泰、安泰」
「石山さん、明日の放課後、顔合わせがあるからよろしくね。」
「はい、わかりました。もうそろそろチャイムが鳴るので戻りますね。」
「そうだな、それじゃあ今日は解散ということで。」
——————————————————次の日・放課後
「らーちゃん、今日は確か生徒会の顔合わせだっけ?」
「うん、そうだよ。」
「まさか、あんなに嫌がってたのに手伝うことになるとはねー」
「自分でも若干驚いてるよ。それじゃあ、また明日ー」
「「また明日」」
——————————————————
「あっ 未来さん」
「こんにちは、桜威先輩、椿木先輩」
廊下を歩いていると、二人とばったり会った。
「今から向かうところ?」
「はい、先輩方も?」
「そうよ、一緒に行きましょうか」
——————————————————
生徒会室につくと先輩方以外に見たことがない二人がいた。
この二人が希望者かな?
「全員集まったか。それじゃあ、自己紹介から。俺は三年、生徒会長の弥堂 正輝」
「私は三年の生徒会副会長佳永木 璃々」
「僕は三年の生徒会書記西宮 陽十」
「二年の生徒会役員椿木 静」
「同じく生徒会役員二年環島 透」
「同じく生徒会役員の二年桜威 玲奈、よろしくね。」
「よろしくお願いしますっ!」
お、横の見るからに元気いっぱい君が元気よく返事した。
「俺は、一年花藤 大ですっ!中学でも生徒会に入ってました!よろしくお願いします!」
「同じく一年志波 勇樹です。よろしくお願いします」
「一年、石山 未来です。よろしくお願いします。」
「よろしく、今日は顔合わせだけだからこのまま帰宅しても交流しても自由っ。てことで、俺は部活に行ってくるなっ」
「ちょ、会長自ら行ってどうするんですか。ここは先導して親睦を深めていくところでしょう。」
「別に大丈夫だろ。雰囲気的に険悪ではないし、こういうのは、少しずつ互いをよく知っていくのがいいんだ」
「地味に説得力があるのがムカつきますね」
「それじゃあ、あとはよろしくっ」
…会長ってあんな感じなんだ。
「はははっ 面白い会長ですねっ」
「ごめんねー。まあ、さっき会長が言ってた通り交流するのも帰宅するのも自由だから。好きにしてもいいよ。」
「はいっ ありがとうございます。」
——————————————————約一か月後・体育祭当日
ドンッドンッ
「暑いねー」
「そうだねー」
「二人共っ もっとやる気出してっ」
「「えー」」
出番まだだからいいじゃんかー
「そういえば、生徒会ってリレー競争出るの?」
「んー、出るらしいよ」
「らーちゃんは出ないの?」
「出ないよー」
「えー、残念」
「まあ、先輩方の応援だけってことで」
「てか、幸。リレーに例の先輩出るんじゃないの?」
「うんっ しっかり応援しなきゃ」
「二人共頑張れー、こっちは高みの見物してるから。」
二人共部活に入ってるから何も入ってない自分はテントの下で寛ぐ気だ。てか、うちの学校だいたいの人部活に入ってるから実質独り占めにできるな。
——————————————————
次は、リレー競争かぁ
ほとんどの人はリレーに出るために運動場を駆けていった。この組のテントの下は自分一人だ。
緊張している人、楽しそうにしている人、めんどくさそうにしている人…体育祭ではいろんな人の顔が見れる。
周りに人がいないためか周りが空洞に感じられる。暗闇の中に取り残された子供のような、何かをやらかしたときに孤立していくようなそんな感覚…感覚は地道に自分の体にまとわりつき、蝕んでいく。
「ダメだなぁ」
さっきまで満たされていたものが零れ落ちていく、奪われていく。
いくら入れても、いくら出しても、どう調整しても決していっぱいにはならない。
底なし沼だ。あがいたらあがいただけ沈んでいく。けれど、あがかなければ何も変わらない。上を向いたら星空が見える、届かない遠くにある輝き…隕石として私の星に落ちてくる時もあって、解析すれば私と共通することはある。けれど、共通しているだけで決して隕石が私の星にあるものと同じ物質ではない。私の星に置くことはできるけど、私の星の一部にはならない。結局のところ外来から来た異物だ。私の星はいつになったら、豊かになるだろうか?それともいつまでたっても荒れ果てたままなのだろうか?
