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87 追手

 それから数日が経過した頃、ついに追手がやってきた。


 たまたま野営の準備で街道から離れていたので、こちらには気づかずにそのまま進んでいったらしい。


「残念ながら、アローヘッドだったにゃ」


「一人ですか?」


「一人だったにゃ」


 音や振動を敏感に感じとる猫人族のキャットアイだからギリギリ気づけた。


「そのまま進んで行ったということは、アローヘッドはこちらに気づいてないのね?」


「さすがにこれだけ離れていたら、アローヘッドでも無理にゃ」


 やはりこの出来る猫さんは、アローヘッドが気づかないだろう場所までしっかり離れて野営の準備をさせていたようだ。なおかつ、自分は街道を進む追手を感じとれる場所。


 味方がとても頼もしい。


「逆にこっちから追いかけて倒しちゃう?」


 いつにも増して好戦的なルイーズさん。


「それも手にゃけど、このままアローヘッドを進ませて疲れさせるのも手だと思うにゃ」


 どうやら、捜索しながら馬を単騎で進めるのはかなり疲労するらしい。


 考えてみれば、僕たちは役割分担をして野営とかしてるけど、一人で全てをこなしているアローヘッドはほとんど眠れていないだろう。


 今は工程(行程)の半分を過ぎたあたり。それならばもう少し疲れさせてから国境付近で対峙した方がより有利に戦いを進められるのではとなった。


 これは後ろからさらに追いかけてくる追手がいた場合に挟み撃ちに合う可能性もあるので注意が必要だけど、こちらには感知に鋭い猫さんやアルベロがいるので何とかなるだろうとのこと。


 ということで、こちらは引き続き後ろを気にしながらの馬車の旅をすることに。


 すると、さっそく後ろを気にしていたアルベロの感知に反応があった。


「追手が近づいてきているわ。数は、約三十」


「三十って、まさか、騎士団!?」


「違うにゃ。動きがバラバラにゃ」


 どうやら猫さんも昼寝から起きたようだ。


「ということは、冒険者かー」


 ルイーズが少し悲しそうな顔をする。まあ、見知った顔のいる冒険者なのだから複雑なのも理解できる。そういう意味では、僕はあまり関わりがなかったから気持ち的には何とも思わずに済んでいる。


「申し訳ないけど、馬から潰させてもらうわ」


 この戦い方は予定していたものだ。近くに街もない街道沿いでは、馬がなければ追いかけてくることもできない。


 こちらとしても、仲間である冒険者をむやみに倒そうとは思っていない。もちろん、僕よりランクが上の冒険者たちと思われるので気は抜けないけども。


「馬がかなり疲弊してるわね……」


 相当無理をして追いかけて来たようで馬の体力もかなり落ちているようだ。


「どこかで待ち伏せる?」


「いえ、このまま馬車を進めながら倒せそうな気がするんだけど」


 本当ですか? アルベロさん。


「いけそうにゃ」


 猫さんのオッケーも出た。どうやらここまでだいぶん飛ばしてきたからなのか、馬の状態はあまりよくないようで、動きもそこまでよくないらしい。


 ということで、こちらは少しスピードを少し抑えながらそのまま冒険者を迎え撃つ。迎え撃つのはアルベロ一人だけど。


 馬車の上にアルベロが立ち、短弓ハジャーダを構える。


「み、見えたぞー!」

「白金貨だー!」

「おいっ、白金貨がいたぞー!」


 あ、あれっ、仲間である冒険者たちよ。


「俺が先に倒すぜー!」

「ヒャッハー」


 まあ、全員ではないとは思うけど、目がお金になってしまっている残念な冒険者が多いことがわかった。


これなら気兼ねなく、戦えるというもの。


 そうか、僕たちの報酬は白金貨一枚もするのか。そりゃ張り切っちゃうのもわからなくもない。


 とても残念だけど。


 やっちゃいましょう、アルベロさん。


 追いかけてくる冒険者は全員が馬に乗っているので、弓持ちの冒険者もさすがにそのまま攻撃は出来ない。手放しで弓を構えて馬を操るとかそんなの無理だろうからね。


 そうなると、遠距離攻撃は魔法攻撃に絞られる。しかしながら、これも馬を操りながら集中して放つわけで、寝不足気味の冒険者にとってはちゃんと狙いを定めるのも難しい。


「うわー、どこに撃ってるのかなー」


 こちらの攻撃の的は馬車のためかなり大きいのだけど今のところ当たる気配はまったく感じられない。


 C、Bランクの冒険者といえども、馬に乗ったままの攻撃には慣れていないのだろう。あとは何というか完全に疲れが目立っている。


 アローヘッドが先に出たので、白金貨を渡すまいと無理をしたのだろうか。僕たちにとってはありがたい状況だ。


 こちらを低ランクと舐めているようだけど、アルベロの短弓ハジャーダの攻撃力はランクAのシーデーモンを倒しているのを忘れてもらっては困る。


 ビュンッ


 相手の魔法が届く距離ということは弓も余裕で届く距離。こちらは馬車の上でしっかり狙いを定めてから撃つ。


 アルベロの狙い通りに、前方の馬、二頭ごと巻き込むようにして吹き飛ばした。


「ぐわぁあああ」

「お、俺の白金貨ぁー」


 馬から放り出された冒険者も怪我はしてるだろうけど元気に生きているようだ。


「ずるいぞ! 立ち止まって戦えー!」


 ずるいかどうかはそちらの判断であって、こちらはもちろん立ち止まって戦う義理はない。君たちは白金貨が貰えるかもしれないけど、こちらは何ももらえないのだ。


 ビュンッ! ビュンッ!


 続けて二連発。弓は的確に馬を潰していき、後ろから来る冒険者も巻き込まれるようにして激しく落馬していく。


 さすがに分が悪いと思ったのか、冒険者は街道から外れるようにして両側から回り込もうとしてくる。


しかしながら、慌てずに順番にアルベロは射抜いていく。


気がつけば、残りは三人。降参の声を上げてこちらに近づいてくる。


「Bランクのシュメールのパーティにゃ」

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