初任務と補給事情
お久しぶりです。
仕事が忙しすぎて全然更新できませんでしたが、今日から再開です。
翌日修理を終えたM45A1を受け取ったあと俺はバーモンに連れられて最初に転移した森に来ていた。理由はバーモンと一緒にゴブリンの討伐の依頼を受けたからだ、今回の依頼はゴブリン3体の討伐だ。討伐をした後は体内にある魔石を採集してギルドに持って帰ると討伐依頼完了らしい。
俺は革製の鎧を着て銃を構えながら慎重に進んでいく。バーモンは俺の後方にいるが今回の手助けは必要最小限にすると事前に言われている。理由を聞いたところ
「困難に打ち勝ってこそ人は成長できる、これはその第一歩だ」
と言われた。確かにその通りではあるが、殺されかけたのにいきなり1人で討伐とはいくらなんでもスパルタすぎる気がするが、ここは俺の常識が通用しない世界だ。きっとこの世界では当たり前なんだろう。
この森は古代都市の遺跡とザラックの中間にありあり、生息する魔獣も初心者向けから上級者向けまで幅広いランクの生物が生息しており、その中でもゴブリンは駆け出しの冒険者の相手らしく、殆どの冒険者が最初に狩るのがゴブリンだという。
だがいくらゴブリンと言っても油断は禁物である。実際に中堅ほどの練度を持ったパーティーに対してゴブリンが大群で襲いかかりパーティーが壊滅した事例も報告されている。簡単に倒せるが舐めてかかると足元をすくわれてしまうのだ。
俺はそうなりたくはなかったので準備には時間をかけた、昨日武器を修理に出した後バーモンや魔獣の生態に関する本を見てゴブリンについての勉強を行なった。奴らは常に複数体で行動して俺を襲ったゴブリンは斥候的役割を持っていたらしい。斥候がやられれば当然警戒度合いは上がり、常に複数体で行動するようになるので討伐の難易度は上がる。
どうやら今回の依頼は不特定多数の冒険者へのばらまき依頼らしく、この森に生息しているゴブリンの数を減らす目的もあるのだという、実際にここにくる途中他のパーティと交戦したゴブリンの死体を複数目撃している。そんな中俺は警戒しながら進んでいる、前回と同じ目に遭うのは何としても避けたいからだ。
奥に進むにつれてゴブリンの死体の数が減っていき、俺は拳銃のセーフティーの最終確認と弾薬の確認を行なった。弾薬をフル装填したマガジンが予備含めて2つ、薬室に装填されている弾薬込みで全部で15発なので無駄撃ちは避けたいと思っているがハンドガンという特性上どうしても近距離での戦闘するしかないうえに、今の俺の体は10歳程度まで小さくなってしまっているので反動制御が完璧とは言えない。つまりワンショットワンキルが要求されるのだ。正直難易度は高いが仕方がないと割り切って進むことにした。
20分ほど進むと前方から何か物音がした為俺は姿勢を低くしつつ進む速度を落とした。風向が風下であることを確認した後音を立てないように進んで行き、茂みの間から奥の様子を覗くとゴブリンが3体周囲を警戒しているのが見えた。
「(弓と槍と剣がそれぞれ一体か……)」
俺はさらに姿勢を低くして近くの倒木の枝に銃を置き銃本体を固定し、弓を持ったゴブリンの頭部に照準を合わせた、距離は約15メートルであり当てれない距離ではないと判断した俺はグリップを強く握り引き金を引いた。発射された弾丸は狙い通りゴブリンの頭部に命中し頭部がザクロのように弾け飛んだ、俺は間髪入れずに槍持ちに照準を合わせて引き金を引いた。一体目と同様に頭部が弾け飛んだのを確認し、最後の一体に照準を合わせようとしたが、残された一体はこっちの方に走ってきていたのだ。俺はすぐに撃ち込んだが狙いは逸れ肩に命中してゴブリンはその場に倒れた。