一体、どうすれば——————————…
「未来さん」
「はっはい!」
びっくりして咄嗟に返事したら声が裏返ってしまった。
「うわっびっくりした。」
「す、すみません」
「ふふっ 大丈夫だよ。ボーっとしてたみたいだから心配で声かけたんだ。」
「そうだったんですか。ありがとうございます」
「周り誰もいないね」
「そうですね。うちのクラス私以外全員部活に入ってるみたいで」
「だからかー ここ、特等席だね。ちょうど真ん中で全体がよく見える。」
「そうですね。次のリレー桜威先輩も出るんですよね。」
「うん。応援よろしくね」
「はい、頑張ってくださいね」
「勝てるかなーうちの運動部結構強いし…」
「えーやる前から気弱ですねー」
「ねえ 未来さん」
「はい」
「もし、勝ったら 何かご褒美くれないかな?」
「…ご褒美ですか」
「うん、ご褒美」
「そうですねぇ…」
「ダメ、かな?」
…
「仕方ないですねぇ、じゃあ手料理振舞ってあげますよ。」
「ほんとっ!?」
「はい、とっておきの。だから、頑張ってくださいね。」
「うんっ 楽しみだなー」
「もう勝った気なんですか?」
…落ち着くなぁ
「それじゃあ、もうそろそろ行くね」
「はい、しっかり応援してますねー」
先輩は生徒会の人達の方へ駆けて行った。
——————————————————
…結果、一位 陸上部
二位 サッカー部
三位 "生徒会"
——————————————————
「いやぁ、負けた負けた」
「おつかれー、惜しかったねー深奏あと少しで抜かせたのに」
「悔しいよー、次は絶対に負けないっ」
「幸もすごかったね、今までで最速じゃない?」
「うんっ 楽しかった。」
「頑張った二人にはこのアイスを進呈しよう。」
「「ありがとうっ」」
さっき、父が持ってきていたクーラーボックスから拝借してきた。
「そういえば、生徒会すごかったね。三位だって」
「あの二年の先輩すごい早かったね」
「椿木先輩だよ。なんか外部の陸上に入ってたみたい。」
「へぇー、だからあんなに早かったんだ」
「桜威先輩も早かったよね」
「てか、生徒会全員早かったね。何かコツがあるのかな?」
なぜか深奏が燃えている。
——————————————————
「あっ 未来さん」
「先輩」
帰る準備をしていると先輩が話しかけてきた。
「いやぁー 負けちゃったー」
「何言ってるんですか、三位って十分すごいですよ」
「えー けど、せっかくの未来さんのご褒美がー」
「…今度、生徒会でうちに来てください。御馳走しますよ」
「えっ ほんとう!?」
「ええ。打ち上げって感じで」
「ありがとうっ」
「いえ。」
「それじゃあ、後片付けあるから行ってくるねっ」
「いってらっしゃい」
——————————————————
「おはよう 幸、深奏」
「おはようっ らーちゃん」
「おはよう、未来」
…いつもと変わらないなー
——————————————————放課後
「今日もお手伝い?」
「うん、二人共。また明日」
「また明日ー」
——————————————————
いつものように生徒会室にいったら、先生がいて今日の会議は中止だったらしいことを伝えられた。なんでも、先生方の会議があるらしく私に伝え忘れていたらしい。謝られた。
まあ、残っていても何もすることはないし、さっさと帰りますか。
「…————————————」
「ん?」
廊下を歩いていると声がした。
誰かいるのかな?教室の札をみても何も書かれていなかったので空き教室だろう。
だれだー?
「桜威さんっ 付き合ってくださいっ」
…なんとっ!?
