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34 ソードフィッシュ狩り1

 ご飯を満喫したルリカラは満足げな表情のまま眠りについてしまった。睡眠時間は必要と言っていたので起こさないように僕の部屋のベッドに運んであげた。


 言葉では強気な部分もあるものの、まだまだ幼生体で赤ちゃんなのだ。食事と睡眠は大事だと思う。


 その後の話し合いで、ルリカラについてはお留守番させるわけにもいかないので魔物討伐にも参加させつつ、戦闘能力については実戦の中で判断していくことにした。


 ルリカラの言葉を信用していないわけではないけど、少し盛っている可能性は否定できない。


 爪や牙の攻撃はほとんど通用しないと思っていい。気になるのはブレス攻撃ぐらいだ。


 ということで翌朝は港の方へ行きレンタルの船を借りる。この船の船底部は王都の壁のように魔法で強化されているらしく、船底への攻撃をしっかり防御してくれるらしい。


 もちろん、大型の海獣などが相手ではひとたまりもないが、それはかなり沖の方に出なければ大丈夫とのこと。


 海獣もその巨大さから考えて港付近の浅いエリアには来ることができないのだろう。


「風が気持ちいいねー」


 船といっても戦闘をするため、それなりの大きさがある。それを一人で漕いでいる僕は大変だ。いや、自分でやるって言ったんだけどね。


 ルイーズはまだ眠たそうにしているルリカラを抱っこして、アルベロは海面をチェックしながら警戒をしている。


 魔道具か何かを動力として動かしてくれると楽なんだけど、それはそれでとても高価な乗り物になってしまうらしく僕たちのような冒険者にレンタルされることはない。


「ニール、疲れたら代わるから言ってねー」


「だ、大丈夫。あの灯台の近くでいいんだよね?」


「そうそう。あの辺りがソードフィッシュが多いエリアなんだってー」


 港と沖の中間地点にあるのがこの灯台で、夜は大型船の目印になるように魔道具で光が灯されている。


 その光がプランクトンを集めることになり、プランクトンを食べる魚がやってきて、その魚を狙ってソードフィッシュも現れるとのこと。


 朝なので夜ほど集まりはよくないけど、ソードフィッシュにとっては馴れた狩場になっているため、日中でもそれなりに出現するらしい。


 ソードフィッシュランクE

 討伐報酬小銀貨二枚ツノ

 追加報酬小銀貨三枚〜


 大きさは二メートルから最大で五メートルぐらいまで。ツノと呼ばれる上顎が発達した部分が剣のようになっており、海面から飛び出して襲いかかってくる。とても美味しい白身肉であるため、討伐報酬よりも追加報酬の方に魅力がある魔物だ。


 ランクEながら追加報酬がいい。イメージ的にはカジキマグロのような魔物といった感じだろう。ただ、ランクが示す通り動きが直線的であるためそこまでの脅威度はないらしい。


「早くこれで射ってみたいわ」


「そうだねー。私も楽しみー」


 二人とも新しい武器を使うことをとても楽しみにしている。通常の弓だとソードフィッシュを倒す武器としては弱いのだけど、アルベロが感じる短弓ハジャーダのパワーなら問題ないのではとのこと。


 風の加護が力を与えてくれるらしく、「身を吹き飛ばさないように注意が必要ね」とか怖いことを言っていた。


 ルイーズの持つ疾風のレイピアは身体能力を向上させてくれるので、この狭い船上でも身軽にすばやい動きでソードフィッシュを迎え撃ってくれるだろう。


 ちょっと二人がうらやましい。何で僕の武器は出なかったのだろうか。少しだけ複雑な気持ちを抱えつつ、ようやく予定していた場所の近くに到着できた。


 人気のエリアと聞いていたけど、早めに出発したので場所とりには無事成功したらしい。


 一応、近くに船がある場合は近寄らないのがバブルラグーンルールらしい。


 人の目を気にしなくていい海上なので、気兼ねなく僕もスピード解体を使用できるというもの。ただこの討伐には僕も可能な限り参戦させてもらう。この旅の目的でもあるソードフィッシュ討伐で俊敏性を高めたいのだ。


「錨を下ろすよー」


 ここからは、ソードフィッシュをおびき寄せての討伐と、僕は適度にスピード解体をしていく役割になる。


 二人が戦闘するエリアを確保するのが優先だけど、僕も討伐には参戦する。


 ということで、今回はルイーズが愛用していたショートソードを借りている。本来はスティレットと呼ばれる突刺武器を中古で買おうと思っていたのだけど、ルイーズが新武器を使うことになったので借りることにしたのだ。


「じゃあ、撒くわね」


 アルベロが用意したのはバブルクラブや貝の殻をよくすり潰したもの。これは屋台の店主から譲ってもらったもので、殻だけでなく少し身が付いていたりもするので小魚にとってはいい匂いがすると思う。


 その撒き餌にはルリカラも興味津々で、すっかり目が覚めてしまっていた。


「ピュイ!?」


 ご飯? あれ、ご飯じゃないの? 臭くて美味しそうな匂いがするよ。というルリカラからの感情がすごく早口で伝わってくる。


 ご飯じゃないと伝えると、とても悲しそうにしていたけどもっと美味しい白身魚を捕まえるためと説明したらやる気を出してくれた。


「ルリカラは僕のそばを離れないようにね」


 大盾とショートソードで守りつつ隙をついて攻撃をしたい。そう考えていたのだけど、ルリカラは好戦的な気持ちが強いらしい。


 ルリカラご主人様守る。白身魚いっぱい捕まえる。


 そんな気持ちと共に目がキラーンと光っていた。


 僕はとりあえず二人の討伐を見学しながら戦い方を勉強しよう。最初は解体と防御中心でいこうと思う。


 撒き餌の効果なのか、船の周りには小さな魚がいっぱい集まってきた。


 これなら、すぐに本命のソードフィッシュもやってくるだろう。


「来たわよ!」


 小魚を狙うように、すばやい動きで黒く濃い魚影が急浮上してきた。撒き餌に夢中だった小魚も慌てて右往左往と散っていく。


 ジャンプ一番、豪快に飛び出したソードフィッシュは三メートルはあるなかなかのサイズだった。

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