俺はすぐに立ち上がりゴブリンの方を見ると、そいつは苦痛で顔を歪ませていたが、残った片方の腕で剣を杖代わりにして起き上がろうとしたので、追加で2発を撃ち込みそのうちの一発が頭部に命中し物言わぬ肉塊となった。俺はすぐに短刀を取り出して倒したゴブリンの胴体から魔石を取り出すと袋に入れて死体を1箇所にまとめてその場を後にした。
正直肉を捌くなんて料理以外でしたことがない俺にとってゴブリンというか、原型が残っている生物を捌くのは大変だった。血液と内臓、ゴブリンの体臭が合わさっていた為、キツイなんてものではなく2回ほど嘔吐してしまった。
「おえっ……気持ち悪い……」
「初めてにしては上出来だな、だがまだひよっこなのは変わりないからこれからもっと頑張るんだぞ」
バーモンからそう言われ俺は少し嬉しかった。人に褒められた経験があまりなかったのと、命の恩人であるバーモンから褒められたのは素直に嬉しいと思ったからだ。その後は来た道を戻り街に帰った。
街に戻った後俺はギルドに戻り魔石と交換で報酬を受け取った。少額ではあったがこの世界で初めてもらった報酬はその見た目以上に重く感じた。
その後、俺は部屋に戻りあることに気づいた。そう弾薬の補給をどうするのかということだ、この世界の文明レベルで作れるかどうかわからないのが一つと、そもそもこの世界に無煙火薬が存在するのかという問題があるのをすっかり忘れていたのだ。
「武器屋の店主に聞いてみるしかないよな……補給できないとなるとかなりまずいな」
この世界の銃器の発展レベルは現状マスケット銃レベルであり、さらに点火方式には地球で使用していた火薬と火打石ではなく、粉末状に加工した魔石や魔物の素材と自分の魔力を流し込んだ魔石を使って発射させる方式を採用しているのだ。
俺も一応、魔術適性はある為使えないわけではないが、マスケット銃は再装填に時間がかかる為集団相手には不向きである。その為金属薬莢の銃器を使いのだが、まずはそれが製作可能かを確認しなければならない。無理だった場合はこれ以上の使用は難しいだろう。
そう思った俺は翌日、店主のところを訪ねた。店主は俺からの相談に「難しいだろうがやってみよう、数日後にまた来てくれ」と言われ、俺は弾丸を数発渡し店を後にした。
その間俺はギルドの資料室や書店に行きこの世界に関する本の購入や簡単な依頼を受けることにした。討伐系以外にも清掃の手伝いや薬草の採取、家出したペットの捕獲など複数の依頼を受け、数日後再び店を訪れると店主は満面の笑みで迎えてくれた。寝不足気味なのか目の下には大きなくまができていたが。
「出来たぞ!いやぁ俺も何回か作ろうと思って失敗してしまったが、現物があったおかげで早く作れたんだ、感謝するぞ坊主!!」
ハッハッハーと興奮気味で話してくる店長に若干引いてしまったが、店長に聞いてみるとどうやら試作品ができておりそのテストをしてほしいとのことだ。渡された弾丸は見た目こそ普通の弾薬だが店主曰く
「中に入っている黒い砂と、筒のけつについていた火打石は再現できなかったが、代わりに砂状にした魔石と発火用の魔石を入れてある、威力も抑えた量にしているし、外装と弾丸は坊主が持ってきたのを元に作ったぞ、もちろん寸法と強度もしっかり合わせてある」
とのことだ、この世界の技術力は侮れないと思いながら俺は店の裏庭で店長から貰った弾丸を装填し魔力を込め的に照準を合わせ引き金を引いた。撃発と同時に放たれた弾丸は破裂音を伴い無事発射された。硝煙と似ても似つかない匂いを感じながら的を確認すると見事にど真ん中を撃ち抜いていた。拳銃の状態を確認したが、特に亀裂が入っていることもなく店長にも確認してもらったが問題なしとの事だった、これでこの世界における弾薬補給の問題はなんとか解決することができた。
いやぁ…ほぼ一年開くとは思ってなかったですね、自分でもびっくりです。
仕事の方がひと段落したので更新再開するわけですが、また年末まで更新できない可能性があるのでそこはご了承ください