告白現場に遭遇するとは予想外だっ
しかもよりによって知り合い関連とは…咄嗟に隠れてしまった。
「ごめんね。」
「そ、そうですか…」
「思いを直接伝えてくれたのはうれしい。けど、すずかさんにはもっといい人がいるよ。すごく、勇気のあることをしたんだもん。」
「はいっ ありがとうございましたっ」
足音が近づいてくる。
幸いに扉をでて左に隠れていたので右側に向かっていったすずかさん?には気づかれなかった。
見つかる前に、さっさとたいさ「誰かいるよね?」
……気分は両手を挙げて自首する犯人。
「はい…すみません。たまたま通りかかったら。」
「未来さん?ははっ 見られちゃったかー」
「すみません…」
「いや、大丈夫大丈夫。学校だし、この時間帯ならまだ誰かいるのは当たり前でしょ」
「はい…」
「びっくりした?」
「まあ、はい。そりゃ、知り合いが告白されている場面に居合わせたら。よくあるんですか?」
「うん、今年に入って5人目かな?」
「うわー モテますね。」
「う、ん。てか、何も疑問に思わないんだね。」
「何がですか?」
「だって…女の子に告白されているって」
あー…
「それがどうしました?」
「え?」
「別にいいと思いますけどね。世の中には絵に興奮する人、物に興奮する人がいるんですし。同性に恋情を抱くなんて珍しくないんじゃないですか?今まで世間体がそれを悪だって決めつけていただけで、排除されていただけで」
—————…「未来さんってさ、告白されたことある?」
先輩の問いの意図が分からず思わず先輩を見る。
先輩の碧色の目がまっすぐと私の瞳を見つめてきた。
「…ありますよ。」
「どうした?」
「普通に断りましたよ。」
「なんで?」
「…別に好きでもない人と付き合う意味はないでしょう。」
「ほんとうに?」
っ…
「…どうしたんですか、今日の先輩なんかおかしいですよ」
私の横にあった片手を先輩が両手で持ち上げ包む。
「未来さんってさ…」
ソラセ
「はい」
アブナイ
「目に…」
キケンダ
「目に…"感情がないよね"」
「…」
「体育祭の時もそうだった。未来さんのクラス、学年優勝して賞もらってたよね。
その時、未来さんのクラスの人達はとっても喜んでた。」
「そうですね。男子に至っては、学級委員長を持ち上げて先生に叱られてましたね。」
「ふふっ そうだね。
…あの時のみんなの目は輝いてた。未来さんのクラスだけじゃない、賞を貰えなかった人たちも悔しい思いはしたと思うけど、それでも輝いてた。けど…未来さんの、未来さんだけ…」
「目が輝いてなかった?」
「…う、ん」
「…先輩はおかしいと思いますか?」
「…ううん、思わないよ」
「…どうして?」
「知ってるから。」
「知ってる?」
「うん 小さいころから見てきた。
未来さんの目ってさ、うちの親…父親と一緒なんだ。」
「父親と?」
「そう、私の家ってね自慢じゃないけど結構歴史のある家でね、その名残で両親は家同士のお見合いで…政略結婚だったんだ。」
「お見合い…」
「そう、お見合い。
だからかな、小さいころから冷めてるのはわかってたんだ。
でね、11のころ、リビングで珍しく父と母が向かい合って座って話してたんだ。
私は、それが珍しくて幼いながら隠れてみてたんだ。
…そしたら、父が離婚届を母に見せながら言ったんだ。
『離婚しよう』
って」
…離婚。11のまだ小学生だった頃の先輩はどう感じたんだろうか?
「理由は、母親の不倫だったみたい。
相手も結構偉い立場の人でね。家を巻き込んで大騒ぎになったんだ。
もちろん母親有責で離婚、親権は父になったんだ。だけど、離婚後も父は家にはあまり居なかった」
「…先輩」
「それでね」
「先輩っ」
咄嗟にもう片方の手を先輩の両手の上に重ねる。
…先輩の目からは涙が溢れていた
「ごめんね」
先輩が目をこすって涙を拭こうとするので慌てて制し、ハンカチを渡す
「ごめんね」
「…」
私は顔を左右に振る。
「私が言いたかったことは未来さんの目が…——————————————————
「らーちゃんっらーちゃんっ」
「おわっ」
「どうした未来ぼーっとしてどこか体調悪いのか?」
「いや、そういうわけじゃ」
「もーっ真面目にやって、らーちゃんっ」
今日は、課外活動でテントで泊まり有りの山登りに来ている。山登りって言ってもそんなしっかりしたものではなくどっちかというと丘登りという方が正しい。グループに分かれて丘を登り、途中良いと思った場所の風景などを撮り学校に帰った後、グループで一枚とっておきの写真を選び、学年でよいと思った写真に投票し合い1位から3位を競う。そんなイベントだ。
「えーっそこまで本気にならなくてよくない?」
「「よくないっ」
「だって、優勝したらあのナーのお菓子詰め合わせがもらえるんだよっ」
なんで優勝賞品に高級菓子を持ってくるかなぁ?
