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3 冒険者ギルドで登録

 その日はいろいろあったからなのか、部屋で今後のことを考えたりして、夕食を頂いたらすぐに眠りについてしまった。何だかんだ疲れていたのかもしれない。


 朝になって目が覚めると、知らない木で組まれた天井が飛び込んでくる。それは召喚されたことが夢なんかではなく現実なんだと理解させられた。


「んんっ、ああー、今日はいろいろ動かないとなー」


 カーテンを開け、窓を開くと新鮮な空気が入ってくる。外を眺めると早朝にも関わらず広場には結構な人が出ていて、屋台で朝食メニューを提供している人や、それを食べながら打合せをしている冒険者の姿もある。


 鎧を着て大きな剣を持つとか見ると、やはりここが異世界なのだと感じさせられる。


 種族も様々なようで、エルフにドワーフ、獣人、そしてリザードマンのような姿もある。


 冒険者は見るからに力強そうで、そうでなければやっていけない仕事なのだろう。ステータス平均以下の僕でもやれる仕事はあるのだろうか。


 すると広場のベンチに座って話をしているルイーズさんとアルベロさんを見つけた。


 どうやらアルベロさんが僕に気づいたようで、腕をつついてルイーズさんに知らせると、ルイーズさんは手を振りながら、口は「おはよー」と言っているようだ。朝からとてもかわいい二人組に少しだけ気持ちも晴れやかになる。


 ルイーズさんとアルベロさんも冒険者をやっているとの話だったね。アルベロさんはエルフらしく背中に弓を背負っている。


 ルイーズさんは僕と同じぐらいの年齢の華奢な女の子。細めのショートソードを持っているようだ。何か特殊なスキルとか魔法が扱えるのだろうか。


「さて、僕も頑張らないとな」


 今日は冒険者ギルドへ行き、登録を済ませる予定だ。騎士団長の話によると魔導具でつくられたタグがもらえるらしく、ステータスが見れたり、街の外へ出入りする際の身分証明証にもなるから絶対に登録するようにと強く言われた。


 ちなみに登録料は銀貨一枚……。


 これは必要経費だろう。


 まあ、僕としてもお金を稼ぐには冒険者ギルドで仕事をもらう以外に考えが浮かばないのでそうするつもりでいる。


 それから、可能性は低いかもしれないけど魔法が扱える可能性もあるから、属性を調べてもらった方がいいとのことだった。


 ステータスは平均以下ながらも、僕にもちゃんと魔力というものがあるらしい。あまり期待しちゃいけないとは思うけど、少しわくわくはしている。魔法だよ魔法。異世界に来たらやっぱり魔法だよね。


 というわけで、冒険者ギルドへ向かおうと思う。


 冒険者ギルドは街の入口近くにある大きな建物だそうだ。騎士団長情報では剣と盾のマークの大きな看板が目印とのこと。


 ギルドは朝と夕は特に人の出入りが多いそうなので、僕は少しゆっくり訪れることにした。


 僕が部屋を出た頃には広場にいた冒険者の方々もいなくなっていたので、もう街の外へ出て受注したクエストをこなしているのだろう。


「見えてきた、見えてきた。あれが冒険者ギルドだね」


 大きな建物なので看板を探さずともこれがギルドだろうとはすぐにわかった。


 門からすぐの通り沿いにその建物があり、隣には買取り専門の窓口、裏側には訓練場があるようだ。


「こんにちはー」


 扉を開いて中へ入ると、予想通りというか、部屋の大きさの割に人は少ないように思える。


 壁面には様々なクエストが貼られていて、ある程度ランク毎に分別されているっぽい。


「登録ですか? それともクエストの受注ですか?」


 初心者丸出しに見えたのか、きれいな受付嬢さんと思われる方がすぐに声を掛けてくれた。


「あっ、登録をお願いしたいのですが」


「やっぱり。見ない顔だと思ったんです。じゃあ、こちらの椅子に腰掛けてください」


「あっ、はい。よろしくお願いします」


「文字は書けますか? それとも代筆いたしますか?」


 異世界の文字は何故か僕には日本語に変換されているようでちゃんと認識できている。問題は字を書いてもそれが反映されるのかということだ。


「ちょっと、書いてみてもいいですか?」


 僕のその言葉に首を傾げながら「では、ここにお名前を」と教えてくれる。大丈夫、その文字は見えているから。


 漢字と平仮名を組み合わせて「銭形 にぎる」と書いてみる。


 それから受付嬢さんの顔を見ると、右に傾いていた首が今度は左側に傾いてしまった。


「これは何語でしょうか? ちょっと私には読めない字のようですね」


「そ、そうでしたか……。それでは申し訳ありませんが代筆をお願いします」


「はい、かしこまりました。では、お名前を教えてください」


「銭形にぎるです」


「えーっと、ニール・ゼニガタさん? ですね」


「……あっ、はい。もう、それで」


「年齢と出身地をお願いします」


 年齢はいいとして、出身地か。本当のことを言って信じてもらえるものなのか悩ましい。


「ちなみにですけど、この紙は魔導具で出来てますので、嘘をついたらちゃんと登録できませんよ」


 こちらの考えはお見通しとでもいうように、受付嬢さんはビシッと人差し指を立てている。既に名前で嘘をついてるのは大丈夫なのだろうか。いささか心配になる出だしである。


「年齢は十七歳で、出身は日本です」


「ニホン……。ひょっとして、異世界から来られた方ですか」


「は、はい。わかりますか?」


「服装も変わっていたので、実は何となくそうなのかなーとは思っていました」


「ちなみに、異世界から来た人って多いんですか? この街にもいたりしますか?」


「残念ながら、私はニールさんがはじめてですし、この街に異世界の方がいるという話は聞いたことがありません」


「そうでしたか」


「ごめんなさい。お力になれなくて」


「いえ、いえ、気にしないでください」


 その後、いくつかの質問に答えていたら終わったみたいで、場所を移動してステータスを計測してもらうことになった。


 僕の名前はニールでちゃんと登録されるのだろうか……。

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