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47 バブルラグーンの戦い3

 シーデーモンは一気に魔力を高め、大きな魔法陣を浮かび上がらせると仲間であるマーマンまで巻き込むような攻撃を放った。


 大量の海水を巻き上げるようにして渦高く持ち上げていくと、こちらに向けて津波のように飛ばしてくる。大規模魔法だ。


「魔法使いは結界魔法を展開!」

「冒険者たちは避難! 急いで避難せよ!」


 大きな渦がうねるようにして濁流となり、勢いを増してこちらに向かってくる。


 しかしながら、徐々に展開されていく結界魔法がその勢いを少しづつ削いでいく。一つ、二つではすぐに壊されてしまう結界魔法も、何度も張り直すようにして、結界を張る魔法使いも踏ん張る。


 濁流により一枚目の柵は完全に破壊され、僕のいるすぐ目の前まで水が迫っていた。


 同様に巻き込まれたマーマンは力尽き倒れたり、水の流れに乗り奇跡的に生き残り、柵の手前でやって来たマーマンはすぐに冒険者たちとの戦いが始まっている。


「アルベロ、こっちに来るにゃ!」


 どうやら無事だったキャットアイさんがアルベロを大きな声で呼ぶ。


 アルベロも状況を理解したのか、嫌そうな顔をしながらも前線へ向けて走り始めた。


 シーデーモンは海の上から動いていない。おそらく動くつもりがないのだろう。近接戦闘はキングマーマンとマーマンに任せて、自分は安全な場所から、あの津波のような攻撃を再び撃つという考えに違いない。


 キャットアイさんがアルベロを前線に呼んだのは、この中で一番強い遠距離攻撃がアルベロの短弓ハジャーダだからだ。


 シーデーモンに届かせる距離までアルベロを呼び、そのアルベロの周囲をキャットアイさんが守るということなのだろう。


 それなら僕も行こう。槍を置いてインベントリから大盾に持ち替える。この混乱状況なら誰も僕なんか見ていないはず。


「ニールさん!?」

「えっ、大盾」


 おっと、いきなり見つかっている。まあ、この三人ならいいか。


「僕はアルベロを守るために前へ出る。みんなはここを頼むね」


 一列目の柵が完全に崩壊したことで、マーマンの群れは再び集まりこちらにやって来ている。まだまだここで耐えなければならない。


「ま、前へ行くんですか!」


「大丈夫、ルリカラもいるし、魔法のスクロールもあるから」


「無理しないでくださいね」


 後を追うようにして僕がやってくるのを見つけるとアルベロが眉間にシワを寄せている。


「ニールは呼ばれてないでしょ。何で来るのよ。あなたを守っている余裕はないわ」


「わかってる。でも、アルベロだけ危険な目に合わせる訳にはいかない。僕のことは守らなくていい。本当に危険だと思ったら退避するよ」


「まったく……知らないわよ」


 怒っていたアルベロだけど、少しだけ笑っているようにもみえた気がする。


 アルベロを守るためにキャットアイさんが近くにいる。それなら僕の脆弱な守りでも少しは役に立てるはず。というか、キャットアイさんの近くは一番の安全地帯かもしれないのだ。


 僕の持ち物を整理しよう。魔法のスクロールが二つ。暗闇にするディルトと冷気攻撃のダルト。それから僕自身の魔法攻撃小さめのハリトが五回。


 あとはルリカラの偉大な聖なるブレスか。


 すべてを使い尽くすつもりで守る。そうすれば、あとはアルベロが何とかしてくれるはずだ。


 キャットアイさんも僕の姿を見ると、少し驚いたものの、やることは変わらないとばかりに前を向いた。


「この場所からなら届くにゃ?」


「届くには届くけど、隙をつかないと避けられるわ」


「ニールは何かあるにゃ?」


「僕にも聞いてくれるですね」


「今は猫の手も借りたい状況にゃ」


「ディルトのスクロールがあります。シーデーモンに使えれば隙を作れると思いますが、ちょっと遠いいですよね」


「なるほどにゃ。ニールは泳げるにゃ?」


「多少は泳げますけど」


「ならシーデーモンとの中間地点にニールを投げ込むにゃ」


「ちょっと、海には大量にマーマンがいるのよ!」


「アルベロが矢を放った後にすぐ救出に向かうにゃ」


「ダメよ。そんな危険なプランは許せないわ」


「いや、それでいこう」


「ニール!」


「大丈夫だって」


「で、でも……」


「迷っている時間はないにゃ。その矢が外れたら街が危ないにゃ」


「わ、わかったわ。その代わりニールのことを絶対に守って」


「任せるにゃ」


 僕の役割はアルベロとシーデーモンの射線上に投げ込まれ、そこでディルトのスクロールを使用すること。そうすることでシーデーモンは自分に向かってくる矢を途中まで気付くことができない。


「作戦は理解したんですけど、僕はどのように投げ込まれるんですか?」


「その大盾は壊れてもいいにゃ?」


 そう言ったキャットアイさんは腕をぐるぐると回してみせる。どうやら大盾ごと僕を吹き飛ばすらしい。


「盾ごとですか……」


「頼むにゃ」


「気絶しないように頑張ります」


 いろいろ不安はあるものの、これを成功させるしかバブルラグーンを守れなそうだということを理解した。


 あのシーデーモンさえ倒せば、あとはみんなで何とか守りきれるはずだ。

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