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42 ルリカラ人気

 ちなみにディルトをバブルクラブに使用したところ、とても簡単に倒せてしまった。


 暗闇に覆われたバブルクラブは動きが止まってしまい、後ろから接近するルイーズにも全く気づいていなかった。


 闇属性すごいな。どのぐらい上のレベルの魔物にも通用するのか不明ではあるけど、かなり期待できる魔法だ。


 相談の結果、小銀貨ガチャで得られる魔法のスクロールに関しては極力ストックしていくようにしようということになった。


 魔力は必要ないし、あるだけ撃ち放題。困った時にこれほど頼りになるものはないだろう。


 インベントリの一つがスクロールで埋まってしまうのは勿体ない気もするけど、僕としては戦闘方面で一つ役割が出来たような気がして嬉しく思っている。



 それから単体のバブルクラブを討伐しながら戻ることに。何だかんだで、バブルクラブ十二体を倒したので荷車はいっぱいになっている。


 冒険者ギルドに戻ると、何やらひそひそと話し声が聞こえてくる。


「ちょっと、聞いてみようよ」

「噛まないかな?」

「大丈夫だよ。寝てるみたいだし」


 僕の腕の中でまるまって寝ているルリカラを見ながら、若い女性冒険者三人組が近づいてきた。


「あ、あのー、すみません」


「はい、なんでしょう」


「その従魔さわってもいいですか?」


 従魔というのは、テイムした魔物のことを指す言葉だ。ルリカラの場合は魔物ではなく聖獣なので、正確には従聖獣とでも言うのだろうか。


 おそらく人見知りではあるものの、ルイーズとアルベロにはすぐに心を開いたルリカラ。


 知らない人にさわられるというのは、やはり嫌がることかもしれない。


 でも、今後のことを考えたら少しでも人に馴れた方がルリカラも生きていきやすいのではないだろうか。あと、今は寝てるからちょうどいい気もする。


 悪いねルリカラ。これも君の人馴れの一歩ということで。


「寝てるので起こさないように、頭のあたりをやさしく撫でてください。ルリカラって言います」


「う、うわぁ、や、やった。ありがとうございます」


 僕よりも少し若く見える年齢の三人組。魔法使いの子と僧侶っぽい子に細剣を持った前衛の戦士タイプの子。


「ふわふわであったかーい」

「か、かっわいい!」

「ル、ルリカラちゃん」


 代わる代わる撫でられ、どこかうなされているようにも見えるルリカラ。もう少しだけ頑張るんだ。


「君たちは?」


「鉱山の町ミストマウンテンから来た駆け出し冒険者です。私はリリィ」


「最近になって薬草採取から卒業したばかりなんです。ラウラと申します」


「私たち、幼なじみなんです。あっ、私はエイミーです」


 話を聞くと、どうやら女性冒険者を中心にルリカラのことが話題になっていて、アイドル的なかわいさだと噂になっていたようだ。


 ちなみに鉱山の町であるミストマウンテン周辺では魔物や薬草などの素材も少ないらしく、冒険者の多くはバブルラグーンへと稼ぎを求めてやって来るらしい。


「僕もつい最近まで薬草採取をしてました」


 というか、ルイーズたちと出会ってなかったら、まだロージー先輩と薬草採取をしていただろう。そういえば、ロージー先輩は元気にしているだろうか。相方はちゃんと見つけているだろうか。


「それなのに、こんなかわいい従魔ちゃんがいるんですね。いいなー、テイマースキル」


 テイマースキル。そんなの持ってないけど、ちゃんとテイム登録できている不思議。これもスキルガチャの恩恵なのだろうか。


 どうやらテイマースキルはそこそこ珍しいスキルのようで、そんなに多くはいないそうだ。


 大抵の場合は一人につき一体の契約がほとんどのため、一般的にテイムする従魔は強く獰猛なタイプが人気になる。なるべく自分が御せるギリギリのラインの子供従魔を選ぶことが普通らしい。


「こんなかわいい子、どこで見つけたんですか?」


「えーっと、それは秘密です」


 スキルガチャの景品ですとか言えないし、すぐそこの砂浜ですとも言えない。


「ですよねー。高貴な赤ちゃんって感じがします」


「きっと、大変な思いをして契約したんですね」


 まったく大変な思いはしていないものの、一応は格上討伐ガチャだから、進化個体を倒してるので苦労しているのも事実だ。うん、これは苦労しているでいいかもね。


「そ、そうなのかな」


「ちなみにルリカラちゃんの種族は何なのでしょう?」


「何だと思いますか?」


 これはいずれ聞かれるだろうと思っていたので、ちゃんと回答は用意している。


「ちっちゃいけど翼もありますから、ジャイアントバードの子供ですか?」


 ジャイアントバード、大型の鳥でBランクの魔物らしい。この周辺にはいない魔物なので、その幼生体ともなると色が白くても誰も気にしないかもしれない。


「違います。実はホワイトドラゴンの赤ちゃんなんですよ」


「ふ、ふぇぇぇー」

「ホワイトドラゴン!?」

「こんなにかわいいのにドラゴンさんでしたか……」


 ちらっと冒険者ギルドの受付嬢さんを見ると僕が何というのか聞き耳を立てているようだった。


 冒険者ギルドには冒険者の秘密を守る義務があるものの、こうも話題性が高いとうっかり漏らしてしまうことも可能性としてはなくない。


 それほどドラゴンの従魔というのは珍しいらしい。


 次に従魔を奪われる可能性についてだけど、僕と契約している状態なので、極端な話、僕を殺してしまえば契約は解除される。


しかしながら悪意をもって近づく者に対してルリカラは敏感らしく、偉大な聖なるブレスを吐くと息巻いていた。


 その言葉を信頼できるのか微妙なところではある。今も力尽きてぐっすりお眠りになっている訳で、今攻撃されたらどうなの? という気持ちがなくはない。


 それでも僕を主として慕ってくれるルリカラの気持ちを尊重したいと思った。


「ダンパーの件があったと思うんですけど、彼の性格があのように善人に変わってしまったのはルリカラの魔法の影響なんです」


「あー、あの危ない人ですね。急に心が洗われてしまった……」

「あれをルリカラちゃんが!?」

「さすが……ホワイトドラゴン」


「悪意を持った者には聖なるブレスの効果が抜群らしくって」


「あ、あれっ、さわっても大丈夫……ですよね?」


「悪意がなければ」


 若干腰が引き気味になってしまった三人組だけど、ギルドでの噂を広めてもらうために利用させてもらった。


 今ここにいる冒険者やギルド職員もダンパーが善人に変わってしまった理由を知ったはずだ。


 このことを広めていくことで少しでも僕を殺してルリカラを奪おうとする人が減ることを祈りたい。いや、本当にやめてよね。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「違います。実はホワイトドラゴンの赤ちゃんなんですよ」 敵意を持って近づく人は分かるようですが、何もわざわざ襲われる危険性が増すと分かっているのにホワイトドラゴンと言う名を言う必要性…
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