「未来、こういうの得意そうじゃんっ期待してるからね」
「らーちゃんっ頑張って」
「えー しょうがないなぁ」
仕方ない、友達のために頑張りますか。
「みーちゃんっこの風景よくない?」
「いいね。どんどん撮ってこっ」
途中、こっちがなんとなくいいと思い二人と別れ一人で行動する。
少し奥を歩いたところで水の音が聞こえてきた。
水の音を辿っていくと…
「滝?」
パワースポットなどにある勢いのある滝ではないけど静かで、とても…
「綺麗」
木々の間から光が漏れその光が水に反射し、滝から光が流れているみたいになっている。
カシャッ
…うん、我ながらいいのが撮れた。
水面に近づくとやはり自然にあるからか水が澄んでいる。
目に感情がない…か。
——————————————…私が言いたかったことは未来さんの目が離婚届を突き付ける父親の目にそっくりで…不倫をした母親に冷たくするのは当たり前だけど、それでも、まるで最初からこうなることはわかっていた、けれどこうなった今でも相手に微塵も興味、関心がない…相手に向ける感情がない。
そんな目」…——————————
…考えたことはある。この目はなんだと。
これは遺伝でそういう風に見えるだけとか…けれど、父も母も、姉も祖父母もマリアさんも今まで見せてもらったアルバムの写真でも…わたしと同じ目をした人がいなかった…
私には、私自身には———————…私自身の感情がない…—————————
人の感情はいろんなところで見かける。学校や家、駅でもショッピングモールでも人と結びつくものには感情がある。
私の家は食事処だ。小さいころからいろんな人を、感情を見てきた。
だから、感情を知っている。
感情を向けられたなら今まで”見てきた”感情の選択肢の中から適切な感情を返せばいい。
そうすれば、みんな笑っていた。どこもおかしくなんてなかった。今までも、これからもそうすればいい…そう思っているんだ。
なのに、なんで…今になってっ私の体の中心が…息苦しい…
私の中の空洞は満たされてきたはずだっいくら零れ落ちようとも、いくら涸れようとも
いや、満たされているのなら、私自身に感情があるはずだっ
感情をっ…感じて———————…
ブゥーブゥー
———……いつの間にか手が水に触れていた。
「も、もしも「らーちゃんっどこにいるの!?もうみんな集合場所にいてっ「幸、落ち着いて。もしもし、未来?」うん」
「よかった。別れた後、一回電話したんだけどつながらなくて集合場所に来てもいないから、みんなで探してたんだ。とりあえずつながってよかったよ。ケガはない?」
「うん、ないよ」
「ほんとによかった。未来、集合場所に帰ってこれる?」
「うーん、結構暗くて…無理かな?」
「わかった。何か目印ある?」
「えーっと、滝があるよ。」
「おっけー、先生が今から向かうから待っててねって」
「わかった」
「帰ってきたら、幸の機嫌とってよーもう本当に心配してたみたいで涙目だよ。頑張ってね」
「えー」
「頑張れ」
少しの間深奏と通話しながら待っていると、奥からライトを持った先生が見えた。
その後、先生に説教されながら集合場所に帰ってき、幸には罰として今度ケーキを奢ることになった。
——————————————————
今日も今日とて生徒会のお手伝いに来ている。
生徒会室につくと中には、大と椿木先輩が来ていた。
「お、遅いぞー未来っ」
「遅いって…まだ全然集合まえじゃん…」
「こんにちは、未来さん。この間、課外活動だったらしいね。」
「はい、楽しかったですよー」
「俺、結構いい写真撮れたんだー…もしかしたら、優勝しちゃうかもしれないねー」ドヤッ
「いいのは撮れたの?」
「はい、と言っても迷子になって先生に怒られちゃいましたけど…」
「そうなの、大丈夫だった?」
「はい」
「あれ?無視っ!?無視っ!?」
「先輩はどうでしたか?学校生活」
「特に変わったことはなかったわねー」
「えっほんとにこのまま無視されるのっ!?もしかして俺、今透明人間!?」
うるさいなー
「大、うるさい」
「えっ」ガーン
「ふふっ 三人とも座ってね」
ありゃ、おもちゃで遊んでいたらいつの間にかみんな集まっていたようだ。
「それじゃあ、今日の生徒会活動を始める。っといっても特にやることないんだなー」
「そうですねー 生徒会長選挙があるくらいでしょうか?」
「そうだね。三年生は引退だ。どこか打ち上げ行く?」
「それなら、石山食事処はどうかな?未来さん。いいかな?」
「別に大丈夫ですよー。うちの親に言ったら貸し切りにもできますし。」
「えっほんとう?大丈夫?」
「ええ。食事処って言ってもこじんまりとしてますからねー」
「打ち上げは、石山食事処で決定として。生徒会長選挙って確か今年は今のところの希望者は桜威だけだったか?」
「そうですね。このまま行けば、生徒会長確実ですね。」
「えー そんなにいないの?」
