表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/151

92 聖イルミナ共和国

「それでは気をつけて行ってらっしゃいませ。お手紙のことはお任せください」


「はい。ありがとうございました」


 白金貨五枚とミスリル宝石をもらって僕たちはすぐに国境の入口である門へと向かう。


 国境への出入りについて商人の場合は積荷のチェックはかなり厳しくなるそうだけど、観光客や冒険者となるとそのチェックはそこまでではない。


「はい、次の方。観光ですか、それとも仕事ですか?」


「僕たちは聖イルミナ共和国へ移りたくてやってきました」


「あー、移住でしたか。ようこそ、聖イルミナ共和国へ。みなさんにイルミナ神のご加護があらんことを」


 そう言って、首に下げていた十字架をおでこにあてて祈ってくれる。


 さすがは宗教国家だ。こういう所から徹底している感じがする。


「先に冒険者ギルドで移籍手続きをされるといいですよ」


「はい、ありがとうございます」


 簡単な手荷物チェックを終えて門を抜けると大きく美しい建物が目に入る。


「すごいねー」


「あれがイルミナ大聖堂よ」


 白を貴重とした壁に上部は青色が配色された造りになっている。シンプルな美しさとその大きさに圧倒される。


「冒険者ギルドでの移籍登録が済んだら、大聖堂へ行って二人の洗礼ね」


 とりあえず、とても疲れているので早く休みたいところだけど、洗礼を受けないと宿屋の割引とかも受けられないので洗礼の優先順位は高いらしい。


「混んでないといいんだけどな」


「神官の数は多いから待つことはないと思うにゃ。お布施のオプションをいろいろ聞かれるかもしれないけど、とりあえずは保留にしておけばいいにゃ」


「お布施のオプション」


 とてもダークなキーワードを聞いた気がするけど、そのあたりはアルベロとキャットアイに任せておこう。


 洗礼ではイルミナ教信者の証である十字架のネックレスを事前に購入し、首から掛けて十字架をおでこにあてたまま頭を下げる。すると神官さんがお祈りの言葉とともに聖水を頭に振りかけるらしい。


 その後は、個室に連れて行かれイルミナ教の素晴らしさやお布施の必要性などを説かれるとのこと。


「何を言われても検討しますでいいにゃ」


「う、うん。わかった」


 ちょっとこわいけど、宗教なら多かれ少なかれ、似たようなことはあると思うんだ。


「何だか楽しそうだねー」


「そんな感じはしないけど……」


 ということで、僕たちは無事に聖イルミナ共和国へと入ることができた。


ちなみに大聖堂はあるけど、ここは首都ではない。ここは王国側からの玄関ということで、見栄えもよく観光的に整備されているとのこと。


 そして、イルミナ大聖堂には聖女になるべく修行を積んでいる聖女見習いがいるそうだ。


 王国から訪れる観光客もイルミナ大聖堂へ行き、聖女見習いを見るまでが一連の流れになっているらしい。


「聖女様、観光資源なんだね」


「聖女見習いにゃ」


京都にいる芸鼓さんになる前の舞妓さん的な意味合いなのだろうか。


「それぞれに信者のファンがついているのよね」


アイドルだろうか……。


「推している聖女見習いにプレゼントやお金を貢ぐらしいにゃ」


「プレゼントは大聖堂前にあるホーリー屋で購入したものに限られるのよね」


 ホーリー屋……アイドルショップか。


「確か貢ぐお金も絵が描かれたカードと引き換えだったわね」


「推しが聖女になると鼻が高いらしいにゃ」


 しっかりとイルミナ教が上前をはねる商売になっている。アイドル商法を異世界で感じることになるとは驚いた。


 まあ、僕たちにはあまり関係のない話だろう。ここには観光に来たわけでも、推し聖女を見つけに来たわけでもない。少しゆっくり休んだら首都のある方へ向かうことになるだろう。


 この場所は王国から近いので、何となく留まるにしても数日にしておきたい。


「あっ、丁度、聖女見習いがいるみたいね」


 イルミナ大聖堂へと歩きながら、観光客へ向け笑顔で小さく手を振る姿がある。


「アドリーシャ様ー!」


「おお、あれは聖女候補ナンバーワン、麗しのアドリーシャ様だ」


「な、なんと神々しいお姿なのだ」


 白を基調とした派手すぎない衣装にに身を包み歩いていた。それはまるで、自分の姿をしっかりアピールするかのようにゆっくりと歩を進める。


「聖女になるのも大変なんだろうね」


「表に立つ人だから、それなりの容姿も必要だし、カリスマ性のようなものも試されているんでしょうね」


 カリスマ性、物販や貢金の成績ということか。


「ふぇー、何だか、大変そー」


 知らない方がいいこともある。僕たちには関係のないことだけど、その、何というか頑張ってもらいたい。


「じゃあ、まずは冒険者ギルドね」


「移籍登録だっけ」


「そうそう。ルリカラがイルミナ教にどんな風に伝わるかが気になるわね」


「あー、そういえば、イルミナ教には聖獣信仰もあるんだったね」


 そうか。ルリカラ、ちやほやされちゃうのだろうか。


 そんなことを考えながら、冒険者ギルドへ入ると、王国の冒険者ギルドとは違って忙しくないというか、のんびりした雰囲気を感じた。


 あー、そうか。ここは観光メインだからクエストの数も少ないのかもしれないね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