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51 魔素の過剰吸収

 通常ステータスが上がるには倒した魔物からの魔素に影響されるところが大きい。


 そういうことなので、高ランクのパーティに参加しているポーター(荷物持ち)もその影響を受けるため、ランクに応じたポーターが必要になるそうだ。


 もしも低ランクのポーターが大量の魔素を吸収してしまったらどうなるか。最悪の場合、魔素に体が耐えられずに崩壊してしまうおそれがある。


 そうでなくても、魔素が体に馴染む期間は高熱が出て寝込んでしまうというということがわかった。


「ニール、大丈夫?」


 昨日の夜にアルベロ主動による反省会を夜まで行っていたところ、どうにも頭がふわふわしてきて、足もふらふらとなり倒れてしまった。


 それからずっとベッドで休んでいるけど、朝になっても熱が下がる様子はなかった。ルイーズとアルベロがおでこに乗せた冷たいタオルをときおり様子を見ながら替えに来てくれたのは何となく覚えている。


 ただ頭がボーっとしていて何かを考えることもできない。


「ごめんね、ルイーズ。ちょっと水が飲みたい」


「はい、はい、ゆっくり飲んでねー」


 早朝から二人が冒険者ギルドに話をしたところ、魔素の大量吸収による影響の可能性があるとのことで、熱が下がるまで寝ていなさいとの診断結果がくだされた。


 一応、熱が出ているということは体が崩壊するような事態にはならないそうで、体に魔素が馴染むまで間、ひたすら寝て待つしかないとのことだった。


 僕のステータスがどう変化したかというと、まだ不安定で正確ではない。というのも、朝にタグを確認した時とさっき見た時でも違っているのだ。


 どうやらこれも体の中の魔素が安定するまで待つしかないようだ。


 たまたま討伐したAランクの魔物の一番近くにいたとはいえ、かなり距離も離れていたことから大丈夫だろうと思っていたのにこのざまだ。


 しかしながら、この結果ステータスが上昇してくれるのなら、こんなラッキーなことはない。


 何とかDランクに手が届いてくれたらうれしいけど、それはさすがに期待しすぎだろうか。


「それで、二人は今日どうするの?」


「うーん。こんな騒ぎがあったばかりだからクエストは後片付けばかりで討伐は受けつけてないんだって。だから、お休みしようかなーって」


「そっかー」


「あとでカニのスープ買ってくるけど食べれそう?」


「うん。少しなら食べたい。あと、ルリカラはスープは殻付きでいっぱい食べたいみたい」


「ルリカラちゃん殻付き大好きだもんねー」


 二人以上に僕を心配してくれたのがルリカラだ。寝苦しくて目が覚めると「大丈夫?」と声をかけてきて、僕が眠ると静かにして枕元で心配そうにしていたらしい。


 僕が少し回復傾向にあることがわかって安心したのか今は少しうとうと眠そうにしている。赤ちゃんドラゴンは睡眠時間が必要なのに昨日はあまり寝てなかったんだから休んでいいんだよ。


 ルイーズが優しくルリカラの頭を撫でてあげると小さな欠伸をして目を瞑ってしまった。ご飯の時間までそのまま眠ってていいからね。


「じゃあ、私は買い出しに行ってくるね。もう少ししたらアルベロが戻ってくるから」


「うん。あれっ、アルベロはどこに行ってるの?」


「冒険者ギルドに報奨金の件で呼ばれてるの。アルベロ、一番の功労者だしね」


「なるほど」


「あれだけ頑張ったんだし、いっぱい報奨金もらえるといいよねー。あっ、じゃあ、行ってくるねー。ちゃんと寝てるんだよー」


「うん、ありがとう」


 正直まだ熱が下がりきっていないので目をつむればすぐ寝れる気がする。


 隣ですやすやと寝息を立てはじめたルリカラの小さないびきをバックミュージックにして気づいたら眠りについていたようだ。


 というのも、次に目覚めたのがお昼すぎだったのだ。


「あ、あれっ、寝すぎちゃった」


 まだ身体は重くて調子はいまひとつ。汗をかいているはずだけど、少しすっきりしているのはアルベロが清浄の魔法を使ってくれたのだろう。


 テーブルの上にはルリカラが食べ散らかしたスープの残骸があり、そのテーブルに突っ伏すようにしてルイーズが寝ている。


 ルリカラは……僕の隣で寝ていた。


「少しは食べれる?」


 ベッド脇の椅子に座って矢の手入れをしていたらしいアルベロがそう話しかけてきた。


「あっ、おかえり、アルベロ。少し食べようかな」


「温めてきてもらうから少し待っていて」


「うん。ありがとう」


 体を起こそうとするも、お腹に力が入らないせいか一苦労だ。本当に不甲斐ない。


 これいつ頃回復するのだろうか。


「あっ、そうだステータス、ステータス」


 冒険者ランクE

ニール・ゼニガタ 男 十七歳

 体力D、筋力E→D、耐久E→C、敏捷E→D、持久力E→D、魔力E→D、知能C→B

 魔法適正 火E→D、無属性(発火、注水)


 軒並みステータスが上昇していた。耐久値が二ランクアップでCになっている。


 これはキャットアイさんに吹き飛ばされたからだろうか、それともマーマンにいたぶられた結果なのだろうか。


 大盾を失ってしまったものの、盾持ちのニールとしてはうれしいステータス上昇といえる。


 これ、全体的に見てDランクに昇格してもおかしくないステータスかもしれない。


 ついこの間Eランクに上がったばかりなのに僅か数日で上がってしまうって、相当危険なことしたんだね……。


 Eランクにも関わらずAランクのシーデーモンを相手にしようとか無謀以外の何ものでもない。我ながら無茶をしたものだ。


 でも、これでランクはルイーズに並ぶことができた。僕にも性能のいい武器があれば何とか追いつけるところまできたのだ。


「武器か、そういえばガチャだ!」


 進化個体を倒した際に出現した格上討伐ガチャ。今回倒したのはAランクのシーデーモン。間違いなく格上。Eランクの僕からしたら四つも上の格上中の格上。出ないわけがない。必ず出る。僕の新武器が出るはずだ!

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