「いや、うちのクラスにいたはずだから明日聞いてくるよ」
「よかった、よかった。それじゃあ、今日はこのくらいで解散しようか。日が落ちるのも早いし」
「そうですね。それじゃあ、解散」
「「「「ありがとうございました(ー)」」」」
——————————————————生徒会長選挙前日
「未来さん、この後ちょっといいかな?」
「ん?何ですか?別にいいですけど」
体育館でみんなで最後の打合せをしていると桜威先輩に話しかけられた。
——————————————————
先輩の雰囲気的に周りに人がいない方がいいと思ったので体育館外に移動した。
「ごめんね、時間取らせちゃって。忙しかったでしょ?」
「いえ、一応ですし私がいなくても大丈夫ですよ。」
「そう…」
先輩が下を向く。
…しばらく沈黙が訪れる
「先輩。」
先輩は顔を上げる。
今度は私から先輩の瞳を見つめる。
「先輩のいう通り、私には私自身の感情がないんです。
いくら、満たそうとしても壊れた花瓶みたいに零れ落ちていくんです…」
先輩が目を見開き、すぐに伏せ下を向こうとする。
それを阻止するために先輩の手を握る。
「未来さん…」
先輩が顔を上げる。
先輩も私の黒色の瞳を見つめてくる。
「…だから…先輩、これからも生徒会を…先輩を支える代わりに…私に教えてくれませんか?」
「…え」
「感情を…私は今までいろんな感情を見てきました。
感情を調べて、どうにか自分も感じようとしました、そうしたらわかる気がしたんです…けど、結局はわかった気になってただけでした。…だから、先輩が教えてください。」
先輩の前に移動し、向き合う形になる。
「…今まで、こんなこと誰にも話したことがなかったんです。
踏み込んでくる人はいましたが、どうしても警戒し、避けてしまう。
けれど、不思議と先輩だと大丈夫なんです…。
だから…これからもよろしくお願いしますね…桜威先輩…」
未来さんは眉を下げ、口角を上げる。
夕日越しに見えているからか、不思議と綺麗に…———————————
「っ」
熱い…苦しい…風邪をひいたわけでもないのに、どこか詰まるのを感じる。
「…先輩?」
これは…
「もちろんっ」
気のせいだ…そう思いたいけど…
「これからもよろしくね。未来…」
「さっそく呼び捨てですかー?」
「だめ?」
「いいですよ」
「ふふっ ありがとう」
今の笑っているあなたは、本心ではない。
夕日に照らされてお揃いの赤くなった顔も、あなたはどうも感じないんだろう。
私は、こんなにも苦しいともがいているのに、あなたは感じることはできない…
きっと、きっと…いつか…あなたが感じることができるようになったのならば…
あなたの傷ついた花瓶を直すことができたのならば…
「先輩、戻りましょう。」
「そうね」
覚悟していてね…
最後まで読んでくださりありがとうございまた。
ここからは蛇足です。あと作者の解釈があります。
最初の主人公の黒い鳥といったのは自分自身の目です。
目から冒頭の…———————人の感情ってなんだろう、って主人公が考え出しています。
人によっては主人公は感情あるだろっってツッコむ人がいると思いますが、実を言うとその通りです。
だって、感情のいない人間なんていないでしょう。そんなもの機械とか無機物などでしょう。
タイトルの「感傷」というとおり、感情が傷ついているんです。だから、感じようとしてもどこか息苦しさを感じてしまいそれを喜怒哀楽ということを認識する前に体が危険信号を出して止めてしまうんです。
主人公のお相手"桜威玲奈"は最初学食で主人公を見たときに自分の父親と主人公を重ねています。
だから何が何でも主人公を自分の近くに置こうとあがいているのは、幼いころから親の愛情をあまり受けずに育ったため親の愛情に飢えている自分を満たそうと主人公をそばに置き、あわよくば自分に愛情を向けて満たされようとしているからです。あっもちろん無意識ですよ。
主人公が例えた星空は感情の輝きです。そこから、玲奈の目の輝きにつながります。
簡単な構図にすると 星の輝き=感情の輝き=目の輝き です。
隕石は人の交流にともなって感情を知っていくことを表しています。
解析すれば共通する…同じ人だから共通してることはありますよね。けれど、結局は他人の感情…感じ方は違います。だから、主人公は自分の一部にならないと言っているんです。
私の星は、感情の器を表しています。そこで作中の壊れた花瓶につながります。そして、タイトルの感傷につながります。環境破壊って星を壊していることを表しますよね。うまく言えませんが環境が壊れていくと、大地は枯れていく…いくら植物を植えてもいくら水を綺麗にしてもそれはじわじわと蝕んでいく、止まることはない…という感じです。なんとなく、わかってくれたでしょうか?
随時、思い出したら書いていきます。
いやーハッピーエンドになってほしいですねー
主人公の赤面顔とってもかわいいんでしょうねー