66 新しい仲間?
何やら考え込むような様子のビビアンさん。
「どうかされましたか?」
「わかってる範囲だけど、アダマンタイトはかなり深い場所にしか鉱脈がないの。最近は需要がなかったからルートが封鎖されたままだし……」
「アンナの崩落がきっかけで封鎖された場所にゃ?」
「そう、あの場所よ。だから、アダマンタイトを採掘するのは難しいかもしれないわ。また崩落したら危険だし」
「そんな……。あの、在庫はあったりしますか?」
「いいえ、在庫もないの」
せっかくここまで来たというのにそれは悲しすぎる。
「場所だけでも教えてもらえないでしょうか。何かあったとしても自己責任で構いませんから」
そうビビアンさんに告げたのはアルベロだ。
どれだけ危険な場所かはわからないけど、アルベロやルイーズの身のこなしなら平気な気がしないでもない。
あっ、僕は無理だからね。いくらランクが上がったといえ戦力外だ。俊敏のステータスはそこまで上がっていない。
ビビアンさんはキャットアイさんを見てどうしたものかと迷っている様子だったけど、猫さんが助け船を出してくれた。
「ビビアン、自分からも頼むにゃ」
「でも」
「ニールには貸しがあるにゃ。お墓参りが終わったら自分も採掘にいくつもりにゃ」
「キャットアイさん! いいんですか?」
「これで貸しはなくなるにゃ」
「ありがとうございます」
正直いって、このお屋敷に滞在させてもらえるだけで貸しが消えていてもおかしくない。
「その代わり、採掘するメンバーは選ばせてもらうにゃ。自分とニールとアンナの三人にゃ」
「どうして! アダマンタイトが必要なのは私なの。私も行くわ」
「却下にゃ。あの地下は思っている以上に危険な場所にゃ。体が小さくて俊敏な猫人族じゃないと無理にゃ」
「じゃあ、ニールはなんで」
「採掘のスピードを上げるためと、もしも崩落があった場合の保険にゃ。それにニール一人ぐらいなら自分が面倒みれるにゃ」
「……どういうこと?」
「猫人族は力はないから採掘は苦手にゃ」
「そうじゃないわ。崩落があった場合の保険ってどういう意味なの?」
「ニールのスキルが必要にゃ」
「!?」
「キャットアイさん、僕のスキル知ってたんですか?」
「まだ予測の範ちゅうだけど、だいたいどんなスキルかはわかってるつもりにゃ」
「やっぱり、ニールのことを調べていたのね」
「えっ、どういうこと?」
「ギルドマスターからの依頼、いえ、王様からの依頼ということね?」
「そうにゃ。ニールのことを調べて報告することが任務にゃ。もしも使えるスキルや能力が発現したら報告するようにとのことにゃ」
「じゃあ、僕のスキルのことは……」
「まだ言ってないにゃ。伝えているのは、テイマー能力の発現とテイムしたホワイトドラゴンの危険性についてぐらいにゃ」
ホワイトドラゴンの危険性? ルリカラのどこが危険なのだろうか。こんなにかわいいのに。ほっぺをふにふにさせるとリラックスして頭を預けてくるかわいい子なんだよ。
「そのドラゴンのブレスはとても危険な可能性があるにゃ」
「まあ、そうね」
「そうなの? い、いや、確かに、人によっては危険か」
「それで、なんでニールのスキルのことを黙っててくれたのかしら?」
「言ったはずにゃ。まだ予測の範ちゅうにゃ。プロは不正確な情報を伝えたりはしないものにゃ」
「じゃあ、今回の採掘で知った情報を伝えるつもりね?」
「そうかも知れないし、そうじゃないかも知れないにゃ」
「どういうこと? 別に私はどうしてもアダマンタイトが必要なわけではない。ニールのことを話されるぐらいなら私たちは王都へ帰るわ。いえ、王都ももう危険ね、違う国へ移動するべきかもしれないわね」
そう言ってアルベロはルイーズと頷き合っている。何か二人で決めていたことでもあったのだろうか。すぐに立ち上がって、荷物を取りにいこうとする。
「待つにゃ。もし、王都を出るなら自分も連れていってほしいにゃ。そうしてくれるならニールの秘密は守るにゃ」
「それは、どういうことー?」
「そんなことしたら、冒険者ギルドから仕事をもらえなくなるわよ」
「そこはやりようにゃ。嘘をつかずに契約を満了させればいいだけにゃ」
「そこまでして、連れていってほしい理由は何?」
「ニールに興味を持ったにゃ。三人の楽しそうな姿をみてたら、また自分もパーティでやりたいと思ったにゃ。それに、まだ隠してるスキルがいくつかあると思うにゃ。理由はこれぐらいじゃだめにゃ? それに、二人より自分の方がニールのことを守れると思うにゃ」
インベントリのことをどこまで知っているかわからないけど、プジョーブーツを渡したことから装備関係のことを予想しているのだろう。つまりガチャスキルのことだろう。
「信用できるとでも?」
「信用できないなら、そのドラゴンのブレスを受けてもいいにゃ」
ブレスか。猫さんの本気を感じる。プジョーブーツをあげたのが完全に後押ししてしまっただろうか。でも、お世話になっているのも事実で、いや、見張っていたからこそいろいろ助けてもくれたのか。
「僕は信じていいと思うよ。キャットアイさんには何度も助けてもらってるし、今回もね」
「それはそうだけど、ニールのことを調べていたのよ?」
「うん。でも仲間になってくれるなら、こんなに心強い人もいないでしょ」
働くのが嫌いな昼寝至上主義の猫さんだけど、こう見えてAランクの猛者なのだ。そんな人が一緒のパーティを組みたいと言って、断る理由はないと思う。
「仮よ。あくまでも仮参加。私とルイーズが許可出すまで仮だから」
「それで構わないにゃ」
「ニールも話していいことと、まだ隠しておくべきことは決めておくわよ」
「うん、わかった」
でも、ルリカラのブレスを拒まないということは、もう信用してもいいと思うんだよね。




